ありあわせの布で作った一般の主婦の作品(今回のキルト展とは関係のない作品です)
トップキルターの説明を聞き逃すまいと、身を乗り出す鑑賞者=福光美術館提供
1カ月ちょっとで鑑賞者が7千人。単なる美術展ではない。世界の片隅で生まれ長い歴史を誇る「キルト」。福光美術館が、その展覧会を開いたら、こんなにも多くの人が集まった。
2m四方もの、布の“キャンバス”に、時にありあわせの、しかも色とりどり、さまざまな形の布を縫いつけていく“布と針と糸の芸術”。
作品は、キルトフェテイバルとして大きな展覧会となり、新潟、長野、熊本など全国各地でそれぞれ定期的に開かれている。その熱気は東京ドームの国際フェスタをしのぐとも。
福光美術館は、金沢市寄りの山あいにあり、「棟方志功」の絵や書で知られた公立美術館。「キルト展を開いたら…」という話が持ち上がった時、スタッフの多くは、どちらかと言えば半信半疑。「目標は4,000人」でまとまった。
キルトとは、表地と裏地の間に薄い綿を入れ、重ねた状態で指し縫い(キルティング)したもの。日本では、多色の布を縫い合わせたパッチワークキルトが主流。
ヨーロッパの寒冷地で発祥し、保温のために布地に綿をはさんだのが始まりとか、欧米では女性はお嫁にいくまでに13枚のキルトをつくるとか、さらには、親子代々に引き継がれ、ボロボロになったキルトは最後は燃やして土に返すーといった言い伝えがある。
キルト展は東京ドームでの国際フェスティバルが有名で、今年で11回目になるが、この人気に触発されてか、地方でもあちこちで開かれるようになった。
今年が6回目という北海道のフェスタには3日間で1万人が集まった。同じ6回目の長野県では3日間で8,000人。新潟県では今年初めてのフェスタを、この6月に開く。熊本でも開かれている。いずれも地元テレビ局の主催だ。入場料は1,000円前後。
どこの会場でも、業者がブースを作って布などの材料を販売するが、どこもすごい人だかりで、キルト人気をほうふつとさせるという。
(11年6月)
2m四方もの大きさ、色遣い、手の込んだ仕上がりにため息が…=福光美術館提供
新緑の季節には少し早い4月9日オープン。まもなくして客足が伸び始めた。ポスターも張ったが、ほとんどがクチコミで、評判が評判を呼んだらしい。リピーターも目立った。
70代、80代の女性が中心だが、若い女性も多い。多くは、以前から針と糸に親しんだ世代のようだが、何となく誘われてきた人もいた。
その人たちが、目を輝かせて見入ったのは、6人の「日本のトップキルター」と呼ばれる人たちの、手わざと思えない作品。ほかに富山、石川のプロの作品も並んでいた。計50点。
華やかな作品展に加えて、ちょっとした“仕掛け”があった。「キュートな小物入れ」を、みんなで作るワークショップ、講演、ギャラリー・トーク…。
キルト展が、富山県内の公立美術館で企画展として開かれたのは、たぶん初めてで、結局、鑑賞者は5月22日までに7,256人に上った。トップキルターの中には「キルトがアートとして扱ってもらえたのがうれしい」という声もあった。