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「汽車のえほん」のいろいろな話
ゴードンの顔の人:右の写真の人は、エリック・マリオットさん、エドモンド・ウォードの編集者です。原作絵本を世界的なベストセラーに育てた立役者です。この人の営業力や提案力がなければ今日のトーマス人気はありませんでした。でもそんな事よりもゴードンの顔のモデルになった事で有名です。どうですか?みなさんにてますか?ゴードンの名前と性格は、三だいのきかんしゃ執筆当時オードリー家の近くに住んでいたガキ大将の子どもをモデルにしたそうです。息子の友達をよく知っているお父さんだったんですね。
The Thomas the Tank Engine Man: A Biographyp.Xより

ゴードンのモデル機関車LNERのA1と外見上そっくりなA3が
フライング・スコッツマンとして発車する雄姿を描いた絵。
画:黒岩保美氏

トーマスのモデルと伝えられている。
ロンドン・ブライトン・アンド・サウスコースト鉄道の「クラスE2」
主人公のトーマスについてあれこれ:原作絵本でもトーマスが主人公と言っていいのですが、初版当初は少し違いました。第1巻の三だいの機関車にはトーマスは全く出てこなくて第2巻から登場します。オードリー牧師がほうきの柄の一部や木切れから作った機関車のおもちゃトーマスは、クリストファーの大のお気に入りで息子のリクエストに応えて登場したわけです。トーマスは小型のタンク式蒸気機関車で軸配置は0-6-0。内側シリンダー式のため主連棒(コネクティング・ロッド)が無いように見えますが、ピストンともどもメインフレームの内側にちゃんとあります。日本には同様の例が狭軌のためか、善光号ぐらいしかありませんので中途半端な知識の鉄道ファンがピストンが見えない点を変だと指摘しますが、無知な人には内側シリンダー式の存在を教えてあげてください。今のトーマスの外見のモデルは、第2巻の挿絵を最初に描いた二代目挿絵画家のレジナルド・ペインが「オードリー牧師お手製のおもちゃのトーマス」のままでは、挿絵には使えないと判断して、ロンドン・ブライトン・アンド・サウスコースト鉄道の「クラスE2」を元に描いたものに由来します。その後、再版時にはレジナルド・ダルビーの絵に差し替えられましたが、モデル機関車は継承され現在のテレビシリーズにもそのままの外観が引き継がれています。初めて絵本に登場した時は、ナップフォード駅の客車・貨車の構内入れ換えや、重量列車の発車補助をしていましたが、ジェームズのブレーキ事故の救援に活躍してからは、トップ・ハムハット卿からご褒美としてアニーとクララベルという2両の客車と共にファークァーまでの支線の運行を任されました。でもファークァーの先にある採石場に繋がる貨物専用線には、道路併合区間があって路面区間の走行に対応する装備を持たないトーマスには、この路線の担当は適任ではありませんでした。この事からトラブルが発生します。ファークァー支線での運用以外に、間合い運用で夜行郵便列車などの本線の小編成の運行に就くこともあります。或る時タンクに魚が入り込んで苦しい思いをした事から、魚が大嫌いです。漁港へ鮮魚の貨車を牽きに行く時はいやいやです。雪の日に先頭部に除雪機を付けるのが大嫌いで壊したこともあります。寝るときにいびきをかいて寝るようです。

ペインの絵をそのままなぞっただけ
だと伝えられているダルビーの挿絵
トーマスと同じインサイドシリンダーのエドワードを分解修理している図解、煙室の下にシリンダー、第1動輪にクランクがあるのがわかる。Thomas the Tank Engine Manual より
第3巻赤い機関車ジェームズは1948年に発表されました。オードリー牧師は26巻中一番気に入っていない巻として当巻を上げています。おそらく挿絵初担当のレジナルド・ダルビーに不満があったせいもあると思われます。また、締め切りに追われて閃きがないまま無理に話を作ってしまったから好きな巻ではないとも話されています。当時1948年1月1日からアトリー労働党内閣の基幹産業国有化政策によってイギリス国鉄が発足し、ソドー島の鉄道も例外なく国鉄の一支局に組み込まれる事になり、1・2巻まではふとっちょの重役でしたが、この巻からは局長にかわりました。
標識灯の事:イギリスの鉄道では、普通ヘッドライトにあたるものは在りません。では、あれが何かというと脱着式の石油ランプでできた「列車種別標識灯」というものです。 たとえば、各駅停車の旅客列車はボイラー前頭おでこに1灯(画像左上)各駅停車の貨物列車は、ランニングボードの向かって左に1灯(画像左下) 急行旅客列車はランニングボードの左右に1灯づつで計2灯(画像右下)急行貨物列車はランニングボードの向かって左と中央に1灯づつで計2灯(画像右上) などなど、細かく規定されていて、原作者のオードリー牧師は、原作えほんの挿絵については正確にチェックしていて正しく描かれています。その点TVシリーズは、初期こそ気にしていたようですが、今は適当のようです。これをネタした面白そうなエピソードがあってもよさそうなものですが、残念ですが原作にもテレビにもなさそうです。
事故前のヘンリー
事故前のヘンリー
Thomas the Tank Engine Manualより

オーイ、君は本当にヘンリーなのかい?
クルーで改造中のヘンリー
6巻で発生したフライングキッパーの事故で、ヘンリーは修理を兼ねた大改造をうけ火室が変更されました。
Thomas the Tank Engine Manualより
事故前のヘンリーの火室
事故前のヘンリーの火室
Thomas the Tank Engine Manualより

新しいヘンリーの火室
Thomas the Tank Engine Manualより
改造後のヘンリー
現在のヘンリー
Thomas the Tank Engine Manualより
ゴードンに似た?ヘンリー第4巻がんばれ機関車トーマスは1949年の発表、挿絵画家ダルビーの出鱈目炸裂のゴードンそっくりのヘンリーの挿絵がある問題作?です。ご丁寧に四角いバッファーとカーブを描いたランボードまで描かれていて、どう見てもヘンリーではありません。この事を読者から指摘されたオードリー牧師は、「この時ヘンリーは修理の際に部品のストックが無く、ゴードンの部品を使用したから」と苦しい答えをしています。第6巻でヘンリーが大改造を受ける遠因も、描き分け出来ないダルビーに「形を変えなきゃしょうがない」とオードリー牧師が懲りたからだそうです。
オードリー・ファミリー登場:第5巻やっかいな機関車は、1950年の発表です。トーマスが支線に去った後、炭水車付の大きな機関車たちは駅での入れ替え作業に不満で揉め事を起こします。鉄道国営化直後のこの当時、労働争議が絶えなかった世相を反映した内容になっています。階級差別的内容を含んでいて、現代的には穏当な表現ではありませんが、歴史的な名作であり原作者に階級差別する意図はありませんので作品の瑕疵としてあげつらうのはどうかと思います。本書の第4話「いちもくさんのパーシー」の3枚目の挿絵(旧版P53)の左下のパーシーを見送る家族は、若き日のオードリー牧師と妻のマーガレット、息子クリストファー、娘ヴェロニカとヒラリー、と伝えられています。当時の一家の様子を伝える貴重な一枚と言えます。出版前にオードリー牧師がこの挿絵の存在を知っていたかどうかはわかりませんが、もしかしたらレジナルド・ダルビーのいたずらだったのかもしれません。
事故を予言?:第6巻みどりの機関車ヘンリーは、1951年の発表です。シリーズ中唯一5話の短編作品を収録しています。オードリー牧師は、本書の前書きの中で機関車たちに番号が付けられた事を報告する一方で、局長の名前を始めて明らかにしています。作中に名前が出るのは第4話「パーシーのマフラー」の2枚目の挿絵(旧版P45)のホーム脇の荷物用踏切を渡る台車に、「SIR TOPHAM HATT」と書かれた黒い荷物が載せられています。作中にふとっちょのきょくちょうの名前が出てきたのは、この挿絵が初めてです。5話の旧版P60最後の行が原文の当初の版では“as black as niggers”と書いてありましたが、差別的表現であるとの指摘を受けて“as black as soot”に書き直されました。子どもたちの顔が黒人みたいに黒くなったの表現には、悪意は無かったと思いますが、ニガーの単語の使用は不適切でした。本巻の出版の翌年1952年12月15日にウェールズのデボン州トーレ駅において、ダートマス発ロンドン行きの鮮魚と肉の専用急行貨物列車と、同駅の構内の貨物操車場でその専用貨物列車の通過を待つ普通貨物列車との間で発生した事故は、本巻第2話に酷似していてミステリアスです。折からの寒波でポイントが凍結して操作場の普通貨物列車側へ分岐したまま不動作になっていました。当然通過線を通るはずだった専用急行貨物列車は、通過線に入らずに普通貨物列車の後部に激突してしまいました。死亡者こそ奇跡的にでませんでしたが、いくつかの折れている腕、脚、いくつかの壊れているコーヒー・マグ、いくらかの駄目になったトーストが雪の上にある事故直後の様子は、絵本旧版P27の挿絵で予言されていたかのようでしだ。
女王陛下のお出まし:第8巻大きな機関車ゴードンは、1953年刊。出版年の1953年は、6月2日にエリザベス2世の戴冠式がありました。その事に因んだエピソード「ペンキとおめし列車(Paint Pots and Queens)」 が含まれています。
挿絵画家の頭文字:第9巻青い機関車エドワードバーティーのナンバープレートに注目してください。「CRD54」になっていますが、これは挿絵画家ダルビーのフルネームClarence Reginald Dalbyの頭文字と本書の初版年1954年とをあわせたしゃれです。第4巻のバーティーにはナンバーがありませんでした。
アプト式鉄道:第19巻山にのぼる機関車では、ソドー島のカルディー・フェルにある登山鉄道を描いています。アプト式登山鉄道はラック式登山鉄道の一種で鋸の様なラックを2〜3枚少しずらしてレールの中央に設置して専用の特殊な歯車を装備した機関車で急勾配を走ります。イギリスの実在するスノードン山の鉄道をそっくりモデルにして描かれています。専用の歯車付きの小型蒸気機関車は必ず坂の麓側に連結されます。山登りするときは運転手さんは客車の先頭部に乗り込みます。
四角い機関車:第20巻100さいの機関車には昔のソドー島が描かれています。その中には、今のソドー島には居ない機関車も登場しています。右の挿絵はカーク・ローナン港で荷役をしていたニールという小型の機関車です。蒸気機関車なのに四角いボディーで運転室は屋根無しでとても変わった形です。船でソドー島にやってきたスカーロイに話しかけている所です。
テディ・ボストン牧師とオードリー牧師
The Thomas the Tank Engine Man: A Biographyp.XXVより
下の動画は、自分の機関車を運転するテディ・ボストン牧師。
テディ・ボストン牧師登場:第22巻小さな機関車たちは、1967年刊。レーブングラス&エスクデール鉄道の援助活動の一部として同鉄道をモデルに執筆されました。原作者オードリー牧師と友人のテディ・ボストン牧師、フルネームはレヴランド・エドウィン・リチャード・ボストン(1924-1986)が作中に登場しています。テディ・ボストン牧師は原作者以上の鉄道愛好家で、大量の鉄道模型の蒐集、自分の教会の農園内に本物の蒸気機関車を走らせるなど、信じられないような鉄道コレクションを持っていました。

レーブングラス&エスクデール鉄道、上の挿絵と同じ場所?

第31巻より
最新型のディーゼル機関車エマと編成の反対側のピップ。テレビには出てきていません
第27巻から第41巻(日本未発売)一旦、第26巻で執筆が終了したかに見えた本シリーズですが、オードリー牧師の息子クリストファーさんによってシリーズは再開されました。父の薫陶を受けたクリストファーさんもまた父同様に鉄道ファンになりました。そんなクリストファーさんにも子どもができ、かつてのオードリー牧師と自分のように、鉄道について子どもと対話するようになりました。 ある日ネーンバレー保存鉄道を親子で訪問した際、インスピレーションを受けて最初の話を発想しました。早速文章にして父オードリー牧師に見せました。ちょうどテレビ化の相談を受けていたオードリー牧師は、それを読んで天恵を感じ出版を決めたのでした。こうして「Really Useful Engines」が1983年に発行されました。オードリー牧師は本書を「汽車のえほん、第27巻」とし、シリーズの再開を宣言しました。
 しかし、既に時代は完全に蒸気機関車が引退し、保存鉄道でのみ会合できるような状況で、クリストファーさんの描く新シリーズの執筆は、始めから簡単ではありませんでした。父親の時代なら、故障が多く手間ばかりかかって性能の劣るディーゼル機関車は、単純に悪物の存在として描けたのですが、クリストファーさんの時代では故障も少なくなり、性能も蒸気機関車を凌ぐようになり、イギリス国鉄のメインの機関車に成長していていました。当然、ディーゼルの位置づけを見直さなくては成りません。動力源の変化以外にも、技術・社会状況の変化は、鉄道全体が牧歌的な逸話も生まれにくい近代化をもたらしていました。こうした困難な状況のなかでクリストファーさんは父オードリー牧師の願いを受け継ぎ、鉄道をより愛する人を育てるべく、新しい話を第40巻まで作り出していきました。しかし、第40巻の出版後のオードリー牧師の死去で、本シリーズの著作権はオードリー家を離れる事になり、権利所有者の意向でクリストファーさんの本シリーズの執筆は一旦中断され既刊分も品切れにされました。もちろんファンとクリストファーさんは、インターネットのサイトなどを通じて権利所有者や出版社に出版再開の陳情を続けました。この辺の事情は別の頁で詳述しています。
 2005年にテレビシリーズの製作体制が変わり権利所有者に変化がありました。これまでの方針を変えてファンとクリストファーさんの意見を採用しクリストファーさんの執筆分が再版され、2007年の9月に待望の41巻が出版されました。残念ながら日本ではクリストファーさん執筆分の第27巻〜第41巻の翻訳出版は行われていません。それどころかオードリー牧師の執筆分でさえ16巻以降の入手は困難です。本国での状況の変化を受けて、日本語版の出版状況も改善されることを強く願います。

第32巻より
テレビにも出てきたバルストロード。

第35巻より
アイアンデュークという名の古い機関車。

第37巻より
下塗りの錆止め色で赤い機関車になったヘンリーの前で大笑いするハット卿。

第37巻より
ソドー島内に電化された路線があります。

第38巻より
テレビには出てこないウィルバートという機関車
クリストファー・オードリーさんが執筆した「汽車のえほん」の一覧
2
7.(1983年)Really Useful Engines
28.(1984年)James and the Diesel Engines
29.(1985年)Great Little Engines
30.(1986年)More About Thomas the Tank Engine
31.(1987年)Gordon the High-Speed Engine
32.(1988年)Toby, Trucks and Trouble
33.(1989年)Thomas and the Twins
34.(1990年)Jock the New Engine
35.(1991年)Thomas and the Great Railway Show
36.(1992年)Thomas Comes Home
37.(1993年)Henry and the Express
38.(1994年)Wilbert the Forest Engine
39.(1995年)Thomas and the Fat Controller's Engines
40.(1996年)New Little Engine
41.(2007年)Thomas and Victoria


日本語版はありません。
絵本本編の挿絵は全て汽車のえほん各巻からの引用です。

SLと云う言い方について:原書のえほんを読まれた方、DVDを英語で楽しんでいる方、作品中でSLという呼び方は一切出てこないのにお気付きになりませんか?SLの元になったと思われる英語「steam locomotion」は正確には「蒸気機関車」だけを指すのではなく、「蒸気機関で移動する物全般」を意味するので、「蒸気自動車」や「蒸気船」を意味することもあります。 鉄道発祥の地の英国では、他の動力方式の機関車とあえて区別する必要の有る時は、Steam Locomotive engineと呼ぶそうですが、短く呼ぶ時でもSLとは略さないで、単純にSteamとだけいうようです。またなにも付けずにEngineあるいはLocomotiveといえば、機関車全般の事を指すようですが、文脈で蒸気機関車の意味で使用されることが多いようです。英国ではEngine、米国ではLocomotive、を主に使う様です。トーマスはタンク機関車なので劇中ではよくTank Engineと呼ばれてますね。また日本語版の原作絵本では鉄道用語監修の黒岩源雄氏がきちんと管理されたからか、翻訳の桑原・清水両氏の適切な仕事の賜物かSLという呼び方は一切使われていません。英語に本来無いSLという呼び方は、1960年代末から1970年代中ごろまでの「SLブーム」の頃に日本だけで定着したアルファベット日本語なのです。私の推測交じりなので間違っているかもしれませんが、SLブームの少し前の1965年7月に交友社から「SL」というマニア向けの不定期刊行誌が創刊されました。交友社は鉄道趣味雑誌の出版社として有名ですが、本業は戦前から続く鉄道技術者の養成用教本の出版社で執筆者の多くは国鉄関係の方です。「SL」も趣味の雑誌でしたが国鉄職員の方が編集に携わっていらっしゃいました。国鉄関係者の方の間で使われていた蒸気機関車を指す符丁「SL」が雑誌の名前に使われ、それがそのままブームを象徴する呼び名になってしまいSLが定着していったようです。ただ、当時国鉄職員で「SL」の編集長だった黒岩保美氏が書かれた文章には、SLという呼び方はほとんど出てきません。あくまで勝手な想像ですが、営業上は使っても、個人的にはお嫌いだったのかもしれません。 同様に英語では、DLとかELとかの呼び方も使わないようです。あえていえば、やはり厳密に区別するような場面ではInternal Combustion Locomotive engineとかElectric Locomotive engineとは、呼ぶ事があるようですが、頭文字で省略したりはしないようです。略すときはPetrol、Diesel、Electric、と単純に呼ぶようです。文脈によっては、単にEngineとかLocomotive、も使います。
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