新幹線運賃は11,000円
対して空路は、都心までの所要時間はほぼ同じだが、「乗り換え」や搭乗手続き(15分)のわずらわしさがある。富山からの1日全便(12便)の全日空の輸送人員は、すべて満席として約四千人、新幹線(長野新幹線の54便、8両編成で計算)は約3万4千人で8分の1だ。運賃は新幹線が推計で1万1千円、空路は富山、小松とも東京間が1万9千8百円(5月)だ。新幹線の開通時には、航空運賃は下がる可能性もある。しかし、一般客・ビジネス客の双方にとって、これだけの比較では「新幹線有利」に映る。
東京便の17年度利用実績は、富山は106万人、小松は193万5千人(22便)だ。小松がはるかに多いのは、富山県西部や福井からの利用客が多いのと、全国に通用する観光地のせいだ。他に開港3年目の能登空港の利用客が15万人(16年7月から1年間)ある。
北陸新幹線が乗り入れた場合の東京便への影響について、富山県はまだ正確な見通しを持っていない。「みらい富山戦略会議」などでは「富山便は大きな影響を受けるのではないか」「まるっきりなくなることはないのでは」といった意見が出ているという。県の関係部局でも「出来るだけ早く考えておかなければならないが、どうするかとなると…」と歯切れが悪い。
石川県では、新幹線乗り入れの前から東京便の減便が行われる可能性もある、という見方も出ている。このため、「研究会」を発足させた。しかし、小松は航空自衛隊と共用のため、空港の規模が大きく、今後も、路線の拡大に力を入れている。現在、ルクセンブルグまでの国際貨物便が週に4便飛んでおり、貨物輸送を強化するため、滑走路の嵩上げ工事をしている。
富山、小松とも国際線から東京便に乗り継ぐ客が最近多く、減便、全廃はここにも大きく影響する。しかし、どちらも今、国際線の路線拡大に懸命だ。現在、富山はソウル(17年度3万9百人)、上海(9千7百人)、ウラジオストク(4千百人)、大連(2万8千8百人)、それに台湾を中心にしたチャーター便の5万3千9百人。計12万7千4百人。小松はソウル(6万1千7百人)、上海(2万6千百人)、チャーター便が、中国などを中心に8千6百人。計9万6千4百人。富山が3万1千人多い。
特に降雪時にパイロツトが着陸に神経を使うといわれる富山空港。そこへの着陸のシミュレーションをしてみた。富山に近づくにつれ飛行機は高度をぐんぐん落とし、富山湾上では高度約1000メートル。海面がすぐ下に見える。南から来た場合、大きくUターンして「メディック」といわれる仮想のポイント(高度1000メートル)に向かう。管制塔から気象情報を受け「行ける」と思ったら、南に向かって着陸態勢に入る。「心地よい着地」のための滑走路と飛行機の角度は約3度で、ひたすらこの角度をキープする。
ハンディ多い富山空港
絶え間なく雪が降っていて視界不良の時は、高度1000メートル以上で旋回して待機(ホールディング)。雪雲の動きをレーダーで監視している管制塔から「あと20分で雪雲が切れる」との情報があれば、着陸態勢に入る準備をする。しかし、雪雲はきままだ。待機時間が長くなると、パイロットは残りの燃料を計算しながら「小松着陸」か羽田へのUターンを考える。
富山空港では、視程(目標物が見える距離)が1400メートルでないと、原則として着陸は不可だ。しかし、降下中に機の前方に突然、低い雲が現れ、滑走路が見えなくなる時もしばしばだ。「Run way insight」(滑走路が見えた)とパイロットが半ば安堵しながら管制官に通報すると、次の「難関」は、前方に横たわる北陸道、さらにはこれに平行する高圧電線と鉄塔だ。この時の高度は約160メートル以上でなければならないが、すぐ目の前が着陸地点だ。この時点のスピードは約200キロメートル。県は、この鉄塔の切り下げを検討したが、30−60億円もかかるとみられ、この工事による欠航率の改善効果も未知数として、着手の機運はない。
最大の大型機はボーイング777-200型で、415人乗り。同機が無理なく停止するまでの距離は約1600メートル。滑走路の全長は2000メートルで、残り400メートルしかない。しかし、いままで、着陸地点を超えて着陸したことはほとんどないという。ちなみに、オーバーランした場合の舗装部分は長さが60メートルだ。滑走路の長さが2700メートルの小松は600メートルもある。
ILSと呼ばれる計器着陸装置には、@滑走路の中心線からの飛行機の左右へのズレA降下の際の進入角度の適正さB着陸地点までの距離ーの3つを電波で測定する機器で構成しているが、このうち2番目の機器(グライドパス)が富山にはない。この装置が設置できないのは、近くに堤防や田んぼなどがある「河川敷空港」のせいだ。
「進入角度」を計る機器が全くないわけではない。着陸が近くなると、機内のスクリーンに滑走路の映像が映し出されるのをご存じだろう。左手下に白か赤いものが点滅して見える「パピ」と呼ばれる「進入角指示灯」だ。4灯あり、左から2個が白、2個が赤なら角度は正常だ。
全国的にも例がない河川敷空港が造られたのは、むろん用地買収に金がかからなかったからである。そのために、小松のようにジャンボ機が飛べない、着陸支援装置も十分でないといったハンディを抱えながらも、富山空港は「それなりに頑張っている」との評価が高い。

日本航空(JAL)の富山−東京便(1日2往復4便)が、赤字を理由に3月末で撤退した。「10年後には全日空もか」。いま、県民の多くがなんとなくそんな感じを抱いている。遅れに遅れていた「北陸新幹線」が乗り入れてきて、競合する心配が強いからだ。こんな危機感は小松空港がある石川県にもある。しかし、まだ先のせいか、どちらも「研究会」を発足させた程度だ。小松は航空自衛隊と共用で、富山より規模が大きく、国際便の路線拡大や国際貨物便の輸送料増大を目指して、整備を進めている。一方の富山は、河川敷という地形が災いして、主要な着陸支援装置の設置がままならず、加えて着陸地点の直前に高速道や高圧線が横切っている。気象が悪いときは、まさにパイロット泣かせで、昨年12月は延べ54便が欠航した。富山空港の整備計画は今後全くないという。
富山、石川両県の「北陸新幹線」ホームページには、「利点」として、@東京−富山の所要時間が2時間7分A雪の影響を受けにくいB1度に多くの人を運び運転本数も多い(長野−東京は27往復で平均35分間隔)などのほかC2酸化炭素の排出量が飛行機の5分の1などとしている。