はじめに 患者搬送から親亡き後の整備まで

 私はかつて慈恵医大医学部付属病院 初代名誉教授であった森田正馬博士の弟子、鈴木知準医学博士の薫陶を受けた。その現場で様々な精神疾患の患者と向き合い、生活を共にしてきた経験がある。
人生の半分、精神医療の現場と向き合ってきた中で、考えられることは種々な精神障害の患者を持つ家族は今後どういうふうに患者本人の治療方針を定め親亡き後の整備を含め、そして周囲の家族もどのようにして平穏なな日常生活を確保すればよいかである。

 そのためには、家族と私たちが何事にも包み隠さず、「事実」を用いて本音で話をスタートさせていく必要があります。

 1年前になるだろうか、ある薬物中毒患者を持つ親御様から、出張相談の依頼があった。ここでその親御様は言った。
「ウチの子は薬物をやめるって言っている。だからその言葉を信じてもう一年待ってみようと思う」、と。
そう言いながらその親御様は既にずるずると6年の歳月が流れていた。私は言った。「あなたの息子様は既に重度な薬物依存に陥っています。精神的にはもちろん身体的影響も大きいと思うので、ここは強制を用いた病院への医療介入を直ちにご決断されるべきです。」

 だが、親御様は聞き入れなかった。つまり、今目の前で起こっている「事実」を認めようとしないのである。いや、現場は見ているので分かってはいるが、「来年こそはやめてくれる・・・」という身勝手な理想をいだき現実から逃避をされていたのである。おそらく、その患者は今となっては遅すぎたであろう。ここまでくると、病気云々より親御様自身の問題である。
 
 というのも、重度な精神障害やアルコール依存症・薬物依存症患者というのは、まず第一に「病識」が乏しい。
そこを気付いてあげられるのは、周囲の家族でしかない。にも関わらず、一向に医療につなげようとしない家族もいる。
この点をよくわきまえて、患者の対応をしていかなくてはならない。

 第一に
病識のない患者は、入院加療を前提に考える

 このことは治療戦略の最重要点であり、ここを根拠として治療戦略をたてていく必要がある。もちろん、患者を医師が診立てするまでは、その結果はわからないが、患者本人が自らを病気と気付けないのであれば、ここから先は家族の権限をもって医療に強制介入せしめる方法を取らざるを得ないと考える。

 ただ、この「強制」をなかなか決断できない家族も少なくない。
決断できない親御様は言う。「強制は可哀そう、将来恨まれはしないか」、と。
しかし、冷静に考えてみるとこの「強制」を通らない限り、患者と家族の建設的な将来が見えてこない。
親御様が覚悟を決めずに漠然と時間だけが過ぎ、患者の治療介入が遅れる事のほうがよっぽどデメリットである。
このような家族の複雑な心を察した上で、冷静に議論し適切な判断に導き出す事、これも私たちの使命でもあると考えます。


 第二に、
残された家族の平穏な日常生活の確保
 家族の中には、患者と同居中に「いつ殺されるかわからない・・・」といった不安を抱えながら毎日を過ごされてきた家族もいます。患者本人は、暴言や異常行動など症状の中で好きに過ごしてはいるが、周囲の家族はと言うと患者の介助、世話もあるが家族それぞれ本来の日常生活(育児・買い物・仕事など)がある。

 患者と同居中というのは、これらを犠牲にしてまで患者に奉仕しなくてはならない場合が多い。当然、近所の手前、いつ事件を起こすか分からないといった心理的負荷も伴う。
よって、患者と家族を切り離したのちには、当然かつての平穏な日常生活を取り戻していただかなくてはならない。
精神的にも時間はかかるかもしれないが、患者は医療・施設にまかせ、周囲の家族は家族なりの時間を共有していかなくてはならない。

 第三に、
親亡き後の整備を今から確立しておくこと
 今から大事なことを申し上げておきます。
それは、最低2つの技術対策があれば、親亡き後も患者は何とかやっていけるという事です。

 一つ目は、お金のやりくり。つまり金銭管理。
二つ目は、困った時、何か有った時に人に助けを求められる環境を持っておくこと。
最低これさえあれば、親亡き後どうにかやっていけるということを頭に入れながら、親亡き後の整備に取り掛かりたい。
その一つ目、そして二つ目のいずれも該当する局面で、当社が医療と福祉の連携を持ち、直ちに介入出来うることを強調しておきます。

 それはまるで、患者様という北極星を中心に回る星座のごとく、いつの日もいつの時代も患者様を見守っていく体制です。
ここのところをしっかりと詰めておく必要性がある。特に患者の退院後は間髪を入れずに即、取り掛かりたいものです。誤解を恐れず申し上げれば、この整備の取り組みがないと何度も患者は強制入院に陥る可能性すらあると言ってもいいと思う。

 ストレス社会が強くなった今日、退院後、薬だけ飲んで自宅療養と外来通院のみ、というだけでは将来再発と入院の繰り返しになる確率は高い。リハビリはもちろん自立訓練の強化と患者を取り巻く支援整備を急ぐ必要があると考えます。
精神障害者やアルコール依存症等の患者さまをサポートすることは、医療の観点からはもちろんのこと、日常生活から起きる様々な局面から私ども全国メンタルケアセンターはご支援の整備が可能なのです。


 専門家ならではのご提案が可能
 述べたい事柄は尽きない話ではありますが、いずれも結局のところ決断するのは「あなた次第」なのです。
私たちは、その解決への橋渡しでしかない。決断なくして将来はない、と申し上げておきましょうか。
私たちは、「解決」その対岸へはお渡しするだけの知識と経験を持っております。行政では得られない、民間ならでは、専門家ならではのご提案が可能と存じます。

 まずは、どんな難解な問題も私どもへお気軽にご相談ください。きっと解決への糸口が見つかるはずです。
                                        




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