最近、家から近い2つのコンビニのシャッ
ターが閉まっている。
 1つは「店内改装のため、しばらくお休み
させていただきます」と貼り紙がしてあった。
 しかし中をのぞいてみると、ちっとも改装
している様子がない。何日たっても工事が始
まる様子がない。ホントに改装か?
 田舎ではすぐにウワサが伝わる。妹の友達
の知り合いの友達で、そのコンビニでバイト
をしてる人の情報によると真相はこうだ。
 その店は、脱サラしてコンビニを始めた店
長とその娘が中心になって切り盛りしている
らしい。その娘のほうは知っている。昼間行
くといつもいて、明るく元気で少し可愛い二
〇代の女性だ。僕はひそかに「看板娘」と呼
んでいる。
 しかしお父さんとはどの人だ?そのぐらい
の年令の男性は一人しか見たことがない。た
まにいるあの無愛想な、客商売なのに接客も
ままならない、さえないおっさん。
 あのふたりが親子とは信じられない。あの
看板娘の父親にふさわしいのはロマンスグレ
ーのナイスミドルなおじさまじゃないのかい?
・・・ともかく、重要なのは店を閉じた原因。
 なんと、その看板娘がケガをして入院した
らしいのだ。いてもたってもいられない父親
はつきっきりで看病するために店を一時お休
みにした、ということらしい。
 ガ〜ン!つきっきりの看病をするというこ
とは大きなケガなんじゃないだろうか。
 これは心配だ。しかしどうすることもでき
ない。とにかく早く良くなることを願う、赤
の他人が一方通行的に心配する日々が続いた。
 それから1ヶ月程して、店が再開した。さ
っそく店に行ってみる。すると「いらっしゃ
いませ」という元気な声。
 レジに看板娘がいた。
 今までと変わらず明るく元気で、今までと
変わらずてきぱきと仕事をしていた。
 見た感じでは、すっかり良くなったみたい
だ。なにはともあれホッとした。すると奥か
らあのさえないおっさんが出てきた。レジで
並んだふたりを見て、思わずうなってしまっ
た。こうして見ると、なるほど間違いなく親
子だ。
 しかし彼女も相変わらずの好印象だが、父
も相変わらずの無愛想だ。でも娘思いの父、
という面を知ってしまった今は少し印象が違
う。無愛想というよりは、いい人なんだけど
自分を表現するのが苦手な人、「自分は不器
用っすから」タイプに映ってしまう。
う〜む、少しほめ過ぎかもしれないが、頼む
から娘への愛情のひとかけら位は客にも分け
ておくれよ。
 「お体の方はもう大丈夫ですか」ってよっ
ぽど声をかけようかと思ったけど、やめた。
いくらなんでも怪しすぎる。
 しかし弁当をチンしてるあいだ、なんとも
いえない暖かいまなざしで彼女を見つめてし
まっていた。そんな僕を、まわりの人が見た
らなんて思うだろう。
 
 もう一つのコンビニは僕が一番利用してい
るコンビニだ。レジの後ろの2台目の電子レ
ンジは僕が買ったと言っても過言ではない。
やはり店長は脱サラ風のおじさんだ。
 貼り紙には「○/○をもちまして閉店させ
ていただきます、永い間御愛顧ありがとうご
ざいました」とある。ホントに閉店だ。
 これまたびっくりした。
(オ、オレのせいか?・・・)
 実を言うと1ヶ月位前、少し離れてはいる
が同じ国道沿いにライバルチェーンの「A」
というコンビニができた。
 家からはどちらも同じ位の距離なのだが、
駅からの帰りに寄るとなると「A」の方が寄
りやすい。そして新オープンというのも手伝
ってしばらくは「A」に通ってしまった。
 しかしこれは僕にとって浮気でしかない。
「A」に通うのは最初だけ。いずれは元に戻
る、はず。体は離れてても心はいつも一緒さ。
そうしてひさしぶりに戻ってきた矢先の閉店
だった。
 (すいませんです・・・)
 僕は閉じられたシャッターの前でぼう然と
立ちすくんでいた。まるで妻に逃げられたダ
メ亭主。そんな僕を見て、まわりの人は何て
思っただろう。

              
              2000,6,14
 




演歌のいばら道

ケータイ禁止

動かない人

定食アイロニー

ある男の情熱

どこかにサムライ

あいまい文具店

花屋と図書館

シンクロ深海魚

交点の可能性

三男坊は月へ行く

月が落ちてくる

地球代表

みんな泣いている

サイキックエンタテイナ

メランコリック午後2時



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