![]() お昼を食べにラーメン屋に入った。ラーメ ン屋と言っても外に掲げてあるメニューには マーボー定食とか野菜炒め定食とか、定食物 が種類豊富に書かれてある。そこがポイント でその店にしたのだけども。 入る前に気持ちはほぼ決まっていたので、 それに従いチンジャオロース定食にした。 ほどよく時間が過ぎたころに運ばれてきた 品を見て、少し驚いた。ご飯とチンジャオロ ース、ポテトサラダ、豆腐のみそ汁にお漬け 物、そして納豆がひとパック。 なんという盛りだくさん。メインのチンジ ャオロースの量も申し分ない。そして定食に は珍しい、しかし納豆好きの私にはたまらな い一回食べきり用納豆パック。 と、喜べたのは最初だけで、すぐに大問題 の前に立たされたことに気づく。 困った。おかずだけならまだしも、それに 納豆が加わってはご飯が足りない。チンジャ オロース、お漬け物、納豆のひとつひとつに 納得いくご飯の量を割り当てることができな い。 その時の食事をおいしくいただくのに、ご 飯とおかずがきっちり対になりえるかという のは重要な要素のひとつ。常におかずはご飯 といっしょに口にはいる。ご飯とおかず、ご 飯とおかずと繰り返し食べいき、最後のひと 口までごはん&おかずでいきたい。終盤でど ちらかがなくなるというのは極力避けたいの で、おかずとご飯の量を常に計算しながら食 事を進める。 ちなみに万が一計算がはずれた場合、ご飯 がなくなっておかずだけを食べるより、おか ずがなくなってご飯だけを食べるほうがいい。 もっと言うなら、カレーライスでご飯が残る ことは許せてもカレ−が残ることは許せない。 私はそういう人間なのだ。 それにしても厄介なのは納豆だ。納豆単独 をじゅうぶんに味わうためには、まるまる茶 わん一杯ぶんのご飯が必要。ふだんなら喜ん で食べる納豆にこんな形で苦しめられるとは。 町の定食屋ではめったに出会わないだけに攻 め方がわからない。 そしてくれぐれも言っておくと、居並ぶ皿 たちの端っこで、自分の存在感に疑問を持ち ながらたたずんでいるような“お漬け物”も 残しはしない。ご飯といっしょにおいしくい ただく。つまり全て残さず食べたいのだ。 さぁどうする。考えられる方法はふたつ。 ひとつは、どんなに少なくなってもご飯をチ ンジャオロース、お漬け物、納豆にきちっと ふりわける方法。しかしどう見てもひと口に 入るおかずとご飯の割り合いに圧倒的差がつ くのは明白だ。おかずだけを食べてるのとほ ぼ一緒。納豆の中にご飯粒がまばらにある状 態。そういうことにきっとなる。まるで大海 に注ぐ一滴の真水。理科系クラスの女子生徒、 仲間内で一匹だけ色の違うスイミー。 もうひとつは最初から納豆をまぜて、納豆 ご飯とチンジャオロース、納豆ご飯とお漬け 物、という風にする。これなら分量の面でじ ゅうぶん釣り合いはとれる。 しかしこれは味が問題だ。何を食べても納 豆の味がついてくる。純粋におかずと白飯と いう組み合わせはなくなる。やはり王子様に は白馬、そうありたい。 いつまでも迷ってはいられない。目の前の 食物たちは湯気まんまんに誘ってるぞ。 そして決断した。私はあいさつ代わりにみ そ汁をひと口すすると納豆をパックから取り 出してご飯にまぜた。 ただまぜたのではない。茶わんの中で納豆 が多い地域と少ない地域を作ったのだ。これ で納豆の影響が少ないひと口が欲しければ白 飯優勢地域に箸をいれればいい。もうどう転 んだってベストの状況にはならない、そんな 中での苦肉の策。 誰にも知られぬ孤独な悪戦苦闘の末、なん とか最後まで(納豆)ご飯&おかずで過ごすこ とができた。ごちそうさま。ひとつの困難を 克服し、宇宙の平和を守った級の達成感。そ してほどよい満腹感。そんな余韻にしばらく 浸ったのち、席を立つことにした。 ふと顔をあげると、壁に貼ってある紙に何 か書いてある。 「ご飯おかわり自由」 ・・・・・・・・。 それから店を出てしばらくのことはあまり 覚えていない。 2001,10,18 |
・演歌のいばら道 |