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原作者ウィルバート・オードリー牧師の話
1911年6月15日誕生  1997年3月21日死去

 Thomas the Tank Engine: The Complete Collection (Thomas the Tank Engine) (ランダムハウス社刊)P408から1985年11月撮影
(The Reverendは司祭の敬称、OBEは大英勲章受章者)
 
ウィルバート・オードリー牧師は、イギリスのハンプシャー州ロムゼーで国教区牧師の息子に生まれました。少年時代に住んでいたウィルトシャー州ボックスの牧師館近くのグレートウェスタン鉄道(パディントン・ブリストル間)を通じて鉄道愛好家になりました。。文学を学ぶためオックスフォード大学へ進みますが、やっぱり聖職に就く事に決め神学も学ぶます。一旦イスラエルで教職に付き、そこでマーガレット・エミリー・ウェイルと出会い結婚を誓います。1936年帰国して牧師となり、1938年に帰国したマーガレットと結婚、1男2女を儲けました。
 1942年に息子クリストファーが「はしか」にかかっていたとき、自らが少年時代に想像した機関車たちが感情を持って話をする物語を語って聞かせました。いくつかのエピソードを話すうちに、詳細な点の矛盾をクリストファーに指摘されないようにメモ書きを作り出したのがきっかけで、物語は書きとめられることになりました。それを妻のマーガレットが出版するように勧めました。1945年5月最初の本「三だいの機関車」がフランクリン・エドモンド・ウォードの出版社から出版されました。挿絵は専門の挿絵画家が担当しました。翌年「機関車トーマス」が出版されると以後「汽車のえほん」としてシリーズ化してほぼ1年に1冊づつ出版されました。1965年には牧師の仕事を引退しました。


The Thomas the Tank Engine Man
オードリー牧師の伝記、ブライアン・シブリー著 1995年刊


三だいの機関車 イギリス初版 The Thomas the Tank Engine Manから
 1972年に「泉は枯れた」と語って26番目の本の出版を最後に一旦シリーズは終了しました。その後、1984年にブリット・オールクロフトによるテレビシリーズ化(きかんしゃトーマス)と連動して1983年からウィルバート・オードリーの息子クリストファー・オードリーに続編の執筆・出版をさせました、1996年までに14冊の続編が書き継がれました。「汽車のえほん」シリーズとは別に1987年9月にはソドー島の歴史・地理学・言語・産業・地質学等を記した「THE ISLAND OF SODOR」(本邦未訳)を弟のジョージとの共著として出版しました。また当時タリスリン鉄道等の保存鉄道のボランティア活動にも献身的に参加した事でも知られ「汽車のえほん」シリーズにも多く描かれています。1989年に妻マーガレットが他界しました。1995年は「三だいの機関車」出版から50周年の年であることから、ヨーク国立鉄道博物館で記念展示会がひらかれました。そして文化人や偉人の名前を命名しているクラス91型電気機関車シリーズの91024号機(現在91124号に改番)がレヴランド・W・オードリーと命名されました。同年10月にはブライアン・シブリーにより伝記「The Thomas the Tank Engine Man」(本邦未訳)が出版されました。翌年の1996年には、大英帝国4等勲士に叙せられましたが、体調が悪くなった為ロンドンには行きませんでした。そして、そのまま1997年3月21日グロスターシャー州ストラウドの自宅にて安らかに永眠しました。85歳でした。タリスリン鉄道のナローゲージ鉄道博物館内には、ウィルバート・オードリーの書斎が復元され遺品が保存展示されています。

ウィルバート・オードリー牧師の著書の日本語版表紙(一部)

Belinda the Beetle

オードリー牧師は、汽車のえほん以外にも1958〜61年に当時の愛車をモデルに赤い小さな三輪オープンカーのブレンダが登場するジュブナイルを2作執筆しています。1992年に赤いVWビートルのコンバーチブルに設定を変更して単行本が出版されました。画像はその1992年の改訂版の表紙。
 病気で退屈なわが子の為に、自分が好きな蒸気機関車の話を聞かせてやったものから始まった「汽車のえほん」シリーズですが、シリーズ当初は教区牧師らしい勤労の尊さを説く内容や、諦めないで努力すると報われる話、手抜きやサボタージュは必ずしっぺ返しを食う話など教訓的な話が多いようです。しかし、1950年代に入りディーゼル機関車が蒸気機関車に取って代わり始めると、そういった話の筋立てはある程度残るものの、舞台やテーマが保存鉄道へシフトしていきました。
 実際に絵本の売り上げの一部を保存鉄道に寄付もしたようです。そして保存鉄道の宣伝も兼ねた内容は徐々に教訓的でも面白かったシリーズ当初の純粋さを無くし、画家の変更も人気に翳りを落としました。こうしたシリーズ後半の変節を批判することはたやすいのですが、現地イギリスにおいて鉄道を趣味にしている事は、日本におけるほど特殊な事ではなく、週末に保存鉄道を訪問することは割と普通のことのようです。またイギリスの鉄道趣味人は、まず社会人としてきちんと役目を果たし、その上で余暇を鉄道を楽しむ事に費やしています。中でも保存鉄道の取り組みは、趣味と言い切れないほど大掛かりで人手と金がかかるものです。こうした背景をおさえないとシリーズ後半の変節を正しく理解したとは云えません。さらに30年の長期に渡る執筆期間中にイギリスの鉄道自体が大きく変化した事も作品に影響しています。
 では、リアルタイムに読めた者以外は楽しめないのかと言うとそうではありません、前半の教訓的なストーリーは、機関車という親しみやすい存在を通じて、どんな時代・地域の子どもにも大切なことは伝わり、後半の保存鉄道の取り組みは、そういった運動が盛んなイギリスの様子を知る数少ない資料であり、これをきっかけにイギリスを訪れるイギリス以外の地域の読者もいるでしょう。日本の趣味者は、国内の状況だけに目が行きがちで、鉄道ファンと名乗っていながら、海外の鉄道事情には普通の旅行好きよりも疎い事が多いようです、そんな知識の偏ったマニアにならないで、「汽車のえほん」を読んだ子どもたちが良き社会人・良き常識人である鉄道趣味人に育つことが、オードリー牧師の一番の願いでしょう。
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