”演奏の中身が分からない市民”
「首都圏の音楽関係者」の意見には、「本来であれば、自治体が(経費の)全てを負担してもいいのではないか。市が誘致した場合は、さらに支援を拡大することが求められる」、「せっかく育った芽を摘み取るのは、それこそ税金の無駄遣いにつながる」などと述べる。
「富山県内音楽関係者」の意見には、「市民が良質な音楽に触れる機会が多くなった」、「桐朋の存在が音楽を志す人の目標になっている」、「行政は桐朋のメリットを生かしきれていない」、「演奏の中身の価値を評価できる市民が少ない」などなど。
年に数回、オーバード・ホールで、定期演奏会を開くアカデミー・オーケスラの学生は、「まだアマチュア」(富山キャンパスの話)のうえ、メンバーもよく変わる。早くからキャンパスの誘致にかかわり、定期演奏会にも足しげく通う、古参の市議は「ひいき目に見ても、演奏レベルは決して高くない」という。回答にある“良質な音楽”と言えるのかどうか。
桐朋学園の招致には、「他の県内芸術団体・機関と連携して富山をオペラの街に」といった崇高な理念があり、「舞台芸術学部」の創設案まであった。しかし、学園内部では富山進出に懐疑的な意見もあり、小澤征爾さんらも反対したといわれる。
また、音楽に触れる機会が多くなっているのは、なにもアカデミーオーケストラだけのせいだけではないだろう。ヒアリングを受けたどれたけの人が、例えば、「理念」やアカデミーの演奏会の客の入りがどれほどのものか知っているのだろうか。(「定期演奏会」については、「低迷続ける桐朋オケ公演」を参照して下さい)
「費用対効果が低い」
郵送によるアンケートの対象者選びも、アンフェアにみえる。電話帳などからの抽出ではなく、関係機関の推薦・意見をもとに、呉羽周辺の一般の人たちや音楽に携わっている「一般の人」200名をはじめ、「富山市内の中・高の校長および音楽担当教諭」94名、それに「地域の芸術文化関係者」44名。
回答は、答えをあらかじめ列記した「選択形式」だが、にもかかわらず、平均回答率が30%。「富山市内の音楽担当教諭」は17%で、この低い回答率は調査としては致命的だ。
アンケートの設問は以下のようなものである。
@富山キャンパスがあることを知っているか
Aオーケストラ・アカデミー友の会を知っているか
B高校生以下の入場料が無料なのを知っているか
C桐朋学園の活動を見たことがあるか
D富山キャンパスは、音楽を学ぶ環境としてどこが優れていると思うか
E富山キャンパスの活動が富山市に与える効果は何か
F入場料の設定について(全席自由 無料ー3000円)
G演奏会の内容に何を期待するか
H富山キャンパスに補助金を交付する理由はどこにあるか
Iその他=キャンパスへの期待や支援のあり方
回答は、キャンパスに対して好意的なものも多く多岐に渡るが、「市に与える効果」では、6択のうち「芸術文化団体に刺激を与えている」が40人(総数125、複数回答可)。
「補助金を交付する理由」では、最も多い36名(総数129)が「定期演奏会や出前演奏などで、市民に音楽に触れる機会を提供したから」と答えている。「補助金を交付する理由はない」は21名。「その他」で「費用対効果が低い」とした意見もあった。
「期待や支援」では、「税金をひとつの民間に投じているのは異常。市出身者のために使ってほしい」、「市民のための効果というが、それが分からない」「キャンパスは地域に溶け合うこともなく、存在感が伝わらない」といった意見もあった。
バラ色の「総論」
ヒアリングやアンケートをもとに、「元請け」の出版社がまとめた報告書は「総論」を以下のようにまとめている。
「キャンパスの存在は広く知られ、定期演奏会への参加者も多数。市民が良質な音楽を聴く機会が増え、芸術文化団体にもいい影響を与えているといえる。本学園の生徒が音楽家として大成することを願う市民や学園を誇りに思う市民も少なくない。補助金については大半の市民は肯定的に考えている」(要約)
「報告書」は、3月定例議会の総務委員会で、1委員が内容に同調しかねる旨の意見を述べた後、了承された。
富山キャンパスに対する補助金は、結局、21年度から年間3千万円減らされ、2億円に決まった。この報告書、中でも「総論」がどの程度、調査を委託した富山市に示唆を与えたかは分からない。
市議会には、報告書に対する反発も確かにあるが、そう多くはないようだ。特に古参の保守系の議員は、率先してキャンパスの誘致にかかわっており、「誘致しておいて、今さら我れ知らぬとは言えない」との気持ちが強いといわれる。
補助金についても、「文化については、費用対効果の論議を持ち出すべきではない。市内の他の私立大に補助金がないではないか、という指摘も論外」という意見もある。
「ノー・マイカー・ディー」には市の幹部や一部の市議も実践に加わるという。それにならって、この人たちも、例えばアカデミーの演奏会に出掛けたり、大学院大学の勉強ぶりを見、その上で「本物の文化」を語ったらどうだろうか。
(08年5月)

「市民感情と、あまりにもかけ離れた好評価ではないか」、「高額な補助金に無関心過ぎる」ー。
富山市が民間業者に委託した「桐朋学園富山キャンパスの誘致効果に関する調査」に対する「報告書」に、市民らから、こんな声が上がっている。
富山市は、富山キャンパスにこの10年間、毎年2億3千万円も出してきた補助金について、「10年目で見直す」という両者の「約束」に基づいて減額を協議してきた。
市は議会で「キャンパスの存在感が薄い。補助金を削るべき」と指摘されるごとに、「それなりの活動はしており、市民にも浸透している」と答えてきた。
しかし、補助金が破格で、市内の他の私立大にはそれが皆無であること、アカデミー・オーケスラによる演奏会の鑑賞客が少なく、このことと関連して、他の音楽団体からは「補助は我々にも」との声が少なくない。また、キャンパスの大黒柱である大学院大学の定員が少ない(1学年10-12人。10年間の累計入学者は97名)こと、さらには、市民とのかかわりが、市が言っているほどではないことなどから、評判は芳しくない。
そのため、調査は、この減額の協議の一助にするとともに、富山キャンパスが市民や関係者の間でどう評価されているかを探る目的も含まれた。
調査対象者の選び方はアンフェア?
この種の調査は、市では初めてといい、委託料は94万円。報告書は33nの小冊子。調査は富山市内の出版社に委託されたが、「ヒアリング」(対象14名)と「郵送によるアンケート」(同338名)の2つの調査方法のうち、「郵送にるもの」は同出版社が担当、「ヒアリング」のうち東京の対象者は、東京のプロのライター集団に、富山の対象者は富山市内の調査グループに再委託された。調査期間は19年9月1日から11月28日までの3カ月間。
ヒアリングを受けた人は、富山キャンパス関係者4人のほか、「クラシック音楽に造詣の深い音楽関係者」で首都圏で活躍する人、同じく富山県内で活躍する人が各5名。
ヒアリング対象者は、富山キャンパス関係者や首都圏、富山県内の音楽関係者の意見をもとにライターたちが選び、富山市役所が提供したキャンパスのパンフや活動実績、補助金額、入学者数の実績などの資料を見せて、意見を聞いて集約したという。
このような調査では、対象者の選び方がかなり非科学的で、これでは、ヒアリングの意見の中身は容易に予測できる