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1978年製 Greco EG-700 "Half
Tiger" #H781468
オークションにはいわゆる『ジャンク品』と呼ばれる物件が数多く出品されている。慣れた人たちは,そこに時折目玉物件が混じていることを知っている。しかし,それは確かに宝の入った小さな葛籠(つづら)であることもあるが,お化けの入った大きな葛籠であることもある。小さな葛籠か大きな葛籠か,ジャンクに入札することは『賭け』であり,オークションの醍醐味のひとつでもある。
ギターのジャンクには大ざっぱに2種類ある。ひとつは,中途半端にギターの知識を持った人に所有されいたずらに手が加えられているもの,パーツの交換などはまだましなほうで,例えばロゴが改変されたり,塗装が素人技で塗り直されたりしているものなどがある。もう一つはギターの知識が殆どない人に所有されていた物,この人たちはおそらくギター自体にはそれほど興味がないのだろう,簡単に直せるようなトラブル,たとえばジャックやスイッチのの接触不良や1つのペグの故障程度のことでも直そうとはせず,手放してしまう。もちろん小さな葛籠は後者,ジャンクを狙うなら当然後者のような品を狙う。
このギターはおそらく後者の物件である。音が出ない,ジャックプレートの破損,ポッド軸の折れがあったが,ギターを知っている人ならどれも容易に直せることはすぐに分かる。
特徴はなんといっても目を引いたのはトップのトラである。グレコの古いギターはラミネイトトップが多いが,グローバーペグあるいはそれに類似したオリジナルペグを装着した機種は杢トップである。しかしこのように立派なトラは見たことがなく,本物かどうか眉唾ではあった。
しかし,ここは賭け,しっかり入手した。
予想は的中,杢トップだった。出品時の写真では分からなかったが,Half
Tiger(片トラ)とでも言ったらいいのだろうか,半分が立派なトラで,半分はほぼ完全なプレーン,このようなギターはかなり珍しい。昔,永井豪の『マジンガーZ』というロボットアニメがあったが,それに出てくる悪の親方に『阿修羅(あしゅら)男爵』というのがいた。
こいつ,顔の半分が男で半分が女,このギターを見て私はそれを思い出した。
レスポールのトップ材の選択の基本的な方法としてブックマッチ,すなわち1枚のメイプル板をスライスしてスライス面がトップ面になるように配置してトップの木調を揃えるというという方法がとられることが多い。しかし切り開いた一方の材に傷などの問題がある場合がある。そんなときに一方の材を保管して後に色の似たような材(カラーマッチという)あるいは木目の走行が似たような材(テクスチャーマッチという)ができた場合にそれを合わせてトップに用いるという方法がとられ,これらを合わせてフリッチマッチという。しかし当初はフリッチマッチを行う場合に杢の模様については考慮されておらず,このギターのように片側のトップにだけ杢をもったギターが多く出現したのだという(by Wikipedia)。ただ,これはGibsonの話であってGrecoがどうであったのかは分からないが,この頃の日本ギター全般にはまだトップの杢については無頓着だったということだけは間違いない。
さらにこのギター,エスカッションのビスを外した形跡がない。多少なりともギターに興味のある人に所有されたことがある個体であれば一度はこのビスは回さ
れているものだ。硬いハードメイプルに突き刺さったビスを滑らずに回すのにはある程度の慣れが必要,手慣れた人でなければビスの頭に舐めた跡が残る。このギターにはそれが全くない。初めて外されるエスカッション,私は心はまるでエジプトの未盗掘墓を開く考古学者達のように高揚した。
音が出ないのはジャックの接触不良だけの問題ではなかったようで結局リペアに出した。いつもは近所の楽器屋にお願いしていたのだが,あまりに時間がかかるので正直参っていた。そこで,オークションを通じて知り合った秋田市のリペアマン佐藤裕さんにお願いしてみた。彼はかつてESPに在籍しアメリカと日本でリペアマンとしての経歴を積んだ人,ギターを送付して間もなく迅速で的確なインスペクションとリペア内容の提案とそれについての明快な説明があり,今までリペアマンという職業の人と話をしたことがない私はもうそれだけで驚いてしまった。そしてリーズナブルなリペア価格,僅かな時間と金額でギターは生き返って戻ってきた。
このギターでのオリジナルのU2000ピックアップとオレンジドロップコンデンサーの相性は最高で,フロントはアタックだけ僅かに歪んでメローな余韻を残し,リアは角が取れてパワーコードがばらつかずすっきりと収まってくれる。佐藤さんも太鼓判を押してくれた。
佐藤さんは秋田市でFirst Touchという小さなリペアショップを営んでいる。東北地方で信頼できるリペアマンを探している人は是非連絡してみて下さい。
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