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4月29日(日) その2 ガツンとローストポーク

地下鉄の乗車券は、改札の近くの自動販売機で購入。購入したい切符のボタンを押すと、ディスプレイに金額が表示され、その金額を投入すればよい仕組み。今回は、ホテルの近くの駅 Florenc から二駅先の Můstek まで移動すればよく、14コルナの切符を買う。

改札は、切符を正しい方向に機械のスリットに挿入すると、ジジッと現在の時刻が印字される仕組み。誰が監視しているわけでもなく、無人である。

さて、地下鉄のプラットフォームは、更に地下奥深くにある。プラットフォームにたどり着くまでに下りエスカレータを使うのだるが、これの速いこと速いこと! 日本の標準的なエスカレータのはやさの1.5倍以上はあるのではなかろうか。この速さでは、体の弱いお年寄りなどは下手をすれば転倒してしまいそうだ。

Můstek に到着。当然ながら、上りエスカレータも速い。河の方向に行くつもりだったのだが、方向感覚の鈍い我々二人のこと、反対の方角に歩いてしまう。道の中央に花壇があるので、ここがヴァーツラフ広場 Václavské nám. であることを知る。ガイドブックにも書いてあったが、広場というよりもむしろ大通りだ。その先にあるのが、国立博物館 Národní muzeum 。その前にある像は、聖ヴァーツラフの騎馬像。聖ヴァーツラフはボヘミアの最初の王といわれている人。十世紀前半の人らしい。博物館には入らずに来た道を折り返し、旧市街広場 Staroměstsk nám. を目指す。

途中、とある街角にあった噴水のある小広場で休憩。ベンチに腰をかける。小広場では、絵画を売るスタンドが幾つかあって、「芸術の街」的な雰囲気を高めている。念のため、旧市街広場の方向を、その中の一人に教えてもらい、その方向へ。

少し歩いたところで、自分がさっきまで持っていたガイドブックを持っていないことに気付く。先ほどの小広場に忘れてきたらしい。Rの怒りを少し買いながらも、先ほどの小広場に引き返す。幸い、絵画を売っていた一人が、見慣れない文字で書かれた本を見つけ、私がその本を置き忘れていったことに気付き、預かっていてくれた。我々がその小広場に戻るや、我々を見つけ、そのガイドブックを手渡される。土地に着いたばかりで疲れていたりして、注意が散漫になっていたようだ。ガイドブックを取り戻せたことにほっとする。ガイドブックを初日に失くすわけにはいかない。ただ、少々の信頼は失ってしまったが。

気を落ち着かせるため、近くの喫茶店でもう一度休憩。

その喫茶店を出て、旧市街広場の方角へ。日曜日だからかもしれないが、この通りは蚤の市兼青果市場のようになっている。観光客向けの土産物としては、数々の人形がかわいらしい。プラハ田村という日本食レストランもある。

ボヘミアングラスと呼ばれるガラス工芸は、チェコの名産の一つ。ボヘミアングラスは、硬度の高いガラスから作られ、爪やすりなども作られるらしい。ガラス工芸はもともとヴェネチア辺りで盛んだったが、その後ハプスブルグ家の後押しがあって、ここボヘミア地方でも独特なガラス工芸が作られるようになったとのこと。旧市街には、観光客向けのショップがいくつも点在している。ショップに入ると、店内の照明も手伝ってか、眩いばかりにキラキラと輝く工芸品が客を魅了している。

旧市街広場に到着。この辺りは、プラハ歴史地区として世界遺産に登録されている。この広場でまず目に付くのは、旧市庁舎 Staroměstská radnice の塔。目に付く理由は、その塔の下部に金色の天文時計が組み込まれているからである。また、二本の塔を持つティーン教会 Matka Bož í před Týnem も、そのゴシック様式が目を引く。広場のすこし奥まったところから、広場を見下ろすような構えである。また、ここにはヤン・フス像 Pomník Jana Husa という像があるのだが、残念ながらシートで囲まれていて、像そのものを見ることはできなかった。

天文時計は、十五世紀に作られたものだそうで、ふたつの円が縦に並ぶように設置されている。十五世紀という昔に作られたものにしては、金色の文字盤は真新しく見える。この時計が何の動力を用いて動いているかは興味深いところ。それはともかく、重要なのは、この時計が当時信じられていた天動説に基づき天体の動きを示していることにある。因みにコペルニクスが登場したのは十六世紀。

天文時計は、上の時計がプラネタリウム、下の時計がカレンダリウムと呼ばれている。プラネタリウムは、通常の長針・短針に加え、文字盤の円の中で、自身が回転しながら文字盤の中を回転する、一回り小さな文字盤がある。これが地球を中心に回っている太陽や月、その他の天体を表わしているのだそう。カレンダリウムは、一日に一目盛り進む時計で、これが十二の星座と、農作業に必要な四季の移り変わりを知ることができるのだそう。

一方、ティーン教会は1135年に創建、現在のは1365年に改築されたものだそう。塔の高さは80メートル。

ユダヤ人地区を通って《芸術家の家》 Rudolfinum へ。これが「プラハの春」音楽祭の会場となっているところか。世界的な音楽祭のわりには、意外と小さく見える。今夜は地元のアマチュアオケがモーツァルトのレクイエムをやるらしく、ビラを配っていた。建物の正面にはドヴォルザークの像が立っている。そういえばここの大ホールはドヴォルザークホールというのだった。

《芸術家の家》の近くには画家?Josef Manes の像があり、Vltava 川が流れている。この川は日本風にいうとモルダウ川。スメタナの連作交響詩《我が祖国》の一編として知られていて、歌詞まで付けられている。しかし、何故かドイツ語なのだろうか?この川はチェコからドイツに向かって流れているので、ドイツだとモルダウ川という名称に変わるのだろうが、ドイツの支配下にあった歴史的経緯のためだろうか?それとも日本とドイツが同盟国であったから?でも英語では The Moldau だなあ。いっそのこと、チェコに敬愛して「ヴルタヴァ川」と呼んであげればいいのに。

モルダウ川沿いの遊歩道を歩く。人々がベンチに腰掛けて思いのままに寛いでいる。川に沿って植えられた木々の緑が美しく、気持ちが良い。カレル橋 Karlův most の橋塔まで歩く。

橋塔の付近はちょっとした広場になっていて、それに面した古めかしい建物がクレメンティヌム Klementinum と呼ばれる建物。元々は十六世紀に建てられた修道院だったらしい。コンサートホールか何かかと思ったが、そうではなく、現在は図書館として使用されているとのこと。

時刻は既に午後六時半を過ぎている。空はまだ青いが、太陽はだいぶ傾いている。それだけ陽射しが強いということだろうか。夕刻は良い写真をとるのがなかなか難しい。

カレル橋を渡る。プラハ市内でモルダウ川に架かる橋は幾つかあるが、その中で最古のものがこのカレル橋。石橋である。1357年に着工し60年の歳月を掛けて完成された橋で、歩行者専用の橋になっているように見える。全長570メメートル、幅10メートル。両側の欄干には合計三十体の聖人像が立っている。これらの聖人像は、十七〜十九世紀に加えられたものであるとのこと。

北側の欄干にある彫像を、順に撮っていく。

途中、バンドがご当地の音楽らしきものを演奏している。クラリネットが入っているのでクレズマーらしい雰囲気なのだが、1920年代のジャズと書いてある。CDも売っている。買わなかったけど。興味深かったのは、ヴァイオリンにホーンが付いたような楽器。調べてみると、Stroh-violin という楽器らしい。こんなのが1920年代のジャズで使われていたのだろうか?まあ、1920年代のジャズ(しかもヨーロッパ)といってもピンとこないし、音楽自体ジャズっぽくない。

橋を渡りきったところで午後七時半くらいになる。辺りはまだ充分に明るいのだが、サマータイムのせいで時間が一時間早まっているからだろう。腹が減ってきたことだし、この辺で引き返すことにする。

夕飯を食べたのは、U Rudolfina という店。地元の人たちだろうか、半分くらいのテーブルが埋まっている。まずスライスしたライ麦パン(だと思う)が運ばれてくる。名物の豚の膝のローストとビールをオーダー。クネドリーキ(蒸しパンのような団子のようなもの)とザウアークラウト(乳酸発酵させたキャベツ)が付け合せとして運ばれてくる。

しばらくしてローストポークが運ばれてきたのだが、まさに、骨付き肉の塊。二人で食べるには充分すぎる分量。食いきれるだろうか?同じ皿には、マヨネーズベースのソースと、実際に口にしてわかったのだが、何と西洋わさび。日本の山葵ほど辛さはきつくなく、やや甘さも感じるが、鼻に通るこの感じは紛れもなくワサビだった。ビートルートの付け合せもある。生のビートルートは土臭くてあまり好きではないのだが、これはちゃんとマリネしてあるので大丈夫。

結局、二人で一皿を平らげてしまう。食べすぎか? クネドリーキは肉汁に浸して食べたので、この一食でプリン体を摂り過ぎてしまったかも知れない。

お勘定をすませ、メトロでホテルまで戻る。

我々の荷物が届いているか確認するが、まだ届いていないようだ。もし届けられたら連絡を貰うようにして、一旦部屋に戻る。これで荷物が届かなかったらどうしよう―と案じていたのも束の間、しばらくしてフロントから電話。我々の荷物が届いたとのこと。

無事に荷物を受取り、これで我々の日本出国が遅れたことによる影響をすべてリカバーできたことになる。ほっ。

シャワーを浴びて、就寝。

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