薬物依存症とは

(1)依存性薬物
 薬物の中には使用により快感や幻覚を生じさせ、一度使うと繰り返し使いたくなるものがあります。
これらを『依存性薬物』といい、精神作用物質が脳に作用して行動や知覚(五感)・認知・気分(喜怒哀楽)・意識状態などに変化を及ぼします。

依存性薬物と脳に変化を及ぼす薬物の作用
興奮作用 精神を興奮させ気分を爽快にさせる 覚せい剤 MDMA 等
抑制作用 不安を取り除き気持ちを落ち着かせる アルコール、有機溶剤、大麻、睡眠薬、抗不安薬等
幻覚作用 知覚を変容させ幻覚(幻視・幻聴)等を誘発する 大麻、有機溶剤、MDMA等

(2)薬物依存症は、病気です

 薬物を繰り返し使っていると以下のような症状が現れ、自分の意志では薬物の使用をコントロールできなくなります。
精神依存 薬物を使うことが最優先される状態
耐性 以前の使用量では同じ効果が得られなくなること
身体依存 薬物を中止・減量したときに離脱(禁断症状)を起す状態

これが薬物依存症です。「薬物がやめたくてもどうにもやめられない状態」になる病気です。


 (3)特徴的な状態
行動面 きちんと食事をとらない、無気力、寡黙、寝てばかりいる、多動、目的なく動き回る、睡眠リズムの乱れ等
精神面 気分が変わりやすい、イライラしている、不安感が強い、誰かに見張られていると感じる(幻覚・妄想)等

(4)社会的な問題
 薬物依存症になると、本人は何よりも薬物を手に入れ使うことを優先します。このため借金を重ねたり、うそをついたり、盗みをすることがあります。その結果、家族関係や対人関係がこじれ、次第に社会から孤立していきます。

(5)後遺症
 薬物をやめても、ストレス、不眠、飲酒等の小さな刺激で、薬物を使用した時と同じような幻覚・妄想等の精神症状が再発しやすくなります。 このような状態になったことを「フラッシュバック(再燃)」と言います。


(6)薬物依存症とは
 薬物依存症とは、自分の意志では薬物の使用をコントロールできなくなってしまう障害です。薬物のせいで仕事や信用を失ったり、家族がバラバラになったり、逮捕されて刑務所に服役したりしても、なかなか薬物をやめることができません。

「もう二度と使わない」と何回も誓い、「これが最後の一回」と何十回も決意しながらも、また手を出してしまう。つまり、「わかってはいるけどやめられない」、それが薬物依存症なのです。

 薬物依存症はれっきとした精神医学的障害です。決して意志が弱いからでも反省が足りないからでもありません。そして精神医学的障害である以上、いくら説教や叱責、あるいは罰を与えても、それでよくなるものではないのです。なぜなら、薬物を使ったことのある脳は、いつまでも薬物の快感を記憶していて、自分でも気づかないうちに、その人の思考や感情を支配してしまうからです。ですから、薬物依存症に対する専門治療が必要なのです。
薬物依存の特徴

 現在のところ、日本で流行している乱用薬物は覚せい剤(メタンフェタミン)、大麻(たいま)、有機溶剤(トルエン、シンナーなど)が主なものです。薬物依存の本質は、体の痛み、心の痛みに耐えきれずに、生きている実感を得るために示す自己確認・自己治療の努力がそのきっかけとなります。

 また、何とかして薬物を入手し「薬物中心の生活」をしている薬物依存者は、同時に周囲にいる家族にも依存しないと、一人ではその生活が成り立ちません。家族を不安に陥れては、自分の薬物依存の生活を支えるように仕向ける「ケア引き出し行動」が非常にうまいのも特徴のひとつです。

 薬物依存の治療の主体は依存者自身なのですが、薬物依存の結果引き起こされた借金や事故、事件などの問題に対して、周囲にいる家族などが尻ぬぐいや転ばぬ先の杖を出しているかぎり、家族の努力は決して報われることはありません。このように依存者の「薬物中心の生活」に巻き込まれて、際限なく依存者の生活を丸抱えで支えている家族などを「イネイブラー」といいます。

症状の現れ方

 薬物依存でみられる症状としては、@急性中毒症状、A精神依存の表現である薬物探索行動など、B身体依存の表現である各薬物に特有な離脱症状(禁断(きんだん)症状)、さらに薬物の慢性使用によるC身体障害の症状とD精神障害の症状があります。

 何とかして薬物を入手するための行動を「薬物探索行動」といいますが、嘘をついたり、多額の借金をしたり、万引き・恐喝・売春・薬物密売などの事件を起こすこともしばしばあります。日本で流行している乱用薬物では、比較的高率に幻視(げんし)、幻聴(げんちょう)、身体幻覚(しんたいげんかく)や被害関係妄想(もうそう)、嫉妬(しっと)妄想などを主体とする中毒性精神病を合併し、まともな判断ができないために、凶暴な事件にもつながりやすいのです。

 


薬物依存症の早期治療介入のすすめ  

 わが国の薬物関連障害の医学的治療は、もっぱら幻覚や妄想といった中毒性精神病の治療に終始し、より根本的な問題である薬物依存症に対する治療はほとんど顧みられないできました。そのような現状を変えるために、私たちは、薬物依存症患者を診察可能な専門病院を手配し、薬物依存症に対する専門的医療の介入を提供したいと考えています。
 

       
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