第54回 「BSとDVDの日々」  12’2.3
昨年は東日本大震災という未曾有(みぞうゆう?)の災害が起こり、残念ながら大変な年となってしまいました。復興には長く辛い時間がかかるでしょうが、今年は昨年の分まで良い年となるように祈るばかりです。遅ればせながら今年もよろしくお願いします。

タイトルは「酒とバラの日々」という映画をもじっているのだが、誰も気づかないだろうな・・・(まあ、いいけど)。一人暮らしの母(84歳)が、ついにというかやっとというか(?)、仙台に住む兄の家で暮らすことになった。寂しく残念なことだが仕方のないことだろう。そんなことで、30数年で1・2回あったかという埼玉の自宅での正月となった。何もすることがない、スケッチに行こうとするがとても寒くて外に出る気にならない(えーい、軟弱者!)。いつもの1日のように時間が過ぎて行く。それでいいのか?と思うがどうしようもない。テレビだけが正月をやっている。なんの感慨もなくボーッとして年末年始を終えた。2012年になったからといって2011年の問題が解決されるわけもなく、震災、原発事故、ユーロ危機、円高、不況、デフレ、少子化、年金問題などなど、これらは変わることなく(むしろ問題を大きくして?)2012年に移行している。夢や希望が欲しいのだがなかなか見つからない。不安や閉塞感は今年も続くだろう、新年からため息が出る。

だいぶ前だが、我が家も地デジになった。「総務省のもくろみには乗らないぞ!地デジ化断固反対!こうなればテレビを捨てる絶好のチャンスだ!」と思ったが、母が我が家でしばらく過ごすことになり、「CSの時代劇チャンネルを見せてあげなさい!」という兄からの強い注文もあり(さすがNHK職員?)、仕方なく、我が家もなし崩しの地デジ移行となった。しかもBSもつけなければならない。いきなりの多チャンネルになったが、いつもテレビばかり見ているわけにもいかないし、見たい番組などそうそうない。しかしNHKには受信料を払っているわけだから、その分は無理矢理でもBSの映画を見ようと思った(貧乏性だねー!)。

これも今更だが、最近やっとDVDを買った(!)。なぜ今まで買わなかったかというと、家電戦略に憤りを感じたからだ。これまではベータのビデオレコーダー、ビデオカメラ、VHSのビデオレコーダー、カメラ、8oビデオカメラ、レーザーディスクレコーダーやらを高い値段で買わされてきた(?)。もう頭に来て、新製品を追いかけるのは止めようと思った。再生のみのDVDだと安い値段で買える(5,000円弱!)。これなら近い将来ブルーレイや新しいものに移行しようと、腹は立たないだろう。鼻から録画機能付きのものを買う気はなかった。それまでのビデオレコーダーでも感じたが、2時間ほどの映画やドラマを録画して見ないということがいかにあったか。再生だけだと、見だしたら集中して見るしかない。BS映画も録画できない以上時間になれば、これまた集中して見るしかない。いつでも見られるとなったら、人は集中して見ない(これはスケッチにも言える?)。そして、その時間こそが映画好きにとっては至福の時間になるだろう。ということで、この寒い時期はBS映画やレンタルDVDを見まくることにした。

洋・邦画問わず、まずは「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ1・2作を見る。民放テレビでは何度も見ているが、今一つ良いとは思えなかった。ところがDVDで見ると、ものの数分ですっかり物語に引き込まれてしまった。その上いたく感涙し、2作品を一気に見てしまう。考えるにノーカット、さらに途中CMがないということが感動に繋がったように思う。ズタズタにカットされ、コマ切れにされたテレビ放映はあまりにもひどい。やはり映画は映画館で見るに限る。ちょうど公開中の3作目「64」は、そんなこともあって映画館で見ることになり、前2作以上に感動することになった。

始めて字幕洋画の洗礼を受けたのは中学3年の頃(遅いか?)、大学生の兄に連れられ、岩手県盛岡市の映画館で見た「明日に向かって撃て!」だ。レッドフォード、ニューマン主演、ジョージ・ロイ・ヒル監督のこの映画は、それまでの西部劇と違い西部時代の終わりを描いている。馬車の代わりに鉄道や車の時代になり、世の中は大きく変わろうとしている。そんな中で変わっていくことのできない(しない?)二人の無法者を愛おしく、温かい目で描いている。ボリビアの田舎町で、夢や希望を語りながら死んでいく、ラストの二人に共感し涙した。もっと早いスピードで変わっていく今の世の中、人は余裕を失い、落ちこぼれないようついていくのが大変だ。「明日に向かって撃て!」は現在でも通用するテーマを含んでいるように思う。最初の本格的映画が、中学生の自分に大きな影響を及ぼしたことは想像に難くない。何気なく誘ったのだろうが、兄には感謝している。

それからは、アメリカの閉塞感から生まれたという「アメリカン・ニューシネマ」にはまった。デニス・ホッパー主演・監督の「イージー・ライダー」から始まったという「アメリカン・ニューシネマ」は、封切りには間に合わなかったが、十代後半から二十代前半に流行っていた名画座(懐かしい!)にせっせと通い、ピーター・フォンダや若き日のジャック・ニコルソンを目撃することになる。そして「俺達に明日はない」、監督アーサー・ペン、主演ウォーレン・ビューティ、フェイ・ダナウェイ、「真夜中のカウボーイ」、監督ジョン・シュレシンジャ―、主演ダスティン・ホフマン、ジョン・ボイト、「スケアクロウ」、監督ジェリー・シャッツバーグ、主演アル・パシーノ、ジーン・ハックマン、といった優れた映画に出会うことになる。

正月過ぎにBSで放映していた「スティング」は封切りすぐに映画館で見た。「明日に向かって撃て!」の監督・主演コンビが再びタッグを組んだ映画だ。仲間を殺されたケチな詐欺師のレッドフォードがニューマンと組んで、憎きマフィアの大物ボスを見事に騙し大金をせしめるという話だ。面白く良い映画であったものの、「明日に向かって撃て!」を越えるインパクトは感じなかった。ただマービン・ハムリッシュの音楽は気に入り(「明日に向かって撃て!」のバート・バカラックの音楽も良かった!)、映画館を出てそのままレコード屋さん(これまた懐かしい!)に行き、買った覚えがある。久々に見た「スティング」だったが、当時の私を思い出させてくれた。思い出の中で生きたいとは思わないが、多少振り返るのは悪いことではないだろう。そう思ったら、映画は見たいと思った時に見ておくべきだと思った(やたら思ったが多い!)。振り返れば、父や母とは映画館で映画を見ていないことに気付く。亡くなった父とはもう見ることはできないが、母とはまだ間に合うだろうか・・・?

この原稿をぐずぐず書いている間、すっかり2月になり「2011年度 永沢まこと賞」をいただくことになった。2004年度に続き2回目ですが、私への過大な評価にただただ恐縮するばかりです。それと共に再び描く勇気と励みをいただいたように思います。絵を描くことに疑問を感じることもありますが、「がんばって描きつづけなさい!応援していますよ!」と背中を押していただいたような気がします。こりゃ、のんびり映画に浸っている場合じゃないぞ、外に出てスケッチしなきゃ(笑)!芥川賞の田中某さんのように「貰ってやるよ!」などとは酔ったとしても決して言いません。ありがたく頂戴したいと思います。



 「初冬の代々木公園(線描)」 

ワットマンF8+リブ、筆サイン極細

年賀状「初冬の代々木公園」

どこかに今年の干支、辰がかくれていますよー