電気点火装置と打ち上げ筒の配線作業
花火はいずれも     赤倉みつ子撮影
  花火玉は、打ち上げられて初めて「生きた花火」となる。それまでの作業が、とても地道で重労働だ。打ち上げとなると点火の時間差、シンクロ(同調)にフルに神経を使う。それに最近は、花火と音楽のコラボレーションも加わった。むろん、事故防止には細心の注意が必要だ。
  いま、智子は、この音楽に重点を置いている。曲選びは無論、滞空時間が10秒以内という短い花火の場合、演奏時間を合わせるのが難しい。音楽は、ジャズにクラシック、オペラのアリア、時にはフュージョンもある。
  音楽花火がここ2,3年で調子に乗ってきてから、お客さんの喜びようが増したように思っている。それだけに、うまく花火と音楽が同調しなかった時は、すぐ落ち込んでしまう性分でもある。
  花火は、打ち上げてみないと、実際の色や大きさが分からないこともあるという。風も、ちょうどよいくらいでないと、煙の中に打ち込んだりして効果が落ちる。ちなみに、尺玉(10号=約30a)は、約300b上昇して、直径300bの光の輪を描く。

  過酷な準備作業
  前作業は、特に夏の「神通川花火」が厳しい。中州の打ち上げ場所をブルドーザーで整地したり、草刈に汗を流す。これは、もっぱらおやじさんの仕事だ。大小数十本の鋼鉄製の打ち上げ用の筒を地中に刺し、底に打ち上げようの火薬を敷き、その上に花火玉を置く。導火線は火薬と花火玉の両方に結びつける。
  智子は、多くのスタッフを指揮しながら、黙々と作業をする、そんな両親の姿を幼いころから、よく見てきた。会社に入ってからは休みを利用して、現場で手伝った。雨が降ってきて現場が、てんやわんやになったことも目の当たりにした。
  暗い中での作業は、まさに戦場である。以前は、人の手による点火が多かったが、いまは電気点火が増え、その分、手間も危険も減った。しかし、おかげで、辺りは電気点火のためのコンピューターからの配線があちこちに延びている。懐中電灯を頼りに動き回るスタッフたち。おやじさんの声が時折、甲高く響く。
  「喜ぶお客さんの顔が見たい」
  きらびやかさ、お腹に響く音、一瞬。ー花火を見る楽しさはもっとありそうだ。玉の登り具合を見ていて「今度のは小さいな」と思ったら、「大輪」である。それも、輪の中に輪(芯)が3つも4つもある。どれも色が違う。「さあ、次は?」と同じ高さを見つめていると、放射状に先端が走っていく。大きな「星」である。複雑な色。そして、今度は別の場所から何本もの“斜め打ち”である。
  中洲で奮戦する智子やスタッフのところには、時折、風に乗って、観客の歓声が届く。「お客さんの喜ぶ顔がみたい」。いつも智子たちが願っている、その顔顔が、いま、対岸ですずなりのようだ。「いいぞ、その調子」。こんな時、シャイなおやじさんは、そうつぶやいているのかも知れない。
  智子は、今年5月結婚した。相手は実家が横浜の、新進気鋭のギタリスト。コンテストでも何度か上位入賞していて、彼の父や兄弟は数年前からバンドを結成して、全国を回っている。2人は意を決して新居を富山市内の富岩運河近くに構え、ギター教室も開いた。彼は週に3日、横浜との間を行き来し活動に余念がない。
  花火師とギタリストは、いずれも創造性の強い仕事。智子と彼は、結婚という絆を得て、一段とプロ根性に磨きがかかるかもしれない。

                                  (07年10月、敬称略)
                                   
  大橋智子。30歳。都会でOLも経験したかなりの美人である。その彼女が年間、何十回か、それほどカッコよくもないハッピを着て、男勝りの仕事に携わる。全国に十数人しかいない女性花火師に伍して、花火を打ち上げるのだ。いまはまだ、2代目のおやじさんが現役だから、“ヒヨコ”みたいなものだが、「打ち上げ花火業」のすべてを受け継いでおり、3代目のデビューを果たした。 
  富山市生まれで、2人姉妹の妹。大学の商学部で学んだ後、名古屋市内の会社のOLに。都会での会社勤めは楽しく、友達もたくさん出来た。「自分にもやがて、お嫁さんになってハッピーな家庭をつくれる日が来る」。いつも、心の隅にそんな思いがあった。
  しかし、思いはしばしば富山に飛ぶ。単なる望郷ではない。富山には、60歳を過ぎた父母がいる。祖父の代から、「神通川の花火」の打ち上げで知られる「老舗・花火のマツダ」の守り手だ。「自分は、それを継ぐことになるかもしれない」。父母は、心にその願いを秘めながら、しかし、そのことは、あまり口にしなかった。
  
  「打ち上げ師」はコーデネィター 
  「神通川の花火」は、昭和22年、富山空襲の犠牲者の鎮魂として富山市が中心になって始めた。打ち上げ場所は、市電の走る「富山大橋」の約300メートル上流の中州。川幅がそれほど広くないため、「尺玉」より大きな玉が打ち上げられないのが、ちょっとした難点だ。花火ファンには「長岡の花火にはかなわん」などという人もいる。この言葉は、いつも智子の耳に響いた。
   「花火師」の業種は、実は2つに分かれる。花火玉を作る人たちと、それを打ち上げる人たち。むろん、2つを兼ねている業者もいる。智子は「打ち上げ花火師」である。
  「暗黒のキャンバス」の上に、轟音とともに絵模様を描く花火は、最近は特に多種多様だ。花火の中に、いくつもの環『芯=三重(え)芯、四重芯などという』があるもの、「蝶」など、何かを想像させるもの、星型に登っていって、先端が開くものなどなど。形だけでなく、色も、とりどりだ。最近は、中国などからの輸入が目立ち、そのせいもあって、これらの「創造花火」の製作に、業者間のアィデア競争がし烈といわれる。













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  トリビアな話(蓄積中)
   ちょっと得する情報も
 富山県民性 なるほどデータ
      (「データで見る県勢」から)
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とやま豆新聞