ratugede

The Drama of Magic. PartT
Barongのぺーじ

Beryl De Zoete & Walter Spies
『Dance and Drama in Bali』
p.86-115
1973(Reprint) Kuala Lumpur :
Oxford University Press
Originally published by Faber and Faber Ltd. 1938
ratuayu
その12・ 2007年7月13日更新・ DDBHome
Part1−2               p.90(13)〜p.91(32)
Part1−3               p.91(33)〜p.94(26)
Part1−4               p.94(27)〜p.96(13)
Part1−5               p.96(14)〜p.97(22)
Part1−6               p.97(23)〜p.98(40)
Part1−7               p.99(1)〜p.100(19)
 
Part1−8               p.100(20)〜p.101(16)
Part1−9               p.101(17)〜p.102(21)
Part1−10               p.102(22)〜p.104(3)
Part1−11               p.104(4)〜p.105(27)
Part1−13 トゥルニャン村のバロン・ブルトゥック               p.109(35)〜p.113(29)
Part1−14 バロン・ランドゥン               p.113(30)〜p.115
Part2 チャロナラン その1               p.116〜p.122(21)


p.105の28行目から

『Kalekek』

(訳註−Kalekekの発音ならびに日本語表記がよくわからないのですが、とりあえずカレクッとしました。正しい読み方がわかり次第、訂正します−)


 ここに紹介する複雑な話には、かなりの数のキャラクターが登場する。それらキャラクターたちはいろいろに変身して、墓地という奇妙な場所に足しげく通う。墓地はバリで数多くの重要な出来事が起きる現場である。



 あるとき、シバ(Civa)神と彼の妻であるデウィ・スリ(Devi Sri)女神がワララウ(Waralaoe, Waralau)山を歩いていた。人や動物の気配がない美しい場所のそばに来たとき、シバ神は妻とともに楽しみたくなった。しかし妻のデウィ・スリ女神にそんな気持ちはなかった。なぜならば、そんなことをするにはその場所はあまりにも荘厳で神業のなせるような場所だと彼女には思えたからである。シバ神はそんな気持ちのデウィ・スリ女神をなんとかしようと躍起になった。そうこうするうちに、シバ神の精液が2滴、山のくぼみに落ちてしまった。シバ神は精液を無駄にしたデウィ・スリ女神に腹を立て、2滴の精液へマントラを唱えた。すると2滴の精液から男女1人ずつの双子が産まれた。しかしシバ神は子どもたちを残して、デウィ・スリ女神とともに立ち去った。その後、天国に着いたシバ神はお腹を空かせて泣いている子どもたちの声を聞いた。そこでシバ神は子どもたちのもとに戻り、自分が父親であることを2人へ告白した。さらにシバ神は子どもたちをカラウェナラ(Kalawenara)、カレクッ(Kalekek)と名づけ、2人へ墓場で食べ物を見つけるよう命令した。さらにカラウェナラはティティ・ゴンガン(Titi-gonggan 注:プラ・ダレムの外側の溝にかかっている木製や竹製の小さな橋のこと。天界と地上の間のどこかにも小さな橋がかかっていて、それはティティ・ウガルアギル/titioegalagil, titi ugal-agilすなわち吊橋と呼ばれている。罪深い魂はティティ・ウガルアギルを渡る時にバランスを崩し、火が燃え盛る溝、あるいは刃が上を向いて突き刺さるのを待っているクリスたちの溝に転落するといわれるがわたされている、魔力ある湧き水のそばに住み、そこを司るサンヒャン・プトラジャヤ(Sanghyang Poetradjaja, Sanghyang Putrajaya)という名の神に仕えることと、お供えのなかでもお供えに添えられた硬貨、もしくは火葬のお供えの1つである硬貨を食べ物とすることを命じられた。カレクッの場合は正午から以降という制限つきで、死者のためのお供えを食べてもよいと定められた。



 話は変わり、夫のシバ神からいくぶん愛想を尽かされていたデウィ・スリ女神は、夫の協力を得ずに子どもをつくることができるかどうか考え始めていた。そこで彼女は、暗い考え(注:死に関連した考えに満ちたプラ・ダレムへよく足を運ぶようになった。そしてカジェン・クリウォンの満月の日(呪的な力が効力を発揮する日)に、従者たちとともに墓場の真ん中にある水の噴出口へ沐浴に訪れた。そこで偶然、出産で亡くなった女性の墓の上にデウィ・スリ女神は衣服を置いた。翌日の夜、デウィ・スリ女神はドゥルガ(Durga)女神に変身して同じ場所を訪れ、死体に呪文をかけると少女が産まれた。さらに後産からは少年を作った。ドゥルガ女神に変身したデウィ・スリ女神は少女をブタ・スリワール(Boeta Seliwar, Buta Seliwar)と名づけ、少年にはチュウィルダキ(Tjoewildaki, Cuwildaki)という名前を与え、2人に墓場の管理者となるよう命じた。しかしブタ・スリワールが「自分の魔力はそこまで強くない」と訴えたので、ブタ・スリワ―ルの名前をスリワルマヤ(Seliwarmaya)に変え、クプーkepoeh(kepuh)の木(注:墓場に生えている木。葉の落ちた季節には赤い花が花盛りになるを住まいとして与えた。つぎにチュウィルダキにはまだ火葬されていない死体の魂と合体し、亡者に縁のある家で災いを起こすよう命じた。そして、かつてシバ神が自分の子どもへ定めたのと同じく、ドゥルガ女神に変身したデウィ・スリ女神もブタ・スリワ―ルとチュウィルダキの食べ物を死者へのお供えものと定めた。さて、シバ神の子どものカレクッは死者への新たなお供えを奪った。その時のカレクッはバロンに変身してあちこちを歩き回き、墓場へ行ってお供えを食べたのであった。しかし人々は誰がお供えを盗んだのかわからなかった。なぜならばカレクッの変身した姿は、人間の目には見えないからである。かたやデウィ・スリ女神の子どものチュウィルダキは食べ物が来るのを待っていたとき、人々が走り去り、カレクッがお供えをむさぼり食っているのを目撃した。そこでチュウィルダキはスリワルマヤを呼び、スリワルマヤとチュウィルダキの2人が食べ物であるお供えをめぐってカレクッと闘った。そして2人を相手にしたカレクッは負けてしまい、灰になるまで燃やされてしまった。勝者のスリワルマヤとチュウィルダキの2人は、カレクッが自慢していた呪力の程度をあざ笑った。そのころカラウェナラはティティ・ゴンガンに座って姉のカレクッが帰ってくるのを待っていた。しかしカレクッは帰ってこない。そこでカラウェナラはサンヒャン・プトラジャヤ神に頼み、カレクッを探しに行く許可を得た。しかしそれでもカラウェナラは「カレクッは食べすぎで動けないのだろう」と想像していた。そしてカラウェナラは墓場に着いた。墓場で彼女を呼んでみたが返事はなく、そこには灰の山があるだけであった。サンヒャン・プトラジャヤ神はカラウェナラが空しく呼ぶ声を聞いて、墓場へやって来た。サンヒャン・プトラジャヤ神は灰の山がカレクッのものであることがわかった。カラウェナラは祈り、灰へ呪文を唱えて、灰に命を再び取り戻させた。すると蘇ったカレクッは、獰猛なラクササとその姉がお供えをめぐって戦いを挑んできて自分を殺したことを話した。その話を聞いたカラウェナラは怒り叫び、「自分がスリワルマヤとチュウィルダキの2人を相手に戦ってやる」と挑発した。その挑発を聞いたスリワルマヤは激怒に鼻を鳴らしながらクプーの木から降りてきた。しかしこの時点だとスリワルマヤは自分が負けることをわかっていたので、自分を助けるよう弟のチュウィルダキを呼んだ。するとチュウィルダキは腐敗した死体の上で転がってから、カラウェナラへ飛びついた。カラウェナラは死体の悪臭に耐えられず、カレクッを連れてこようと逃げだした。カレクッはバロンに変身してやってきて、舌で悪臭をなめとった。すると、自分の子どもたちが負けて助けを求め叫んでいる声を聞いたドゥルガ女神がやってきて、口から炎を吹き出した。そして全員、一方が先頭になったり、もう一方が後になったりしながら、ひた走りに走って追いかけあい、ついにシバ神の領域に辿りついてしまった。シバ神は、すぐ後ろでドゥルガ女神が追っている一団がやって来たのを見て大変おどろいた。そこで彼はドゥルガ女神へ「なぜ私の子どもたちを追い回しているのか」と尋ねた。ドゥルガ女神は答えた「あなたのけがらわしい子どもたちが、私の子どもたちへ絡み続けるからですわ」。その答えを聞いて驚いたシバ神は「どこでお前(訳注:ここではドゥルガ女神。妻のデウィ・スリ女神はドゥルガ女神に変身している)は子どもを作ったのか?」と尋ねた。ドゥルガ女神の説明を聞いたシバ神は激怒し、妻のドゥルガ女神へその顔を2度と天界で見せることのないよう命じた。さらにシバ神はドゥルガ女神が永遠に墓場で滞在するよう運命づけ、カレクッに墓場でドゥルガ女神を監視するよう命じた。そしてシバ神はカレクッにバナスパティ・ラジャという名前を授けた。カレクッが負けそうにみえると、バナスパティ・ラジャの従者たち(クリス・ダンサーたち)はドゥルガ女神を殺したくなる。しかし彼らはドゥルガ女神を殺すことは禁止されているので、激しい怒りを自分たちの体でなだめるのであるという。



 筆者たちは、興味深いこの物語が何らかのかたちで舞台で演じられるのを観たことがない。しかしテガルタム(Tegaltamoe, Tegaltamu)のバロン劇で、カラウェナラとカレクッがシバ神の従者姉弟として登場するのを観たことがある。そのバロン劇ではカレクッはシバ神の料理人であり、地上のバリに降りてきて本物の米を味見する許可を得た。その理由は、カレクッが天界にのみ届けられる精神的で目に見えないお供えの精髄に飽きたからである。



 このバロン劇は、プラ・ダレムの外にある墓場に立つバニヤンの巨木の木陰で演じられる。寺院の門につながる一続きの階段があり、さらに先には第一中庭を区切る高い壁へ至る階段があって、重要な登場人物たちが登場する時にとても効果的に使われる。プマンクが各種のお供えを供えたのち、カラスの光沢ある羽をまとったバロンがいつもどおりにソロで登場した。バロンはアチチュード(訳注:バレエのポーズの1種。片脚で立ち、もう片脚は膝を曲げて上げる)や数々のステップなど、動きの豊かなレパートリーを見せる。つづいて立派な役人が(Penasarプナサール)が仲間の道化たちとともに門で気取ったポーズをとり、カラウェナラの到来を告げた。まもなくジャウッ姿のカラウェナラが、長い爪を震わせながら仕草やジェスチャーをしているのが寺院の壁越しに見える。ジャウッが展開した舞踊は、何かを探しているような真に迫る踊りであった。人の注意を引く輝いた出目を四方八方へ矢のようにさっと動かし、それはまるで彼が地面をジグザグにすばやく進んでいるかのようである。凝視による表現は見事であり、好奇心いっぱいの仕草、休みのない動作、そしてカレクッの行方を考え込んでいるポーズ。そもそもこの劇は、長い間不在の姉を案じて地上に降りてきた彼の登場をもって始まる。彼の見事な舞踊が終わると、それまでの出演者は全員、寺院へ姿を消す。



 次に登場するのは女性の従者(注:男性が演じるである。彼女は踊っている最中に、自分は死者へお供えを供えにきた遠方の王の従者であることを説明する。彼女はお供えの運搬人の到着を待ち続けている。やがて女性に扮した3人の道化が、頭の上でお供えを運びながら到着し、風変わりな墓場の舞踊を踊る。さらに王の従者が2人登場する。その従者たちは黒と白のチェックの衣装を着て顔を白塗りにし、僧侶がお供えを作ったり供えたりする仕草と伝統的な舞踊を過度におかしくパロディにして演じた。ひきつづきバロンに扮したカレクッが寺院の階段を降りてきて登場し、良い米がたくさんある光景に歓喜して笑いながら、せわしく駆け回る。彼女(訳註:カレクッは少女だったので、ここではバロンも「彼女」となる)はもちろん目に見えない存在という設定であるため、バロンの笑い声を聞いた従者たちは、あわてふためいて低木の茂みに隠れたり、木によじ登ったりして、恐怖のあまり、わけのわからないことを言っている。いっぽうバロンは歯を鳴らしながら、打ち捨てられたお供えの中を優美に歩き、お供えを足で弾いてひっくり返したりしている。



 舞台空間で騒がしくやっているあいだに、墓場よりも低い場所に立つバニヤンの木の下の小さな祠で、ラルン(注:原著のp.101を参照→ その9を参照の仮面にお供えが供えられている。まもなくラルンの恐ろしい姿が低木の茂みから現れた。彼女は墓場の正体不明の笑い声を調べにきたのである。喉を鳴らし、叫び、踊り跳ねて歩きながら、ラルンはカレクッ(訳註:ここではバロンを指す)に対面しようと前進してくる。悲鳴をあげながら痙攣していた滑稽な従者たちは、恐怖のあまり突拍子もない間抜け者になってしまったという様子で、魔物の敵対者の脚のあいだを素早く身をかわして逃げる。従者たちのその滑稽さは恐怖とは反対の、並外れたバランスとして機能していた。ラルンはカレクッ(訳注:バロン)を非難して「死者へのお供えを盗んだ」と言う。そしてラルンとバロンは互いに、舞台空間の周囲を怒った足取りでゆっくりと歩きまわった。さらにランダの弟子たちであり、魔女の初期段階にいるレヤック(leyak)たちが侵入し始めた。ラルンはランダに援軍を求めたのである。レヤックたちのうちの1人は口を突き出した白い仮面をつけており、途方もなく愚か、かつ至福の表情であった。そのレヤックは、寺院の門を出たり入ったりしながら漠然と凝視して盗み見をしている。息の一吹きで今すぐにでも吹き飛ばされる覚悟であろう。それにもかかわらずいつ何時でも再び現れる体勢でずっとコソコソ動いていた。



 次にランダが、自分の旗にはさまれて壮大な登場に臨む。笑った仮面のレヤックたちがランダを取り巻いている。著者たちはまず、ランダが階段のいちばん上にいるのを見た。白い布で覆われたランダは、別の布を手の中で揺らしている。ランダはレヤックたちの肩の上に飛び乗った。門の下をくぐる運搬人たちの肩の上でランダが屈むと、真紅の舌と立派な金色の額、牙と強烈な歯が輝く。下段に到着すると、ランダは自分の体をまっすぐにさせて直立した。同時に喉を鳴らし、長い爪を動かすと、それはまるで空中で織物を織っているようであった。さらに、荘厳で仰々しい行事を真似るかのように、自分の旗をつかんでいるランダ(注:旗の先が交差されると、それはランダが空を飛んでいると解釈される)がゆっくりと前方に運ばれてきた。量が多くて長くふさふさとした彼女の白髪は、彼女の下で運搬人としてよろめいているレヤックたちに覆いかぶさって揺れている。そしてランダは地面に降り立ち、背中をバロンに向けたまま寺院へ突進した。さらにランダは前方へ踊り跳ね、体を後方へ反らす。すると彼女の長い髪は地面を一掃した。続いてランダとバロンが異様で壮大な闘いを繰り広げたが、その闘いはランダの呪術的な布がバロンを負かすことによって終わった。バロンは寺院の階段でひれ伏している。その姿は燃やされたカレクッの灰を表現している。次にジャウッの姿でカラウェナラが門に現れた。彼はクリスでランダを攻撃するのである。ランダとジャウッは急いで階段を降りる。騒然とした音楽に合わせてジャウッは舞台空間を飛び跳ねるように横切り、ランダへ飛びかかった。そこでカラウェナラ(訳注:ジャウッ)は千の腕を持ち、天へ行くことができる超自然的な姿に変身したのである。半狂乱の美しい舞踊が展開され、彼は山の中、海の中を問わずランダを追いかける。雲の中から、墓場からランダの声が聞こえ、ランダの不可視の魔法の布がカラウェナラの追跡を邪魔する。次にシーンはがらりと変わり、天界の場面となる。ランダとカラウェナラはシバ神の前でひれ伏している。ここでシバ神は、従者にもたれかかっているプダンダ(訳註:高僧)の姿として登場する。ジャウッは素晴らしいパントマイムでカレクッが燃やされたことを説明し、道化のカルタラ(Kartala)がそれを言葉で説明する。高僧(訳註:シバ神)は尊大なしわがれ声でランダを叱った。そしてカラウェナラをなだめ、カレクッに再び生命を与えて復活させると約束する。すると、バロンがかすかに動いたように見えた。バロンの仮面は地面に平らに置かれていたのであるが。つぎにバロンは呼吸し、自分のすべての装飾を揺さぶり始めた。さらに口を開け、肩を上下に持ち上げ、徐々に生命を取り戻し始めた。その様子は飛び上がる前に身をかがめる野生の動物のようである。いっぽうランダは別の白い布を与えられ、その布に何かを命じるかのように寺院の前で熱弁をふるっている。まもなくランダはゆっくりとバロンに近づき、仮面に触れた。ランダはバロンの額を持ちあげたようである。ランダがバロンから離れると、バロンは歯を鳴らし、4本足でひょいと立ち上がった。そして立ったまま武者震いしているランダを見つめた。バロンは荒々しい返事を返し、ランダは白い布をバロンの口に押し込んだ。(注:墓場の領域は、ランダと彼女の弟子であるシシヤsisiyaたち、そして今はカレクッがその姿へ変身しているバナスパティ・ラジャと彼のブタやカラたちとで、占拠しあっている



 音楽が不穏な興奮とともに鳴り響いている。突然、ついさっきまで舞台空間の端の低木の茂みで待ち伏せしていた男性たちが、クリスを振り回しつつ狂気じみた叫び声をあげながら、ランダへの前へ決然と勢いよく進み出た。ランダは寺院の階段へ退き、彼らを嘲り笑う。彼らはランダの布によって追い返され、低木の茂みへ飛ばされた。彼らは都合4回ランダの前に進み出て、4回撤退させられた。そして回を深めるごとに、男性たちはトランスの度合いを深めていった。前進したり退却したりする波を繰り返しつつ、目を閉じたまま脚を高く上げて様式化されたステップで進む彼らは、こっそりとランダ側へ移動した。そしてついにランダを寺院のほうへ追い詰めた。憑依の嵐は緩みだした。何人かはランダへ体当たりしようと狙っていた様子であったので、壁や門から引き下ろされなければならなかった。バロンがゆっくりとした足取りで前方にやって来た。バロンの仮面は小刻みに震えている。まもなく前脚の踊り手がトランス状態で地面にうつぶせになった。そして彼の役目が他人にとってかわられた。荒々しい集中力で野生的なジャンプをしたり身を曲げたりしながら、トランス状態の男性たちは自分の身にクリスを突きたてる。間断なく彼らの激昂があらためて発生している。数人の男性たちは、好奇心をそそる様式化されたステップを踏みながら、不安な幽霊のようにぶらぶらと周囲を徘徊している。そして、聖水の入った容器を持ち上げたプマンクが揺れ始めた。プマンクは1種のお供えとしての舞踊を踊り始めた。それと同時にお供えが寺院から運びこまれ、地面に敷いた敷物の上に安置された。トランスに入っていた男性たち1人ずつから、手にしていたクリスをもぎとられ、それぞれの頭は順番にバロンのあご髭の下に隠れた。そしてクリス・ダンサーたちは聖水をふりかけられ、多数の人々は聖職者が儀式を執り行っている敷物の周りに集まった。最初と同じく、若い未婚女性たちがラルンとランダの仮面が入った籠を頭の上に載せて、バロンのそばに立っている。極度の憑依状態に陥った者たちがトランスからの解放を承諾するまでには、長い時間がかかった。そのうちの1人はバロンの前脚の踊り手であった。(原著:写真42)

p109の34行目まで

                                     ホームホーム