(この写真と原稿は関係ありません)


開演。ステージ上のピアニストが、最初の曲を弾き始めて数分後。「キーン」。いままで聞いたことのないような音が、客席の上を走った。およそ10秒。“長い”音に、ピアニストは演奏を中断し、スタッフのいる舞台袖を見た後、音が止むのを待って演奏を再開した。
音の正体は正確には確認はされていないが、客が装着していた補聴器との見方が強い。「携帯」に次いで現れた、新たな“ホールの敵”なのかも。
この日も、開演前にいつものアナウンスが流れた。「携帯電話をお持ちの方は、電源をお切り下さい」―。最近、、このアナウンスのせいか、富山県内のホールでは、クラシック・コンサートやリサイタルが、携帯の着信音で妨害されたというケースは聞かない。
もっとも、オーバード・ホールやヘリオス(南砺市)のように、オペラやクラシックの演奏会では、携帯の電波の「遮断装置」を働かせ、着信・送信が出来ないようにしているため、「事故」が起きていないのかも知れない。
オーバード・ホールに、この装置が取り付けられたのは、数年前の“忌まわしい着信音”のせいである。外国人による有名なオペラのクライマックスシーンで、それが数度、鳴り響いた。「おお、神よ」である。客席には、富山市の幹部がいた。装置が設けられたのは、それからまもなくのことだ。
心乱された?ピアニスト
「キーン音」に演奏を邪魔されたのは、日本でも屈指の女流ピアニストだった。異音は連続音で、10秒とも30秒とも言われるが、「早く止んでほしい」と祈る関係者には、かなり長く聞こえたらしい。
青ざめた顔のスタッフたちをよそに、彼女は音の止んだ後、1曲目の続きから弾き始めた。この曲を弾き終わった後、舞台袖でスタッフから説明を受けたが、スタッフは「原因は補聴器らしい」としか言えなかったという。
以降、彼女は数多くのプログラムをこなしたが、やはり心は穏やかでなかったらしい。多くの客に「時に、荒い弾き方」に映った。彼女が、このような音を聞いたのが初めてかどうかはともかく、携帯の呼び出し音と同様、“最悪のマナー”と受け止めたのかも知れない。
後半、ピアニストは本来の演奏スタイルを取り戻したらしく、観客の拍手も一段と高まった。普通は2曲ほどのアンコール曲が5曲も披露された。ブラボーの声も上がった。
終了後、関係者から、異音についての説明やお詫びのアナウンスは聞かれなかった。