九州インド哲学

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PHOTO by KEI KATAOKA
■ サンスクリット写本調査の旅

1993年春,南インド旅行,ケーララ州トリヴァンドラム市郊外のケーララ大学カリヤワッタン・キャンパスが,はじめての写本図書館訪問でした.当時の図書館長はサンスクリット研究に理解がありました.修士学生の私の話を丁寧に聞いてくれたうえで,「サンスクリット写本は図書館員に聞いて適宜やってくれ」と.非常に親切だったのを覚えています.いくつか写本を見て,コピーを注文し,コピー代と日本までの国際郵便代を置いていきました.届いたのは日本に帰って六ヶ月後でした.

1995年から二年間,インドに留学する機会を得ました.文献講読の合間をぬって,インド各地の図書館を回り,本格的に写本蒐集を開始しました.蒐集といっても現物ではなくゼロックス・コピーの蒐集です.

まずは南インド.地元のマドラス.親切で仕事が丁寧なアディヤル図書館(下写真)からは多くのコピーを入手しました.毎回10kgほどになったコピーの束を抱えて製本屋までリキシャーで移動していました.Adyar Library そのほかマドラスのGOML,マイソールのORI,タンジャーブールのサラスヴァティー・マハルなどなど.

北インドでは,まずは聖地ベナレス.マドラスから60時間ほどかけて電車で到着したとき,前の寝台のイタリア人は,早朝アラハバードから乗ってきた集団に荷物を盗まれていました.

そのほか,カルカッタ,ラクナウ,アラハバード.これら写本図書館情報については東洋文化研究所附属・東洋学研究情報センターのホームページ図書館・文書館ガイドにまとめました.

留学後も,機会を見つけては,ピン・ポイントでインド内外の写本図書館を回ってきました.オックスフォード大学に研究員として滞在中は,大英図書館,オックスフォードのボードレイアン,ケンブリッジ大学図書館.また,ネパール・ドイツの写本保存プロジェクト(NGMPP)で撮影された多くのマイクロを収めるカトマンドゥは,東洋文化研究所の助手時代,2002年の春に訪れました.

カシミール州ジャンムーのラグナータ寺院図書館は,非常に親切だったのが印象的です.本来,写本というのは館外持ち出し禁止ですが,コピー機がないので,門前のコピー屋さんまで行ってコピーします.街のコピー屋ですから,客が入れ替わり立ち代り入ってきては,写本のコピーがなかなか終わりません.図書館の閉館時間の五時に間に合わず,最後までやってから,仕方ないのでホテルまで持ち帰って,写本と一晩添い寝しました.翌朝すぐに返却しました.ライブラリアンのサンスクリット学者,シャルマさんからは,自著の『ドブラー河を讃える』というサンスクリットの詩集をいただきました.

現在はデジカメも導入し,インド図書館での撮影・複写を続けています.これまでトヨタ財団,三菱財団の助成を受けることができました.理解ある民間の助成金には本当に感謝します.

こうした写本蒐集の成果は,博士論文その他のクリティカル・エディション(批判校訂)に生かしています.その他,小論文においても,諸文献の引用にあたって,原典を写本に基づいて訂正するようにしています.

最近嬉しかったのは(そして半分あきれたのは),三年前に注文したカルカッタAsiatic Societyの写本コピーが,ようやく送られてきたことです.半分予想していたことでしたが,2004年の夏,友人を介して再度催促したところ,すっかり忘れ去られていました.「そんな注文は受けていない」と.早速2001年8月24日の日付入りNo. 23429の受領書のコピーを送付.次に来たのは「何を申請したのかこちらに記録がないから再度,写本リストとともに,アプライし直してくれ」と.すべて書き直して,それから数ヶ月して,ようやく写本コピーとマイクロが送られてきました.

昔,ケーララ写本の写真ネガフィルムも,二年経って,忘れた頃に送られてきていました.しかも,国際郵便代を払ったにもかかわらず,たまたま日本に帰る日本人に運ばせて.