普及進まぬノンステップ・バス
バス停で高齢者が「よっこらしょ」と言って、乗り込む姿は日常的だ。富山市内を走るバスや市電は、ステップが2段で、歩道からは3段になる。昨年から走り始めたライトレールは、最新型だけあってホームと床がフラットで、高齢者には極めて評判がよい。
ノンステップバス(ノーステップバス=低床バス)は、停留所では、サスペンションを操作して車高を下げ、地上高35センチ以下にする。全国のバス会社、自治体は、この種のバスの導入を進めているが、導入率は全国平均でわずか15%。富山県では加越能バスが90台のうち23台で25.6%とやや高めだが、富山地鉄は172台中22台で12.8%だ。
ちなみに、東京都の導入率は43.3%で、全国トップクラス。お隣の石川県の北鉄バスは、台数は少ないが125台のうちノンステップは63台(50%)である。
割引料金制度はまずまず
高齢者を割引料金でもてなすところが、全国的に増えている。
富山市は地鉄バスを利用する65歳以上の人に、年間500円で「お出掛け定期券」を買ってもらい、郊外から市街地まで利用した場合、100円に割引している。
ライトレールも、07年4月から65歳以上を対象に、「シルバーパスカ」と名付けた磁気式カードを2,000円で買ってもらい、一回乗車ごとに100円ずつ(普通運賃は1回200円)減らしていく。残り金額が少なくなると、金を払って内部の金額を増やす(チャージという)。地鉄の市電にこのような制度はない。
ちなみに、金沢市では、北鉄バスが独自に、65歳以上の人が1カ月分7千円の「シルバー定期」を買うと、路線、区間に関係なくフリーで乗れる制度をかなり前から実施している。富山市のように降車時に現金(100円)で払うという面倒くささはない。
東京都では、70歳以上を対象に都電、都バス、地下鉄について「シルバーパス」を発行。住民税の課税者は、これを20,150円で、非課税の人は1、000円で購入すると、1年間、乗車区間に関係なく無料で乗れる。
飛行機は、全日空が「シニア割引」として、65歳以上を対象に25%引き。ただ、いつでもOKとはいかなくて、乗りたい便の一般客の多い少ないによって席数が限定されるので、予約が必要、と全日空富山営業所は言っている。この席が初めからない便もある。JRには、「ジパング」などの会員制システムがあって、年会費を納めると、最高3割引になるものがある。
高齢者を街中に出そう
映画を見たり美術館などを訪れる高齢者が最近、増えている。カルチャーブームなどがのせいもあるかもしれないが、ここでも割引制が利いているようだ。富山県内の映画館は、大半が通常1,700円のところを60歳以上は1,000円にしている。
美術館は、富山市がミュージアム・バスを1時間ごとに運行して、足を確保しているが、入場料は県立近代美術館も水墨美術館も割引はしていない(企画展は一般的に大人の入場料は1,000-1,200円)。金沢21世紀美術館、石川県立美術館は、企画展、常設展ともに65歳以上は2割引だ。
「高齢者はお金持ちでヒマ。そんなに支援する必要があるのか」という声が若い世代に多い。
確かに金持ちの人もいるかもしれない。そして、金持ちの高齢者もそうでない高齢者も概して倹約的だ。ケチといってもいい。映画は1,000円なら見るが、1,700円だと尻込みする。ライトレールが100円から200円に上がっただけで、「近くだから歩くか」と考える。高齢者の多くは、自分もやがてそうなるかもしれない「寝たっきり」を含めた、高額の医療費などにおびえ、せっせとその備えをしている。そう考えられないだろうか。
むろん、自治体や企業が、これまでみてきたように高齢者を多少優遇するのは、一方で「寝たっきりにしない」ためでもある。高齢者が生き生きとして街中を闊歩し、その結果として医療費が減れば言うことはない。それにしては、街はまだまだ高齢者に優しくない。
(07年2月)
少ない街中トイレ
いまは亡き精密機械会社の社長(富山市)が、ニューヨークやサンパウロに旅行し、バスに乗り込む際、決まってこう尋ねた。「このバスにトイレはあるかい」。運転手がうなづくと、社長は安堵して席に座った。
「富山市内には公共トイレが少なくて。時折、ホテルを利用させてもらっているんだ」-。これも社長の口癖だった。富山市に、「もっと公共トイレを造りなさい」と言ったこともあった。おしっこが近いのは、加齢に加えて、前立腺を患っているせいらしかった。
街中を歩いていてトイレのないのに困るのは、なにも高齢者だけではない。住宅の塀や電柱の陰で、あるいは側溝に立ち小便をしている人は意外に多いのである。
旧富山市内には、104カ所にトイレがあるが、ほとんどは都市公園内で、普通の道路沿いにあるのは旧富山市内の9カ所、旧八尾町の6カ所だけである。県には「快適トイレ推進プラン」というのがあるが、既存のものをどう維持していくか、といったことが中心。最近、NPOが開いたシンポでは「集客のためにも街中にトイレをつくるべき」との意見が出されたという。
バス・電車内のトイレはどうか。JRは、大糸線などごく一部を除いて全ての普通列車にトイレを設置しているが、富山地鉄の電車にはない。富山-宇奈月は1時間半もかかるだけに高齢者に限らずトイレの近い人には辛い。東京行きなど遠距離の高速バスは大半が設置しており、走行中でも使えるという。
歩く高齢者は疲れやすく、休息場所が必要だ。ベンチは公園や富山北口などの大通りにはあるが、それ以外にもほしい。