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1980年代製 YAMAHA LP-1000



ヤマハはSLシリーズの生産を終了後,85年頃からLPシリーズに移行している。LPシリーズの外見上の最大の変化はヘッドの大きさと形状である(LPシリーズへの移行期にはGibsonヘッドのSLシリーズも存在している)。小さくスリムになったヘッド形状が表しているものは,ヤマハとしてのプライドとオリジナリティーを捨て,本家ギブソンのコピーモデルを作る『二流メーカー』に甘んじることを認めた『降伏宣言』である。おそらくヤマハはそれを社史の汚点とみなしているであろう,同社はホームページの旧品番の紹介部分からこれらのコピーモデルを消し去っている。

また,ヤマハ本社から情報の提供を受けて出版されたと思われる"The History of YAMAHA Guitars over sixty years of innovation"にもこれらのコピーモデルは掲載されておらず,シリアルナンバーから製造年を辿るための公式情報がない。やはりコピーモデルを製作していたことを社史の汚点だとみなしているのだろうか,あるいはこれらのモデルをコピー時代に咲いた徒花として単に軽んじているのだけなのだろうか。そんなことをしても歴史は変えられないのに。

オリジナリティーを社是としていた筈のヤマハが原点復帰とは逆方向にこれほど外見が似たコピーモデルを作るとは,やはり当時はコピーモデルの人気を無視できず,経営面を考えると背に腹は代えられないという判断だったのであろう。ヤマハのロゴとオリジナルのペグがかろうじてオレはヤマハ のギターなんだと戦意を失ったうつろな目のファイティングポーズをとっている。

ヘッド形状の変更と同時にネック材をメイプルからマホガニーへと変更し,5枚目の写真が示すようにバックの2プライ(LP600を除く)へと初期SLシリーズの規格に戻し,『生産コストを下げ,より外見的にオリジナルに近く,売れるコピーモデル』を目指していることが仕様からも窺えるが,実際にどの程度売れていたのかは分からない。

このモデルはLPシリーズの最上位機種である。おそらく殆ど売れなかったのだろう,私がここ10年ほどの間に見たLP-1000は唯一これだけ。 カーリーメイプルトップということになっているが,フレイムは弱く,近くで見ないと分からない。張りトップでないことは確認できたのだが,どうも私の目にはトップ材がメイプルに見えない,サテンシカモアのように見えるのだ。サテンシカモアの掘り出しトップなどという掟破りの超欺瞞仕様なんてことはないと信じたい。

バックのマホガニーも木目と色調が一定せず,ピースの境界が明瞭に分かる。ネックはヒール継ぎ足しのマホガニー,フレットエッジバインディングなし,コントロールキャビティーをみても特に音質を 追求したコンデンサーが使われているわけでもない。白蝶貝のポジションマークインレイ以外になんのとりえもない最高機種,今このギターの価値はその希少性だけである。

こんな仕様のギターで10万円もするのなら普通はだれも買わない,TokaiのLS-60を買った方が数段良いのは明白。他社と横並びに比較しても,最悪の最高グレード品だったといえる。おそらくは『車ならクラウン』的にとにかく有名企業の最上グレードを買うんだという保守的な人が買ったのであろう。

LPシリーズは上位より,LP-1000,LPC-800,LP-600,LP-500,LP-400という顔ぶれであるが,音の特徴は大きく二つに分 ることができる。上位の2機種(LP-1000,LP-800C)には新しく開発されたスピネックスというピックアップが搭載され,下位機種(LP- 600,LP-500,LP-400)には従来のアルニコVピックアップが搭載されている。

アルニコVは高出力で元気の良いピックアップで,ハウリングを起こしやすいが,力強く粘り強く野性的。それに比較してスピネックスはよく言えば優等生的,悪く言えば大人しすぎて面白くない。ジャズやフュージョンに 使うギターに載せるのならまだ分かるが,レスポールというロックギターに搭載したのは当時としてはちょっと失敗だったと思う。

しかし,それ以前の問題で,このような消費者を欺くギターが企画されたこと自体がヤマハ社史の汚点のように私は感じる。





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