
「事件」は、07年10月27日、富山オーバード・ホールで起こった。シェークスピアの戯曲をもとにした、蜷川幸雄演出の演劇「オセロー」のクライマックス。主人公のオセローが“死んだ”、まさにその時、客席の前の方で、携帯電話の呼び出し音が鳴った。リーンという、ありふれた音が数回。
この音は、役者にはむろん、ステージの袖にいた人たちにもはっきり聞こえた。「何ということ…」「あれほど、電源を切って下さい、とのアナウンスを繰り返したのに」。ホールのスタッフたちは、そんな言葉をかみ殺し、悔しがった。
催し物が行われている最中の、携帯の呼び出し音は、富山県内のどこのホールでも、たびたび聞かれる。ダメージが大きいのは演劇、コンサートだ。呼び出し音には、甲高い着メロがあり、それが自分のものだとは気付かず、いつまでも続くこともある。
繰り返されるアナウンス
どこのホールも、イベントの始まる前に必ず「携帯電話の電源を切るか、マナーモードにして下さい」とアナウンスをしている。マナーモードでもいいというわけではない。電話やメールを受信した場合に画面を開く人が多く、その際の画面の光が周囲の人には目障りだ。だから、ホールには「電源を切って下さい」とだけ、アナウンスしているところもある。
携帯の電波が外からも入らず、中からも発信出来ない装置はないのか。実は、そのバリアーともいえる「携帯電波制御装置」が数年前に開発され、ほぼ実用化されている。しかし、かなり高額なことや、新しい携帯が出回るたびに、周波数調整などの問題が生じ、導入をためらうところが多い。
オーバードホールは、あの「不愉快な事件」もあって、電波制御装置の導入を決め、2月から運用を始める。スイッチ一つで携帯電波の侵入・発信、つまり電話もメールもシャットアウトされる。経費がかかることからレンタル方式にし、5年契約で315万円。
実は、ほぼ同じ装置を、南砺市のヘリオスが、既に2年前から運用している。こちらは買取りで、結構、維持費用がかかっているようだ。東京では、オペラシティーやNHKホールなども導入している。
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