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解説:漢方治療 インフルエンザ・風邪

目次
1 かぜの考え方(西洋医学)
2 かぜに対する漢方医学の考え方
3 漢方医学:かぜの初期
4 漢方医学:進行したかぜ
5 漢方医学:咳・痰が長引いたかぜ
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1)かぜの考え方(西洋医学)
  • 通常”かぜ”と呼ばれていることばは正式には”かぜ症候群”と呼ばれ、その80~90%はウイルス、残りはマイコプラズマ、クラミジア、細菌などの病原微生物が上下気道(鼻腔、咽頭、肺など)に感染して発症する。原因となる病原微生物の種類に関係なく、気道の症状(くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・咳・痰など)、全身症状(発熱・頭痛・全身倦怠感・食欲不振など)の他に、消化器症状(嘔気・嘔吐・腹痛・下痢等)などの類似な症状が出現する。従って一括してかぜ症候群と呼ばれているが、普通の感冒(鼻かぜ)、咽頭炎、クループ熱、気管支炎、肺炎、インフルエンザなどのいくつかの病型に分類される。広い意味でインフルエンザもかぜ症候群に含まれる。
  • インフルエンザは、インフルエンザ・ウイルス(A型、B型、C型)の感染により発症し、のどの痛み、鼻汁、咳などの症状も見られますが、突然38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの強い全身の症状が現れる特徴を持つ。重症化しやすいことからかぜ症候群の中でも別扱いされる。
  • インフルエンザ以外のかぜ症候群の多くははパラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなどのウイルス感染により発症するが、これらのウイルスには特効薬がまだ開発されていない。従って、発熱があれば解熱剤、痛みがあれば鎮痛剤、咳痰には去痰剤・咳止め、下痢にが整腸剤などの対症療法が行われる。一部のかぜ症候群はクラミジア、マイコプラズマなどの細菌感染で発症し、この場合は抗生剤が有効である。インフルエンザの場合は抗インフルエンザウイルス薬として1)塩酸アマンタジン(商品名シンメトレル)、2)吸入薬のザナミビル(商品名リレンザ)と経口薬であるリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)がある。
  • 発熱が主症状で細菌感染が疑われる場合(溶連菌感染症、扁桃炎など)、高熱が続き咳がひどい時や膿性痰がひどくときは抗生剤を投与することが多い。
  • 西洋医学でも安静、保温、栄養補給、水分の補充が重要と考えられている。
2)かぜに対する漢方医学の考え方 
  • 漢方では、かぜに罹患したら体温を上げて治癒を早める考え方から”麻黄剤のような発熱を助ける漢方を使い、解熱剤は使用しない”ところが西洋医学と大きく異なっている。ウイルスの多くは温度を上げると不活性化されることから理論的にも正しいと考えられている。
  • 生体防御反応の強弱(実証・虚証)、かぜの時期(急性期か、亜急性期か;漢方では太陽病期~少陽病期、陰期)、悪寒を伴う寒証が、伴わない熱証かもな考慮して方剤を選択する。
  • 一般的には体力のある若い人や子供(実証タイプ)は、生体防御反応が強く、症状が激しく,無汗高熱で、脈の緊張がよく頻脈になる。体力のない人や高齢者(陰証タイプ)では、反応が弱く、寒気が先行し、熱もそれほどでなく、脈の緊張は弱い。
  • かぜの初期(太陽病期;通常は4~5日)は、生体の非特異的防御反応時期であり、悪寒・発熱・咽頭痛・関節痛などの症状が見られる。自然発汗の有無(自然発汗がなければ実証)などで薬剤を選択する。
  • 進行したかぜ(少陽病期)の自覚症状は、首筋~肩の凝り、食欲不振、悪心、嘔吐、口が苦い、季肋部の膨満感、出没する発熱(往来寒熱)あるいは微熱を認める。他覚症状として胸脇苦満、舌の赤みが強い、乾燥した白苔あるいは黄苔を認める。この時期は免疫能を賦活する柴胡剤を使用する。
  • もともと体力のない人ではかぜの初期から陰病期(陰証)で発症し、悪寒、発熱、頭痛、関節痛などの全身反応があまり強くなく、咽頭痛のみを自覚する。全身倦怠、手足の冷え、顔色不良、食欲不振、消化不良、下痢が出現する。
3)漢方医学:かぜの初期
  • 陰証で発症の場合の薬剤(TJはツムラの製品番号)
麻黄附子細辛湯 TJ-
127
高齢者や体力のない人のかぜの初期や初期に発汗しすぎた場合の治療に用いる。
全身倦怠、悪寒が強くて熱感が少ないあるいは微熱、手足の冷え、顔面蒼白、咽頭痛、くしゃみ、鼻水、力のない咳など症状
真武湯 TJ-
30
上記の麻黄附子細辛湯の適応に類似しているが、下痢や腹痛などの消化器症状

  • 陽症で発症の場合の薬剤(TJはツムラの製品番号)
麻黄湯 TJ-27 悪寒、発熱、頭痛、自然発汗なし、咳、喘鳴、筋肉痛、腰痛、関節痛)。インフルエンザの初期
葛根湯 TJ-1 自然発汗がなく、項背部の凝り
桂枝二越婢一湯 桂枝湯と越婢加朮湯の合方で代用 自然発汗軽度、咽頭痛があり、寒気よりも熱感の方が強いとき。口が渇き、冷たいものを飲みたがる。
桂麻各半湯 桂枝湯と麻黄湯の合方 自然発汗軽度、咽頭痛があり、寒気よりも熱感の方が強いとき。口が渇きなし
桂枝加葛根湯 桂枝湯と葛根湯の合方 自然発汗があり、項背部の凝りが強い
桂枝湯 TJ-45 体力が衰えた時や高齢者・体力のない人のいわゆる万年かぜの症状。自然発汗あり、寒気、微熱、頭痛があるが、肩凝りが目立たない。精神症状はない。
香蘇散 TJ-70 胃腸衰弱で神経質の人のかぜの初期。万年かぜの症状。
腹満、腹痛、悪心、嘔吐、頭痛、頭重、めまい、耳鳴り、肩こり
小青竜湯 TJ-19 くしゃみ、鼻水、泡沫水様の痰を伴う咳、鼻炎
4)漢方医学:進行したかぜの薬剤(TJはツムラの製品番号)
大柴胡湯 TJ-
8
体力が充実し、便秘がち。上腹部が張って苦しい。舌は白や黄色の厚い苔であることが多い。
柴胡加竜骨牡蛎湯 TJ-
12
体力は中等度~実。心悸亢進、不眠、抑うつ、不安などの精神症状を伴う。舌は淡紅、多くは白黄色。鎮静作用が強い。
四逆散 TJ-
35
体力は中等度。大柴胡湯と小柴胡湯の中間証。いらいら、抑うつ、不眠などの心身症の症状、上腹部の張り(腹直筋の緊張)、四肢冷感。舌は白黄色。
小柴胡湯 TJ-
9
体力が中等度で上腹部が張って苦しく、舌苔が生じ、口内が不快で食欲不振、時に微熱や往来寒熱、悪心、咳がある。腹痛はない。
柴胡桂枝湯 TJ-
10
発熱、首から上の発汗、頭痛、首すじの強ばり、関節痛、食欲不振、嘔気、上腹部(腹直筋)の緊張、腹痛。桂枝湯と小柴胡湯湯を合わせた漢方。
柴胡桂枝乾姜湯 TJ-
11
体力がなく神経質な人に用いる。盗汗、冷え症、肩こり、下痢、腹痛、上腹部の膨満感。
小柴胡湯加桔梗石膏 TJ-
109
小柴胡湯の適応に似ているが、熱があって悪寒がなく、扁桃痛、咽喉頭痛が顕著なときときに用いる。
5)漢方医学:咳・痰が長引いたかぜ
  • 激しい湿性咳嗽の場合の薬剤(TJはツムラの製品番号)
柴朴湯 TJ-
96
虚実中間証 気分がふさいで、咽喉、食道部に違和感があり、咳嗽、喀痰、呼吸困難あるいは喘鳴を伴う湿性の痰に用いる。気道を乾燥させる。
柴陥湯 TJ-
73
比較的実証傾向 強い咳が出て、痰が切れにくく、胸痛を伴う喀痰;心窩部の抵抗・圧痛が顕著のが特徴、往来寒熱
竹筎温胆湯 TJ-
91
虚実中間証 かぜなどの回復期になっても熱が長引き、あるいは解熱後咳が出て痰が多く、不眠を訴える場合;夜に咳や痰が出て眠れないのが特徴。

  • 激しい乾性咳嗽の場合の薬剤(TJはツムラの製品番号)
麦門冬湯 TJ-
29
中等度~虚実中間証~やや虚証 痰を伴わない激しい咳嗽、発作性に咳が頻発し顔面紅潮する場合。咽頭がイガイガするのが特徴。
麻杏甘石湯 TJ-
55
比較的実証傾向 咳嗽が強く、口渇、自然発汗、熱感があり、喘鳴、呼吸困難などを訴える場合。冷たいものを沢山飲みたがるが特徴。
神秘湯 TJ-
85
虚実中間証 咳嗽、呼吸困難が強く、神経症や抑うつ症状は軽度。胸脇苦満が特徴。

  • 力のない湿性咳嗽の場合の薬剤(TJはツムラの製品番号)
参蘇飲 TJ-
66
胃腸衰弱な虚証 発熱、頭痛、咳嗽、喀痰があり、悪心、嘔吐する場合がある場合。発症後数日経過したものに用いるが、咳痰があれば発病初期から使用してもよい。漢方総合感冒薬の第一選択薬。
清肺湯 TJ-
90
比較的虚証傾向 粘っこい痰の多く出る咳。熱証。
苓甘姜味辛夏仁湯 TJ-
119
比較的虚証傾向 冷え性で水様な喀痰、水様な鼻水、くしゃみ、咳嗽を呈する特徴がある。小青竜湯の証で胃腸衰弱、表証のないものに用いる。

  • 力のない乾性咳嗽の場合の薬剤(TJはツムラの製品番号)
滋陰降火湯 TJ-
93
虚証 咽頭に潤いがなく、痰は少ないが粘稠で切れにくく、夕方・夜間に咳が頻発し、暖まると咳だ出る。便秘傾向。
滋陰至宝湯 TJ-
92
虚証 慢性に経過した粘稠で喀出しにくいの咳。微熱、盗汗、食欲不振がある。
人参養栄湯 TJ-
108
虚証 病後などで体力が低下し、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、微熱、悪寒、咳などを伴う場合に用いる。

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