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解説:生活習慣病 高血圧
高血圧治療ガイドライン2009 (JSH2009)に準拠して
 

目次
1 新しい高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009) の登場
2 高血圧の定義・分類
3 高血圧の原因・分類
4 高血圧の結果・末路
5 家庭血圧・降圧目標
6 合併症のある高血圧患者の降圧目標
7 高血圧のリスク分類評価
8 初診時の治療方針
9 生活習慣の改善
10 降圧治療:適応と禁忌
11 合併症を伴う高血圧の治療戦略
12 高齢者高血圧の治療戦略
13 お勧めサイト
1) 新しい高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)の登場
近年蓄積された大規模臨床試験の結果などを考慮し、2009年1月16日高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)が日本高血圧学会から発表された。今回最重要視されたのは,「24時間にわたる厳格な降圧」である。JSH2009ではJSH2004と同様に,合併症別の降圧目標値と治療法が示され,目標値までの確実な降圧の重要性が述べられている。治療についてのガイドラインでは、糖尿病合併高血圧治療の第一選択薬がACE阻害剤とARBのみになり、カルシウム拮抗薬が第一選択からはずれ、二次選択薬に格下げとなりました。
以下新しいJSH2009に準拠して記載する。
2) 高血圧の定義と分類
心臓は収縮と拡張を繰り返し、断続的に血液を全身に送り出す。そのとき血液が動脈壁を押し上げる圧力が血圧である。心臓が収縮するときに伝わる圧力が最高血圧(収縮期血圧)、拡張するときの圧力が最低血圧(拡張期血圧)とい呼ばれる。繰り返し測定した血圧が正常よりも高い時高血圧と診断される。
JSH2009では、高血圧の定義を従来と同じく収縮期血圧が140Hg以上、あるいは拡張期血圧が90 mmHg以上とした。収縮期血圧130~139mmHg、拡張期血圧85~89 mmHgを正常高値高血圧として追加し、今までの「軽症高血圧」 「中等症」「重症高血圧」 の表記を「Ⅰ度高血圧」「Ⅱ度高血圧」「Ⅲ度高血圧」 に改定した。
表1
表1 高血圧の分類
分類 収縮期 拡張期
至適高血圧 <120 かつ <80
正常高血圧 <130 かつ <85
正常高値高血圧 130~139 または 85~89
I 度高血圧 140から159 または 90~99
II 度高血圧 160~179 または 100~109
III 度高血圧 >=180 または >=110
(孤立性)高血圧 >=140 かつ <90
3) 高血圧の原因・分類
 わが国では3,300万人(国民の4人に1人)が高血圧と言われている。高血圧症の発症原因から(1)本態性高血圧症と(2)二次性高血圧症に分類される。(1)は全体の95%以上を占め、原因は不明であるが、遺伝および過剰な塩分摂取、飲酒、喫煙、運動不足、精神的ストレス、肥満などの環境因子が大きく関与し、生活習慣病の一つである。(2)は原発性アルドステロン症、腎動脈狭窄、褐色細胞腫などの血圧上昇を引き起こす他の病気のために二次的に発病する。
4) 高血圧の結果・終末像
 高血圧の初期は自覚症状があまりなので放置されることが多い。高血圧を長年放置すると動脈の壁は次第に厚く硬くなり(動脈硬化)、脳梗塞、脳出血、動脈瘤、心筋梗塞、腎硬化症が起こりやすくなる。更に、心臓は高い圧力をかけないと血液を送り出せないため、負担がかかり心肥大が起こり、やがて心不全を引き起こすことがある。
 高血圧によるこのような心血管疾患の発症率は年間2~3%未満とされているが、リスクの高い人ほど発症が高いといわれている。
5) 家庭血圧・降圧目標
JSH2009では家庭血圧が診療室血圧よりも優れた予後予測因子と考えられるので、診察室(140/90mmHg)および家庭(135/85mmHg)におけるそれぞれの降圧目標値)を設定された(表2)。その差は5/5mmHgとした。
表2 降圧目標 診療室・家庭血圧
収縮期血圧 拡張期血圧
診療室血圧 140 90
家庭血圧 135 85
自由行動下血圧
  24時間
  昼間
  夜間

130
135
120

80
85
70
6) 合併症のある高血圧患者の降圧目標
JSH2009では、新たに心筋梗塞後患者(診察室:130/80mmHg未満:)、脳血管障害患者(診察室:140/90mmHg未満)の目標値が加わった。
家庭血圧の降圧目標値がより具体的に設定され、高齢者135/85mmHg未満、若年・中年者125/80mmHg未満、糖尿病患者・腎障害患者・心筋梗塞後患者125/75mmHg未満となった(表3)


表3 合併症のある高血圧患者の降圧目標
診療室血圧 家庭血圧
若年者・中年者 130/85未満 125/80
高齢者 140/90未満 135/85未満
糖尿病患者
慢性腎臓病患者
心筋梗塞後患者
130/80未満 125/75未満
脳梗塞障害患者 140/90未満 135/85未満
7) 高血圧のリスク分類評価
JSH2009では、リスク層別化の評価対象に正常高値血圧(130-139/85-89mmHg)を追加し、予後影響因子としては,メタボリックシンドローム(MetS)や慢性腎臓病(CKD)を追加した。ここでのMetSとは,正常高値以上の血圧と肥満のほかに,糖尿病に至らない血糖値異常または脂質代謝異常のどちらかを有する場合を指す。
例えば、糖尿病患者はリスク第三層とされ、血圧が135/87の正常高値高血圧であったも、高リスクと層別される。表4
表4 高血圧のリスク分類評価

正常高値血圧

I度高血圧

II度高血圧

III度高血圧

130-139/

140-159/

160-179/

180/

85-89mmHg

90-99mmHg

100-109mmHg

110mmHg

リスク第一層

付加リスクなし

低リスク

中等リスク

高リスク

(危険因子がない)

リスク第二層

中等リスク

中等リスク

高リスク

高リスク

(糖尿病以外の12個の危険因子、メタボリックシンドロームがある)

リスク第三層

高リスク

高リスク

高リスク

高リスク

(糖尿病、CKD、臓器障害/心血管病、3個以上の危険因子のいずれかがある)

8) 初診時の治療方針→高リスク群では直ちに降圧薬治療を開始
初診時に危険因子などを評価しつつ、生活習慣の修正を指導する。リスク分類に応じて降圧薬治療を含めた治療を開始する(図1)。すなわち、低リスク/中リスク群では、生活習慣の修正をそれぞれ3ヵ月以内/1ヵ月以内指導し、降圧目標(140/90mmHg未満)が得られなければ降圧薬治療を開始する。高リスク患者では直ちに降圧薬治療を開始するが、正常高値血圧の場合は生活習慣の修正を先行させ,投薬時期は主治医が判断する。
図1 初診時の治療方針
*正常高値血圧の高リスク群では生活習慣の修正から開始し,目標血圧に達しない場合に降圧薬治療を考慮する
9) 生活習慣の改善 高血圧治療の基本

基本は生活習慣の改善である。
1) 食事療法:a)食塩制限:日本人の1日平均塩分摂取量は10~12gといわれ、味付けを工夫し、約半分の6g未満になるように心かけよう。外食時は塩分の多いラーメンやそばつゆなどは飲まないように気をつけよう。b)野菜、果物の摂取:含まれたカリウム、カルシウムなどは降圧効果がある。c)カロリーとコレステロールの制限:過食は肥満、高脂血症につながる。肥満の人は体重を1kg減量すると血圧が1mmHg程度低下すると期待されいる。

2) 運動療法:ゆったりしたペースで無理なく行う運動でも降圧効果が認められている。ウオーキング、ジョギング、水中歩行などの少し汗ばむ程度の有酸素運動が勧められている。可能ならば1日30分以上週3~4回以上行うことが望ましい。ただし、心臓病や血圧の高い人は主治医と相談してからはじめてください。
3) 適正体重の維持:肥満(特に内臓脂肪型肥満)はメタボリックシンドロームの元凶とされ、高血圧などの生活習慣病を引き起こす。男女とも BMI=25を超えないように努力しよう。
≪計算式:BMI =体重(kg) ÷身長(m)÷身長(m)≫
4) 適度の飲酒:男性での適度の飲酒量はビールなら中ビン1本(200kcal)、日本酒なら1合(180cc; 200kcal)。アルコールを少量摂取する人はまったく飲まない人に比べ、心臓病による死亡が少ないと報告されているが、過多の飲酒は脂肪肝、肝機能障害、体重増加,血圧上昇を来す。
5) 禁煙:喫煙により血管が収縮し、血圧が上がると共に血液が凝固しやすくなり、動脈硬化が加速する。
6) 入浴時の注意:高温(>42°C)のお風呂に長時間(>10分)浸ると、血管が急速に拡張し血圧が著しく低下することがある。特に動脈硬化が進んでいる人は血圧低下が著しく、入浴中の事故につながるので注意を要する。
7) 排泄時の注意:排泄(大便)時に長時間力むと血圧が上昇する。規則正しい排便習慣、繊維の多い野菜、海草などの摂取、運動などをして便秘にならないように注意する。
8) 十分な睡眠と休養:睡眠不足、ストレスは高血圧をきたす。肉体的・精神的過労を解消し、十分な睡眠と休養をとりましょう。

10) 降圧治療 適切な降圧剤の選択 適応と禁忌
主要降圧薬として単剤もしくは併用使用を目的に最初に投与すべき降圧薬は,JSH2004では,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬,β遮断薬,α遮断薬の6剤であったところが,JSH2009ではα遮断薬が外れ,1)降圧薬は1日1回投与を原則とするが,24時間にわたって降圧することがより重要であり,1日2回の分割投与が好ましいこともある。2)降圧目標を達成するためには,多くの場合2,3剤の併用が必要となる。その際,少量利尿薬を積極的に併用すべきである。3)合剤により処方を単純化することはアドヒアランスの改善,血圧コントロールの改善に有用である,等の詳細な記載となった。併用療法については,JSH2004からβ遮断薬とα遮断薬の併用が外れた。
 また,主要降圧薬の積極的適応については,Ca拮抗薬では糖尿病が外れ,頻脈(非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)が追加され,ARBとACE阻害薬では蛋白尿,メタボリックシンドロームと心房細動予防が新たに追加された。表5
降圧剤の禁忌は表6に示した。
表5 合併症と選択される降圧剤

 

Ca拮抗薬

ARB/ACE
阻害薬

利尿薬

β遮断薬

左室肥大

 

 

心不全

 

  ●*1

  ●*1

心房細動(予防)

 

 

 

頻脈

  ●*2

 

 

狭心症

 

 

  ●*3

心筋梗塞後

 

 

蛋白尿

 

 

 

腎不全

 

  ●*4

 

脳血管障害慢性期

 

糖尿病/MetS*5

 

 

 

高齢者

  ●*6

 

*1少量から開始し、注意深く漸増する *2非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬 *3冠攣縮性狭心症には注意 
*4ループ利尿薬 *5メタボリックシンドローム *6ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬

表6 降圧剤の禁忌

降圧薬

禁忌

慎重使用例

Ca拮抗薬

徐脈(非DHP系)

心不全

ARB

妊娠、高カリウム血症

腎動脈狭窄

ACE阻害薬

妊娠
血管神経性浮腫
高カリウム血症

腎動脈狭窄症

利尿薬
(サイアザイド系)

痛風
低K血症

妊娠
耐糖能異常

β遮断薬

喘息
高度徐脈

耐糖能異常
閉塞性肺疾患
末梢動脈疾患

11) 合併症を伴う高血圧の治療戦略 糖尿病ではRA系阻害薬のみが第一選択に改定
慢性腎臓病(CKD)を合併する高血圧の治療計画は,従来どうりに130/80mmHg未満への降圧とともに,尿蛋白の正常化を目指す。第一選択薬はレニン-アンジオテンシン系(RA系)阻害薬とされ,降圧不十分な場合はCa拮抗薬や利尿薬を併用する。
糖尿病性腎症への進展抑制と糖代謝改善の観点から、糖尿病を合併した高血圧の場合はRA系阻害薬のみが第一選択薬に改定され、Ca拮抗薬は,利尿薬は効果不十分時の併用薬に位置づけられた(図2)。
図2 糖尿病を合併した高血圧患者の治療戦略
12) 高齢者高血圧の治療戦略
JSH2009では、降圧目標はJSH2004と同様に140/90mmHg未満とされ,高齢者でも厳格な降圧を必要とすることが強調された。ただし75歳以上の後期高齢者では,150/90mmHg未満を中間目標とした緩徐な降圧を行う。推奨薬剤はCa拮抗薬またはRA系阻害薬,少量の利尿薬であり,必要に応じて2剤,3剤を併用する。
13)お勧めサイト
日本心臓財団の「高血圧治療ガイドライン」は日本高血圧学会のガイドラインを要約している。
厚生労働省の「高血圧」は一般向けに詳しく解説している。
国立循環器病センターの「高血圧治療の最新事情」は一般向けに詳しい解説が掲載されている。
国立病院大阪医療センターの「高血圧」はやや専門的解説している。
BANYUの最新メルクマニュアル医学百科の「高血圧」では高血圧について詳しく記載されている。
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