昭和維新(青年日本)の歌

一、泪羅の淵に波騷ぎ 巫山の雲は亂れ飛ぶ
  溷濁の世に我立てば 羲憤に燃えて血潮湧く

二、權門上に驕れども 國を憂うる誠なし
  財閥富を誇れども 社稷を念う心なし

三、噫呼人榮え國亡ぶ 盲いたる民世に踊る
  治亂興亡夢に似て 世は一局の碁なりけり

四、昭和維新の春の空 正義に結ぶ益荒夫が
  胸裏百萬兵足りて 散るや萬朶の櫻花

五、古りて死骸乘り越えて 雲瓢遥の身は一つ
  國を憂へて起つときに 益荒夫の歌無からめや

六、神の怒りか地の聲か そも只ならぬ響きあり
  民永劫の眠りより 醒めよ日本の朝ぼらけ

七、見よ九天の雲は乘れ 四海の水は雄叫びて
  革新の機到りぬと 吹くや日本の夕嵐

八、噫呼うらぶれかし天地の 迷いの道を行く人は
  榮華を誇る塵の世に 誰かの樓の眺めぞや

九、功名何か夢のあと 消えざるものはただ誠
  人生意氣に感じては 成否を誰かあげ論う

十、やめよ離騷の一悲曲 悲歌慷慨の日は去りぬ
  吾等が劍今こそは 廓清の血に踊るかな

泪羅:シナ湖南省の湘陰懸にある泪羅江のこと。昔、戦国時代に
屈平という憂国の士、詩人が身を投げて死んだ所。通称は泪羅淵
、屈譚と呼ぶ。不遇の中にありながら祖国を想い自決した魂が宿る
場所とされている。
波騒ぐとはその淵より憂国の魂が動き始めたことを象徴しており、
作詞者の義憤の現れ。
巫山の雲は乱れ飛ぶ:先程の対句。故事よりの意味として「巫山の
雲」「巫山の雨」「雲雨」「朝雲暮雨」は男女の情交を表す。
乱れ飛ぶの射すところは己らの私利私欲に走った者の多いことを
悲観し、乱れを意味するところ。
混濁の・・・はその通り世の乱れを表し、これも屈平の詩の中で
「世 混濁して」と多く用いられている。

1番の歌詞
その昔屈平が身を投げた泪羅の淵より憂国の魂が感応し、
騒ぐ。巫山の雲は風雲急を告げて乱れ飛び、世の乱れに怒りあり。
道理の通らぬ乱れ濁った世に直面している、したがって我らの
怒り、正義感はいかともすべからず、怒りに燃えて血潮が湧き
上がってくる。

権門:権力者、官権、又、その機構を表す。
社稷:国家安泰の為の大切な守り神。社は土地の神・くにつかみ
稷はきびと読み、穀物の代表。五穀の神の意。
そのため一般に社稷は「国家」の意として用いられる。
 2番の歌詞
官位、権力を占める輩は、上にあって権勢を恣にしているが、
誠この皇国を憂うる誠意をもっていない。
財閥は莫大な富を蓄え力を誇示しているが、不甲斐なく
我国を想う赤心(赤子の心・純粋な心)を持ってはいない。

人栄え国滅ぶ:広く世界の歴史を見るとき、次々と国は興るが
衰退し、永久の歴史を作る事無く消滅していった。
かつて栄えた大国も人々が亡びを見い得ることは無かった筈だ。
冷静に、真として国を見つめるものこそ、亡国の道を感じてい
たにしろ。国民は栄華を誇る時代に溺れ、利益、欲望を追求し、
本来あるべき国の姿を崩壊させ、欲望に盲目化した人民を待つ
ものは終焉。
しかし我国は有史以来、亡ぶ事無く悠久の歴史を築いてきた。
その我国も盲いたる民が蔓延してきたことにより、これを亡国の
兆しといわずして何と云うか。

3番の歌詞
国は栄ながらも滅びの道を辿っている。
それを自覚せず道理を悟らぬ輩は大手を振ってまかり通っている
まるで夢のように世界の歴史は治乱興亡を続けてきたが、
その姿は正に一局の碁を打っているかのように。
我国はその兆しを見ているのか?

胸裡〜櫻花
櫻は散って終わりではない。豪華に咲いた花は潔く散るが
故に、即時、そこから新たな葉を生起させる。
華は散ろうとも次々に青葉は茂り、鮮やかに生命は力となり
樹全体は青々とした生命に溢れる。
つまり、櫻は自ら散ることにより後に続くものをより良く
育てるという重要な役目を背負っている。

4番の歌詞
昭和維新断行の晴れやかな春の空の下
正義を以って契り、同志として結集した同志達
各、胸の中は必勝の壮大な戦略で満ちている
いざ挺身し散り行かん。万と散る桜の潔く如き

古びし死骸:形骸化し機能を失った社会機構、腐敗した世の中。
打破すべき、一新すべき対象。乗り越え克服せんとする一等。

5番の歌詞
不平多く腐敗せし世を打破し一新せんとする
一介の我が身は何事にもとらわれない境地にあり(雲飄々の身)
我々が国を憂いて起ち上がるからには
丈夫の心情を吐露する歌がないことがあろうか
我らの心こそがこの歌だ

そも只ならぬ響きあり:今正に天地の怒りとも言える我らの義憤
挺身愛國・維新断行の動きを表すもの。
この怒りざわめく手法は1,6,7番にも見られる。
「泪羅の淵に波騒ぎ巫山の雲は乱れ飛ぶ」「天の怒りか地の声か
そも只ならぬ響きあり」「見よ九天の雲は垂れ、四海の水は雄叫
びて」
永劫の眠りより:永劫=無限に続く年月
今、天地の怒りによって眠りは覚まされる。

6番の歌詞
これは天の怒りか、地の声か
尋常ではない響きが轟きわたる
いま、長き闇を破られるときがきた。
国民同胞よ、永久の眠りより醒め
共に日本の朝ぼらけを迎えよう。黎明は近い

今こそ維新断行の好機の表現が「九天」「四海」として7番でも
用いられている。
九天:全天を九個に分けてある。
中央「釣天」東「蒼天」東南「陽天」南「炎天」西南「朱天」
西「昊天」西北「幽天」北「玄天」東北「變天」
四海:四方の海
「東海」「西海」「南海」「北海」
九天を全ての天上、四海を全ての天下

7番の歌詞
見よ!全ての天に雲は垂れ 
全ての海は叫んでいる
革新の機は今こそ到来せりと
吹きまくっている
日本の夕嵐までもが

うらぶれかし天地・栄華を誇る塵の世
人栄国滅と同じ。

8番の歌詞
ああ、この惨めな世の中の
悟る事無く人は迷いの道を歩んでいる
一見、栄華を誇るかのようなこの俗世で
誰が高楼の眺めなどしていられることか

功名:手柄を立て名を知らすこと
何か:どれほどの価値があると云うのか
消え〜誠:誠だけは消えはしない。風化することは無い。
人生意気に感ず:価値観、損得ではない。己の誠のために

9番の歌詞
人の世の名誉、手柄など一体どれ程の価値があるというのか
夢のように儚く消え去るものだ。
しかし「誠」は消えるものではない。不朽の価値があるのだ。
人生は損得で動かされるのではない。真心によって動かされる
のだ。その時は誰が、成否(成功・失敗)を論ずるものか!

決意、実行の10番
いつまでも悲歌慷慨にひたっていてはいけない
今こそ我らの維新断行の時が来た「我らが剣今こそは
廓清の血に踊るかな」

離想の一悲曲はこれ位でやめよう。
いつまでも悲しんでいては仕方ない
既に悲歌慷慨の日は過ぎ去った。
我らの剣が今こそは
世の腐敗を今こそ打倒し 清め 正義の血に高鳴っている

作詞/三上 卓

聴け同胞よ 若人よ
起て同胞よ 若人よ
五・一五を忘れるな!
維新断行!皇政復古!
腐敗した世を清め
国賊を抹殺せん!



参考文献
青年日本の歌/著書 前田一可博士
発行/細田政治経済研究所