| 1)花粉症とは |
|
- 花粉症は第二の国民病といわれ、全人口の約20%がかかり、有病率は年々増の傾向にある。
- 花粉症は死に至る病気ではないが、20~50才代の働き盛りの方に有病率が高く、仕事・家事・学業に影響を与え、QOLを損ない、生産性に甚大な損失を与えている。
- スギやヒノキなどの花粉が飛び交う季節に、これらの花粉が原因物質(アレルゲンと呼ばれる)となって、鼻症状(くしゃみ・鼻みずなど)を引き起こすことから季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれている。
- 花粉症アレルゲンの代表格はスギ花粉であるが、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカバなど約60種類の植物花粉がアレルゲンとして報告されている。
- 一方、症状が一年中持続し、ダニ、ハウスダストなどがアレルゲンであるものは通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれている。
|
|
|
| 2)花粉症の症状・かぜとの鑑別 |
|
- 症状:花粉と接触してから数分~数時間で、くしゃみ、鼻みず(水様性)、鼻づまりなどの鼻の症状の他に、目のかゆみ、流涙、充血、異物感、時に眼痛、羞明など眼症状が出現する。さらに喉のイガイガ感、かゆみ、乾燥感などの咽頭症状や乾いた咳、耳漏、耳つまりなどの耳症状、顔面や頚部などの露出部の蕁麻疹様浮腫性紅斑、下痢、食欲不振などの消化器症状、頭重感、頭痛、不眠、イライラ、全身倦怠などの全身症状が見られる。花粉症患者の中にはリンゴ、サクランボ、メロンなどの果物を食べると、口腔・口唇のかゆみ、ぴりぴり感、口腔粘膜の浮腫性腫脹が現れることがあり、口腔アレルギー症候群と呼ばれている。また約5~20%の花粉症患者には、花粉の飛散期に気管支喘息が誘発されることがある。
- かぜとの鑑別:ヒノキやスギ花粉は飛散する時期とかぜの流行期が重なり、鑑別が困難な場合はある。一般的に花粉症は、サラサラした水様の鼻水と目のかゆみが特徴的であり、症状が出現すると数週間以上持続するが、感染症であるかぜは一般的には目のかゆみはなく、数日のうちに鼻水は粘性の高いものになり、さらに黄色や緑など色のついたものとなる。また、花粉症では屋外のほうが花粉が多いため、症状が強くなるという点もかぜと異なる。さらに、かぜでは高熱が出ることがあるが、花粉症ではあっても平熱か微熱程度、花粉症では皮膚や耳のかゆみを認めることがあるが、かぜでは認められない。
|
|
|
| 3)花粉症の発生機序 |
|
- 体内に花粉が侵入したとき、体は花粉を異物として排除するか否かを判断する。異物と判断された場合は、花粉を体の外へ排除するシステムであるアレルギー反応が発動され、花粉をくしゃみで吹き飛ばし、鼻みずで洗い流すなど症状が起きる。これが花粉症の本態である。
- スギ花粉症の発生機序をスギ花粉を例に説明する
- 第一段階として、“感作”といわれる準備状態が起きる。原因物質となるスギ花粉(アレルゲン)が鼻腔に入ってくると体の中にスギ花粉に対する抗体(スギ花粉IgE抗体)がつくられ、これが鼻の粘膜の肥満細胞にくっ付く。すぐにも花粉症が発生やすい準備状態になり、これを『感作された状態』といいます。感作されるか否かは、体質によって決まり、スギやダニでは約50%の人が感作される。
- 第二段階として、再び多数のスギ花粉が飛来すると、またこれらのスギ花粉に対しIgE抗体が作られ、肥満細胞にくっ付き、肥満細胞が活性化されて化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が遊離して種々の症状が発症する。
- 遊離されたヒスタミンは神経を刺激し、くしゃみ、鼻みずなどの症状を引き起こし、遊離されたロイコトリエンなどは血管を刺激し、鼻づまりの症状を引き起こす。
- 感作された人の約50%の人が発症し、遺伝的素因、大気汚染、花粉飛散量などが関与していると考えられている。
|
|
|
4)花粉症カレンダー
|
|
関東地域における主な花粉の開花と飛散時期を示す (『 鼻アレルギー診療ガイドライン』より一部改変)

|
|
|
| 5)花粉症の診断 |
|
- 花粉症の診断には、アレルギーであることの証明とアレルゲンの特定に大別される。
- アレルギーの証明:アレルギーの既往症、家族歴、アトピー素因を詳細に問診し、花粉飛散時期と花粉症の症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ)が一致し、鼻内の粘膜に所見があれば概ね診断できる。さらに、鼻汁好酸球検査で鼻汁中に好酸球の増加を認めれば、アレルギー症状であることがほぼ証明される。また、採血で調べる血液中の総IgEの定量(RIST)は重症度の目安にもなることがある。
- レルゲンの特定:アレルゲンをの特定には、血液中の特異的IgE(RAST)を測定する方法、微量アレルゲンを皮内注射して調べる皮内テストや針で傷つけた皮膚に垂らして調べるスクラッチテスト、アレルゲンを染み込ませた紙ディスクを鼻粘膜にのせて鼻汁を調べる鼻誘発テストなどがある。
-
|
|
|
| 6)花粉症の治療戦略 |
|
- 1) アレルゲンの回避
- 治療戦略の基本は花粉アレルゲンからの回避である。花粉の飛散が多い日の外出を控え、窓やとびらを閉め、外出時にはマスク、めがねを着用し、帰宅後は洗面、うがいを行い、シャワーや衣服を着替える。洗濯物や布団を外に干さないことが大事である。
- 2) 薬物療法
-
| 1) 初期療法 |
|
- 初期治療の目的は、過敏性の亢進を抑制し、花粉飛散ピーク時の症状を軽減することにある。
- 鼻アレルギー診療ガイドライン2005年版によると、花粉飛散開始前あるいは症状発現前から飛散ピーク時の病型と重症度に応じ、ケミカルメディエーター遊離抑制剤、第2世代抗ヒスタミン剤、抗LTs薬(抗ロイコトルエン薬)いずれかの服用が推奨されている。
- 初期治療として第2世代抗ヒスタミン剤が多く使用されている。初期治療として第2世代抗ヒスタミン剤を使用すると、症状発現後に始めて服用する方に比べ、症状の発現が著しく軽減すると報告されている。しかし、大量飛散時は治療を強化しても効果は不十分なこともあり、鼻噴霧ステロイドを初期治療したほうがより有効とする報告もある。
|
| 2) 本格飛散後の治療
|
|
- 飛散ピーク時の病型や重症度に応じ、ケミカルメディエーター遊離抑制剤、第2世代抗ヒスタミン剤、抗LTs薬、鼻噴霧ステロイド、点眼用抗ヒスタミン薬、点鼻用血管収縮薬、経口ステロイド薬、もしくは特異的免疫療法・手術療法が推奨されている(表参照)
- 治療効果不十分のときはステップアップし、飛散ピークを過ぎ症状が落ち着いてくれば治療をステップダウンして飛散終了時期まで継続投与する。
|
重症度に応じた花粉症に対する治療法の選択
- (鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症ー2005年版(改定第5版)より)
|
|
|
|
|
重症度
|
初期治療
|
軽症
|
中等症
|
重症・最重症
|
|
病型
|
1) 遊離抑制薬
2) 第2世代H1拮抗薬
3)LTs拮抗薬
1), 2), 3)のいずれか1つ
|
|
くしゃみ・
鼻漏型
|
鼻閉型または鼻閉を主訴とする充型
|
くしゃみ・
鼻漏型
|
鼻閉型または鼻閉を主訴とする充型
|
|
治療
|
1)第2世代H1拮抗薬
2)鼻噴霧用
ステロイド薬
1)と点眼薬で治療を開始し,必要に応じて2)を追加
|
第2世代H1拮抗薬
+
鼻噴霧用ステロイド薬
|
LTs拮抗薬
+
鼻噴霧用
ステロイド薬
+
第2世代H1拮抗薬
|
鼻噴霧用
ステロイド薬
+
第2世代H1拮抗薬
+
点眼用H1拮抗薬,遊離抑制薬またはステロイド薬
|
鼻噴霧用
ステロイド薬
+ LTs拮抗薬
+第2世代H1拮抗薬
必要に応じて点鼻用血管収縮薬を治療開始時に7~10日間に限って用いる. 鼻閉が特に強い症例では経口ステロイド薬を4~7日間で治療を開始することもある.
|
|
点眼用H1拮抗薬,遊離抑制薬
|
点眼用H1拮抗薬, 遊離抑制薬またはステロイド薬
|
|
|
鼻閉型で鼻腔形態異常を伴う症例では手術
|
|
|
特異的免疫療法
|
|
抗原除去
|
|
|
遊離抑制薬:ケミカルメディエーター遊離抑制薬、 抗LTs薬:抗ロイコトルエン薬 |
|
|
|
|
|
7)花粉症治療薬の特徴
|
|
- ケミカルメディエーター遊離抑制薬(肥満細胞安定薬)
|
|
|
インタール
リザベン
ソルファ、
アレギサール、ペミラストン
|
1. 連用により改善率が上昇する
2. 効果はマイルドなため臨床効果の発現が遅い
3. 鼻つまりにもやや効果がある
4. 副作用が比較的少ない
5. 眠気がない
|
- 第1世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)
|
|
|
ポララミン
タベジール
|
鼻水に即効性(10~20分)、持続時間が短い
1. 市販の鼻炎薬にも頻用
2. くしゃみ、鼻漏に有効。鼻つまりには効果不十分
3. 副作用として眠気、胃腸障害、コウカツ、めまい、頭痛があり、抗コリン作用が強いため、緑内障、前立腺肥大、喘息には禁忌。自動車運転禁止
|
- 第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)
|
|
|
ザジテン、アゼプチン、
セルテクト、ゼスラン、
ダレン、アレジオン、
エバステル、ジルテック、
リボスチン、タリオン、
アレグラ、アレロック、
クラリチン
|
服用1~2日で効果が出現するが十分な効果は2週必要
第1世代に比べ
1. 中枢沈静、抗コリン作用などの副作用が少ない
2. 全般改善度はよい
3. 鼻閉に対する効果がややよい
4. 効果がマイルドなため発現が遅く、持続が長い
5. 連用により改善率が上昇する
|
|
|
|
|
オノン
|
1. 鼻粘膜の腫脹抑制により鼻閉を改善する
2. くしゃみ、鼻汁にもある程度効果がある
|
- プロスタルランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬(抗プロスタルランジンD2・抗トロンボキサンA2薬)
|
|
|
バイナス
|
1. 血管透過性亢進を抑制し鼻閉を改善する
2. くしゃみ、鼻漏にも有効
3. 抗血小板凝集能あり
|
|
|
|
|
アイピーディ
|
1. サイトカインの放出を抑制しIgE抗体の産生を抑制する
|
|
|
|
|
アルデシンAQネーザル
フルナーゼ
|
1. 効果が強い
2. 効果発現がやや早い
3. 副作用が少ない
4. 鼻アレルギーの3症状に等しく効果がある
5. 投与部位のみ効果が発現する
6. 鼻刺激感、乾燥、鼻出血が出現することあり
|
|
|
|
|
セレスタミン
|
1. 重症・最重症・難治例に対し、短期間投与
2. 感染症、消化性潰瘍、糖尿病、緑内障などは禁忌
|
|
|
(2005年版鼻アレルギー診療ガイドラインより;一部改変)
|
|
| 1) 抗ヒスタミン剤を選択するときは薬価、中枢神経への副作用を考慮しながら選択する。
|
|
- 第1世代抗ヒスタミン剤は安価であるが眠気が強い。眠くない人は考慮する。
- 第2世代抗ヒスタミン薬は比較的高価であり、1日1回投与と2回投与がある。眠気の少ないもの順に:①アレグラ、②アレジオン、③エバステル、④ジルテック、⑤アレロック、⑥アゼプチン⑦ゼスランなどがあり、症例により薬剤を選択する。
|
| 2) 妊婦の花粉症治療 |
|
:ガイドラインでは妊娠4ヵ月半までは原則として薬物の使用は避けたほうは安全としている。温熱療法、入浴、蒸しタオル、マスクなどを試み、妊娠4ヶ月以降にどうしても薬剤が必要な場合は、鼻噴霧用ケミカルメディエーター阻害薬(インタールなど)、鼻噴霧用ステロイド薬などの局所用薬を最小限に用いるとしている。 |
|
|
|
| 8)花粉症のその他の治療:漢方、ホルモン注射など |
|
- 1) 漢方治療:小青竜湯、麻黄附子細辛湯などが有効である。詳細は「漢方が有用な病気:花粉症」を参照してください。
- 2) ホルモン注射:・ケナコルトに代表される副腎皮質ホルモン(ステロイド)の筋肉注射は、『一発で治る』または『魔法の薬』として一部の医療機関で行われいるが、副作用の大きさなどから日本アレルギー学会、および日本耳鼻咽喉科学会では望ましくない治療と薦めていません。
|
|
|
| 9)お勧めサイト |
|
|
|
|
|
|