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1980年前後製 YAMAHA SL-800S OS




カタログ上このギターのカラーはOS(オイルステイン)と呼ばれている。SL-800Sはいわゆる『アダルト』なマーケティングで企画されたようで,若向けのチェリーサンバーストモデルの設定がない。これは明らかにミスマーケティングだ。

ギターを集め始めた当初,私の興味の中心はトラ杢などの外見的な美しさに偏っていた。その理由のひとつとして実際にアンプを通して弾く機会が少なかったこともある。しかし,最近Toneport UX2を購入して積極的に音を出すようになってからはアンプを通した音に対す興味が格段に強まっている。そのような変化の中にあって昨今感じるのは, 1985年頃までのTokai LS-60,1982〜87年頃のFernandes Burny RLG-50,そしてこのSL-800Sの素性の良さだ。ハードメイプル2ピースのプレーントップ,バックは2(〜3)ピースのマホガニー単板,この二つの材がしっかりしていれば音が悪いはずがない。このなかではTokaiが一番高値で取引されている。
Burny RLG-50とYAMAHA SL-800Sは4万円前後,お値頃だ。

ヤマハの量産ギター全般に言えることだが,個々の楽器については実用性,つまり
使い勝手や耐久性を優先し,製品全体としては製品間の品質にばらつきをできるだけ少ないようにしていることが窺える。 ばらつきのない品質を目指した結果,目立って悪い個体もなければ,白眉の個体もなかなか見あたらない。いわば劣等生もいなければずば抜けた優等生もいない都市部の中堅進学校的なギターが生産されてしまった。そういった理由でヤマハのギターは同じ機種を何台も集めるようなコレクションには向いていないと云えるのかもしれない。しかし実際に 弾いてみるとすると個々の個体はそれぞれ個性を持っている。確かに他のメーカーにギターと比較すると個性の幅は狭いかもしれないが,外見が殆ど同一でも音が違うというのは面白いところだ。

この早期SLシリーズは30年近くも昔のものでありながら古さがそれほど感じられない,塗装が強固なのか,あるいは塗料に含まれる 色素の 安定性が高いのか,退色しにくいのだ。皮肉にもそれがこの時期のヤマハのビンテージギターの人気が低い理由にもなっているように感じる。やはり物というものは時間と共に古くなって味が出てくるというのが自然であり, それが懐古や憧憬を生み出すのだが,この時期以上のヤマハのギターはどうもそれが弱い。新しいまま変化しないプラスチックの固まりのような,変わらない物が持つある種の不気味さを放ってし まう。いつまでも若く見えるヤツは
クラス会で『昔と変わらないね』と笑顔で話しかけられながら実は皆に不気味がられているのだ。

でも,私個人はヤマハのギターは結構好きである。太めのネックは指板上で指を動かし易く,ハイフレットでの高いプレイヤ ビリティーを発揮する。また,ネックを含めた高いボディー剛性が生み出すロングサスティーンも魅力的。この個体はフロントとリアの音の性質が両極端で,レスポール特有の音の芯を覆う『衣(ころも)』が薄く,ヤマハ的な独特さがある。フロントは音が埋まるほどのウーマントーンで,リアはちょっと耳障りなほどトレブルが強い。そしてなんと言ってもミッドレンジが痩せている。

音の問題はおいても最高グレードなのになんという威厳のないギターだろう。下位グレードと一見では見分けがつかないというのはなんとかして欲しかった。他のメーカーのレスポールならトップの木目やオーバーフレットバインディングの有無によってグレードがある程度分かるが,ヤマハにはこれが通用しない。この外観で8万円じゃ買わないのが普通だが,『有名メーカーの最上位機種』という肩書きは強いようで,それなりに球数は出たようである。状態の良い個体が多いのはそのような肩書きを重視する保守的なプレイヤーに使われていたからだろう。



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