森川 久美
〜日本イタリア化協会会員〜
イタリアの歴史ものを描かせたら、森川久美の右に出るものはまずいまい。
日本イタリア化協会会員というのは彼女が自称しているのだ。
私の中では森川久美=イタリア
という関係は前提としてできあがっている。
「ヴァレンチーノ」シリーズに始まり、
『プリマヴェーラ』『花の都に捧げる』等々。
私がイタリアの歴史に多少なりとも興味を覚えたのは彼女の作品による。
また中国ものの『南京路に花吹雪』『Shang high in 1945』に、
トルコの『イスタンブル物語』、戦国時代の『King of Jipang 信長』等。
国籍・人種の違いが諍いを生む、その悲しみが伝わってくる。
大きな役割を担う者、そうでないちっぽけな人間。
歴史の流れの中で苦しむ両者の姿を克明に描き出す。
彼女の話の中には、人が何かを成し遂げようとし、果たせず、その無力さに打ちのめされる時、
それでもそのまま諦めてしまわない強さが感じられる。
やはり、社会の底辺に近い人間を描いた方が多いかもしれない。
彼らの諦観や穏やかな失望、それらに根ざす生への執着が感じられるような気もするので。
絵も非常に美しい。
特に、彼女の描く男は私をノックアウトするのに十分な色気を備えている。
遅蒔きながらそれに気づいたのは
『法王庁の陰謀』であった。
エットーレのかっこよさにくらくらして
『Shang high in 1945』を読み返し、本郷さんの男ぶりに鼻血を出した(笑)
ASUKAで連載を始めた頃の『イスタンブル物語』のカラー表紙は今でも大事にファイルしてある。
彼女の本はほとんど持っているはずだが、
『アルカディアの道』が見つからないのが残念だ。
最近文庫化が始まったから、その線で出てこないかな。
作者のホームページはこちら。
サイトの雰囲気がとても綺麗で、話題も豊富だ。是非行ってみて欲しい。 →
ドルチェでいこう
下記に私の持っているバージョンでの著作リストを記すが完全では無いので、あしからず。
'01.2.13
| タイトル | 備考・内容 |
|---|---|
| 『蘇州夜曲』 (角川書店・全集) 全1巻 |
「蘇州夜曲」「思ひ出」「センチメンタル・シティ」収録 表題作は、本郷義明と黄子満シリーズの第一作。 本郷は軍の実力者のの暴露記事を書いて上海へ飛ばされる。 冒険活劇風で面白い。リリィの最期があっけなくて気の毒になるけど。 |
| 『南京路に花吹雪』 (角川書店・全集) 全3巻 |
「南京路に花吹雪」「南京路でつまづいて」「花は辺りに雨と降り」収録 本郷と黄の登場する上海シリーズ。 日本と中国の戦争を回避するため働くが力及ばず日中戦争勃発。 黄の消息は不明のまま。悲しい話だった。 黄がいつまでも日本と中国に引き裂かれて苦しむのがかわいそうでしょうがなかったな。 本郷さんが鬼怒川とじゃれているのを見て、 「僕にはそんなふうに甘えてくれない」 って思ってるシーンで思わずホロリ。 生きることに期待しなくなったという時には手をさしのべてあげたかったけども。 本郷さんだってあれで一生懸命やってたんだし、責められないね。 そして、彼が苦しんでいるのを知りながら追いつめなくてはならない本郷さんも気の毒で。 それでもやり遂げようとする本郷さんはやっぱり男だなあ(笑) |
| 『Shang high in 1945』 (角川書店・全集) 全2巻 |
「Shang high in 1945」「不思議の20日間」「宵い闇つれづれ」収録 上海シリーズ第三弾。 一次大戦のさなか、本郷と蔡文姫は違う陣営に属しながらも手を取り合う。 相変わらず不器用で真っ直ぐな本郷さんの生き方に涙が出る。 でもかっこいいんだよなあ(笑) 『南京路〜』よりも男ぶりが上がった感じ。この人の描く男は三つ揃いが似合う(笑) この話ではとりあえず第二次世界大戦が終結して、 本郷さんと蔡が明日を迎えられることになったので前作よりは救いがあるかも。 「宵闇〜」は女に生まれたため歌舞伎の舞台に立てなかった女の話。 こういう夢千代日記みたいなはかない物語多いんだよね。 |
| 『レヴァンテの黒太子』 ヴァレンチーノシリーズ (角川書店・全集) 全1巻 |
「スキャンダル・ムーンは夜の夢」「レヴァンテの黒太子」「花のサンタ・マリア」 主人公は女だてらにヴェネチアのドージェを務め、 自分をヴァレンチーノと呼ばせている。(女だとヴァレンティーナになる) 「レヴァンテの黒太子」では、ナポリと事をかまえていろいろあるんだが、女装が綺麗だったな(笑) しかし彼女は男らしい。「スキャンダル〜」では幼なじみの女性に恋してるし。 「花の〜」は、シリーズ登場人物であるアエリアの過去。ちょっと切ない話。 |
| 『月空遥かに』 ヴァレンチーノシリーズ (角川書店・全集) 全1巻 |
「恋のページェント」「嘆きのトリスタン」「カスティリアの貴婦人」「月空遙かに」 「恋の〜」では鬼畜なお母さんとの闘いが楽しかった(笑) 「カスティリア〜」も陰険な闘いぶりが面白かったかも。 …え?ヴァレンチーノってかなり陰険な人間だったりする?(笑) 「月空遙かに」はすごく切ない物語だったな。 この話では幼いのにヴァレンチーノの男ぶりが際だっているような気がする(笑) |
| 『セルロイドドリーミング』 (角川書店・全集) 全1巻 |
「暗闇の天女」「上海灘」「Say Good-Bye」「ミッドナイト・スリーパー」 この人の話って、行く当てのない人間の寂寥感みたいのが漂ってるんだよね。 このシリーズも、香港の根無し草たちの話だしな。 一番好きなのは第三話、チェン・リーレンが財閥を取り戻す話。 これがLaLaで連載されていた折、この本にして202ページの部分がアテレコストーリー (うわ、古っ・笑)に使われていたのをよく覚えている。笑えたからなー。 揚げパンを食べてるとこなんだけど、うはははは。 どういうシーンか知りたかったら聞いてください(笑) |
| 『シメール』 (角川書店・全集) 全1巻 |
強烈な復讐劇。生き残った息子が仇を全部討ってまわるが、 かなりひどい裏がある。読み応えはあるけど辛いよ、この話。 |
| 『春宵曲』 (角川書店・全集) 全1巻 |
「十二夜」「天の戴冠」「青色廃園」「ドルコンスキイ公爵夫人」「花月物語」「春宵曲」 短編集。一番好きなのは「天の戴冠」ヨーク家・リチャード3世の話。 『時の娘』で汚名をすすいだ彼だね。このあたりはドラマチックでものすごく好きさ。 大好きなやまざき貴子の『マリー・ブランシュに伝えて』もこの時代だね。 物語自体は全く関係ないけど(笑) |
| 『ヴェネチア風琴』 (角川書店・全集) 全1巻 |
「ヴェネチア風琴」「特別休暇」「プリマヴェーラ」「君よ知るや南の国」「法王庁の陰謀」 短編集。「プリマヴェーラ」はフェラーラの公女と失われたトルコの王子の物語。綺麗なんだよね。 「君よ〜」はすげー泣ける。イタリア独立のために命を捧げた青年の話なんだけど、 実際には姉を愛するが故って言う方が正しいのかな。 そして「法王庁の陰謀」これは本当に綺麗。 オペラのプリマドンナとイタリア統一に命を賭ける(笑)貴族のラブストーリー(いいのか、そんな要約で・笑) これでエットーレに惚れたんだよな。 |
| 『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』 角川書店 全1巻 |
アサコさんの過激な日常(笑) 根無し草の歌手があちこち流れていろんな事件に巻き込まれる。 |
| 『ウェストエンド・ストーリー』 角川書店 全1巻 |
作曲家と恋人の役者にダンサーの女の子たち。とても雰囲気のいい話。 ストーリーよりもビジュアルを大事にして描いたのではないかな。 夜中に彼らが踊るシーンなんかがとても綺麗。 |
| 『花の都に眠る』 角川書店 全1巻 |
「花の都に眠る」「水の都乱雲伝」収録 「花の都に眠る」が素晴らしい! ロレンツォ・ディ・メディチとサボナローラの対立に至る過程というかなんというか。 サヴォナローラが美しい容姿をしていると書かれているが、 私の目にはロレンツォの方が男らしく素敵に見える(笑) 死後もサボナローラを捕らえて離さないロレンツォへの愛憎がたまらん。 人間としてはあり得る話だが、というか十分よくわかる話だが、 それで破壊される街はたまったものでは無い。 でも「恋をしたことがあるとしたら、あの男だったかもしれません」 という独白で許す気になったよ(笑) 私もロレンツォの孤独にとても惹かれた同士だからだな。 だから本当はアンジェロ視点が一番近いかも。 |
| 『イスタンブル物語』 角川書店 全7巻 |
トルコとイギリスの戦争を描く。 イギリス人の考古学者ルパートがトルコを訪れ、戦争に巻き込まれる。 ルパートが最後アリフに、自分がトルコ人になれなかったのを許してくれと言う姿が印象的だった。 民族・国籍の壁はやっぱり厚い。 今なお世界のあちこちで続いている民族紛争を見ればわかる話なんだが、 こういうことってどうにもならないのだろうか。 |
| 『King of Jipang 信長』 角川書店 全1巻 |
信長の側にあがった久慈三郎の眼から見た信長像を描く。 彼(三郎でもあり、信長のことでもあるが)の魅力を余すことなく描いた作品。 信長の孤独とそれを理解できなかった三郎の悲しみがとても辛い。 もうこの話は最高だぜ!信長がまた美男子で惚れそうだし(笑) 信長ものの話は数多いけども、この話すっげ好きだなあ。 |
| 『ジークフリート 自由の盾』 角川書店 全1巻 |
これ、ちょっと時代背景がわかりにくい。 ナチが台頭し始めた時代のドイツで翻弄される市民の話だな。 マジパンのおじさんのエピソードは泣けた。 |
| 『エリザベート』 角川書店 全1巻 |
原作:ミヒャエル・クンツェ オーストリア皇后、エリザベートの物語。 まあそこそこ。私としては森川久美の物語そのものが好きなので、 原作付きはあまり好きじゃないんだよなあ。 |
| 『ソフィアの歌』 角川書店 全1巻 |
原作:五木寛之 ロシアに流された大黒屋光太夫の物語。 無念のうちに死んで行った仲間のために情を通じたソフィアを置いて日本へ帰るが、 軟禁されるだけで、ロシアに戻ることもそれ以外のこともできない。 最後がとても悲しい話だった。 |
| 『ブルボンの封印』 角川書店 全3巻 |
原作:藤本ひとみ まあ原作も面白かったし、波瀾万丈の逆転劇なんだけどね。 鉄仮面のエピソードが怖くてちょっとイヤな話(笑) 出られない、はずせないという恐怖感はちょっとどうにもならんかも。 |
データは '01.2.13 現在