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死刑 悩み深き森/千葉景子さん「執行の署名は私なりの小石」 |
| 朝日新聞2010/11/20Sat. |
| 死刑執行命令書に署名するかどうか。そうしない道はあったと思います。でもやっぱり、ただ「やりませんでした」では、死刑制度の是非をめぐる議論は消え入ってしまうのではないかと思ったのです。 法務大臣にご指名頂いて、受けるときに最初に考えました。必ずつきつけられてくる問題だろうと。 でも、国会開会中は政治とカネや指揮権、取り調べの可視化の問題などがあり、大きな問題に踏み込むのは、なかなかしにくかった。選挙の時は、色々な集まりで「廃止論をやめてほしい」といった声も多かった。非常に目に見えない雰囲気、というか。それを何かの理由にすることはないが、そういうことは正直言ってありました。 選挙に落ちてしまって、このまま私も離任、というところもなきにしもあらずでしたが、区切りまでという話になった。じゃあその中で、私が何かやっぱりやる必要があるだろうな、というのが自分の流れかなと。 法務官僚の説得に折れたというわけではありません。そういう方がわかりやすいですが。ただ、そういう見方を「ひどいなあ」とは思いません。 これは私の矛盾ですが、過去に執行された時は国会議員として「なぜやるんですか」「廃止の方向で行くべきじゃないですか」と当時の法相などに申し上げたのも事実です。しかし考えてみると、結局は国会として十分な議論と何らかの法案をまとめる、というところまで行っていない。どこかで本格的に議論をもう一度打ち立てていくことがないといけないのかなと。 執行と、議論を始めることは、セットじゃない。だけど、(死刑)廃止を言っていた人間が、執行することもなく議論しましょう、となると、「廃止論の流れを作ることだ」という風につながりやすいところはある。私は廃止論なんだと言って一直線で行くというのも確かに1つの道ではあるかもしれないのですが、それによって逆のとんでもない存続論が非常に強くわき起っていく、というのも感じます。 被害者に光を当てる流れがどんどん強まっている。被害者を大事にするのはもちろん否定しませんが、国会などが、ずっと忘れることなく議論をし、被害者のことも含めて、きちっと流れを作っていく、そういう場になっていく必要があると思います。 法務省内でも両論あって、内心ではどちらかというと廃止論の人もいる。「これからは廃止の方向に行かざるを得ないんじゃないかと思うが、今ただちには難しい」という話をしたりしていました。 (死刑廃止をしたフランスなどと比べて)日本では、司法や刑罰に関心を持つ人が考えているだけで、時の政権なり、トップリーダーがどういう意見を持っているかが明確ではない。だから、これまでも、その時の法相がやった、やらない、という問題になってしまっているように思います。 署名後、死刑執行に立会いました。死刑に肯定的な気持ちになることは、やっぱりないです。厳粛だとよく言いますよね。厳粛・・・厳粛・・・。ああいうものを厳粛というんだろうか。皆さわりたくない、やりたくない、そういうものを厳粛さみたいなものをもって、なんとか気持ちを肯定させている。えらくあっけないといえばあっけない。でも何か、とってもこう、美しくないというか、何か醜悪というか、でも形の上では厳粛。そこのなんとも落差というか、ある意味で自己嫌悪みたいなものもありました。 自分が立ち会っているってことはいったいなんなんだと。最後の責任者、という整理はつかないことはないが、自分の中で自分を責めるものがあって。いろんな理屈はあっても、国の権力をもって、あの人の命をそこで絶つ、ということはできるんだろうか、というのは改めて感じました。 そう感じるだろうということは、まったくわからなかったわけではありませんが、やっぱり何となく、観念的に整理していたんです。ただ現実を見ると、命という究極なものについて、国という抽象的なものをもって奪うことの残酷さ、醜悪さを実感したような気がします。うまく整理できませんが。死刑廃止の考えが変わったということはありません。今後どうしたらいいのかという自分の活動の方向は、まだ手探りの状態です。 (執行の場面の)記憶は、自分の中で薄れさせてはいけないという意識が強いです。ただ、執行後のことはあまり記憶がはっきりしていない。現実から違うところに自分がいるような状態だったんじゃないかと。 議論はみんなに引き継いでもらいたい。スタートはしたので、今後も続けて議論して頂ければいいのかなと。 裁判員裁判での死刑判決でも、裁判長が控訴を勧めました。死刑については二重、三重に考えてもらわなければいけないという悩みだったのかなあと思いもします。制度導入時にあまり深く論じられませんでしたが、死刑を前提にするのであれば、死刑判決は全員一致を要件にすべきではないか。 (署名したことについては)どう言おうとも、自己弁護みたいになるところはあると思うんです。私一人でたいそうなことができる人間でもない。思想家でも何でもない。死刑という問題について一つ、小石を投じることはできるかもしれない。こういう役目をもらった意味、私なりの遂行の仕方として何ができるだろうか。そういうことかもしれません。(聞き手・山口進) |
千葉景子氏 法相在任中の記者会見 |
法務大臣臨時記者会見の概要 平成22年7月28日(水) 本日,私の命令の下に,篠澤一男,尾形英紀の2名の死刑を執行しました。この2名に関する犯罪事実の概略を申し上げますと,まず篠澤一男については,宝飾品店の店員を殺害して,宝飾品を強取しようと企て,同店店長ら6名の女性被害者に対し,その身体等にガソリンを散布するなどして,ライターで火を放ち,同店を全焼させるとともに,女性被害者6名全員を火傷死又は焼死させて殺害し,宝飾品を奪った,強盗殺人,現住建造物等放火事件です。尾形英紀については,自己の交際相手と肉体関係を持とうとしたのではないかと男性被害者を問い詰めたものの,これを認めないことに激高し,その背部,腹部を数回突き刺すなどして男性被害者を殺害し,さらにその状況を目撃するなどした女性被害者3名を失踪を装って殺害するため,車で連れ去った上,同女性被害者3名の頸部をタオル又はビニールロープで締め付け,うち1名に対しては更にその側胸部を包丁で多数回突き刺すなどして,女性被害者のうち1名を殺害し,2名に重傷を負わせた,殺人,殺人未遂事件です。このようにいずれの事件も大変残忍な事案でもあり,それぞれの被害者の御遺族の方々にとっても大変無念な事件であったと思います。そして当然のことではありますが,いずれの事件も裁判所において,十分な審理を経た上で,最終的に死刑が確定したものです。以上のような事実を踏まえ,慎重に検討させていただいた上で,死刑の執行を命令した次第です。今回の死刑の執行に当たりまして,私は自らが命令した執行ですので,それをきちっと見届けることも私の責任だと考え,本日の執行に立ち会ってまいりました。死刑の執行は適切に行われ,私自身,自らの目でそれを確認させていただき,改めて死刑について深く考えさせられるとともに,死刑に関する根本からの議論が必要だということを改めて強く感じました。そこで,今後の死刑の在り方について検討するために法務省内に勉強会を立ち上げることにします。私自身の下,法務省内の関係部局等によって構成することとしますが,開かれた場で幅広く外部の様々な方から御意見をお聞きをしたいと,御議論に加わっていただきたいと考えています。この勉強会はあらかじめ結論を決めて行うものではありませんが,死刑制度の存廃を含めた,死刑制度の在り方等を検討することを考えています。そして裁判員裁判によって刑事司法に対する国民の関心,あるいは自らが裁判で判断をされると,こういう責任を国民の皆様も負うことになっているという状況の中で,この勉強会の成果を公表し,死刑の在り方について,より広く国民的な議論が行われていく契機にしたいと考えています。また,刑場は厳粛な死刑執行の場ですので,本来一般の公開にはなじまないという指摘もあります。しかし,今述べたような,国民的な議論に資する観点から,今回,東京拘置所において,マスメディアの取材の機会を設けるよう私から今指示をしたところです。近くそのような機会を設けさせていただくつもりです。 死刑執行に関する質疑 Q:26日から民間人としての大臣となられました。この度の選挙は落選だったのですが,その際,これまでに行われてきた法務行政について民意の理解は得られなかったという指摘もありますが,このタイミングで死刑を執行された理由を改めてお願いします。 A:これは時間をかけて検討し,そしてまた問題がないかどうかを精査をさせていただき,その結果,このような時期になったということです。 Q:死刑執行のタイミングと御自身の選挙との関係がやはりあったと理解してよろしいですか。 A:全くそれはありません。それ以前から様々な検討をさせていただいていました。 Q:国民的議論については,昨日の会見でも具体的な行動についてはなかなか知恵がないとおっしゃっていて,引き続き検討をしていくというようなお話だったのですが,なぜ執行してから勉強会を立ち上げるなどの具体的な行動を起こすということになったのでしょうか。それ以前に国民的議論を深めようという行動なり努力というのはされなかったのでしょうか。 A:これも,これまでも申し上げてまいりましたように,どのような形で行えばいいのか,私なりに考え続けてまいりました。その一つの結果です。 Q:今日までの間に国民的な議論は,結局起こされなかったと思うのですけれども,いかがでしょうか。 A:これまでの間は,なかなかそこまで私も至ることができなかったのは確かです。今後,是非私たちも正面から議論させていただき,そして,それを受け止めて国民の皆様にも様々な議論の状況を御提供し,それに基づいた議論を様々な場で展開をしていただくことを願っています。 Q:死刑の執行に法務大臣が立ち会うのは今回が初めてのことですか。 A:分かりませんが,多分そうではないだろうかと思います。 Q:立ち会ったときの率直な心境とはどういうものだったのですか。 A:私はあくまでも指揮命令をした者として,自分の指揮命令をきちっと確認をするということで立ち会わせていただいたと,これに尽きることです。 Q:死刑の執行と勉強会の立ち上げというのはセットでなければならなかったのですか。執行しなくても立ち上げること,議論をすることはできたと思うのですけれども。 A:別にセットで考えたわけではありません。 Q:たまたま一緒になっているという,そういう理解でよろしいですか。 A:それで結構です。 Q:大臣は,参議院議員として,大臣就任前は死刑廃止を求める活動に一生懸命取り組んでこられたと思いますが,今回,死刑廃止を求める御自身の信念を曲げることをされたわけですが,信念を曲げて署名したことについて,心境をといいますか,その辺をお願いします。 A:私も死刑の問題について,様々な議論の下で廃止をするという方向があれば,それは一つの方向性だろうと,そのために私もいろいろな議論に参加をしてきました。これからも多くの皆様との議論の中で,廃止という方向が出れば,それはまた一つの国民的な回答だろうというふうに思います。そういう意味では,決して私が何か考え方を異にするということではありません。これまでも,方向としてはそういうことがこれから求められていくのだろうというふうに考えていましたけれども,法務大臣としての職責が定められているということを承知をしながら大臣職を務めさせていただいてきたということです。 Q:これまで慎重に検討されるということをおっしゃってきて,今回執行を決めたという一番の理由は何なのでしょうか。 A:これは様々な要件,あるいは状況,こういうものを,この間,検討させていただいてきた,その結果だということです。 Q:具体的には。 A:いろいろな要素があります。 Q:今日,二人の死刑の執行を御覧になったということでよろしいですか。 A:はい。それぞれ立ち会わせていただきました。 Q:順番は,どういう順番でしょうか。 A:申し上げたとおりです。 Q:残りの死刑確定者は107人ということでよろしいでしょうか。 A:現在107人です。 Q:今後勉強会を立ち上げて,議論を深めるということですが,その議論である程度の結果が出るまで,また次の執行というものは考えないということなのでしょうか。 A:今それを申し上げることはできません。 Q:野党の一部に,大臣の落選後から,問責決議案を出そうという意見もありますけれども,9月の代表選後に辞めることが分かっている大臣がこのタイミングで死刑執行を行ったことについて,問責決議案を出すという意見もある中で,このタイミングで行ったことによる影響といいますか,それからそういう政治的な動きへの影響など,それが出された場合の対応をお聞かせください。 A:今回のことはこれまで検討をさせていただき,そしてその結果として執行に至ったという,これだけです。 Q:勉強会についてなのですが,大臣が議論するのでしたら,大臣が在職する間に日程の目途や,あるいは方向性を出してもらいたいという御意思はあるのでしょうか。 A:そんなに簡単に私は結論が出るとはなかなか思いません。ただ,やって何にもならないというようなことがあってはならないと思いますので,そこはできるだけ,精力的に,そしてまたいろいろな御意見も聞き,あるいは発信をし,そして議論を進めていかなければならないというふうに思います。 Q:本日の死刑執行に立ち会われて,感想というのは難しいと思いますけれども,驚かれたこととかおかしいと思ったこととか,想像と違っていたこととか,何か一つでもございませんでしょうか。 A:執行については,個別な私のコメントは差し控えさせていただきます。 Q:本日の執行に至ったというのが,予算委員会や問責決議案が参議院で出されたりということについて,批判をかわすといった意味合いはなかったのでしょうか。 A:全くありません。 Q:選挙前から検討をされていたということですけれども,勉強会はまだなかったのですから,検討というのは,省内で大臣を含めてどのような形で検討されたのか具体的にお願いします。 A:当然のことながら,記録を精査する,あるいは今の実情などの報告をもらう等々の検討を続けてきたということです。 (以上) 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年7月30日(金) 本日は,入国管理局の収容施設に収容されている外国人について,仮放免の必要性・相当性を一定期間ごとに検証することとしたことを御報告します。(略) 死刑執行等に関する質疑 Q:先日,大臣が命じた死刑執行に関して,先日の会見で勉強会を開かれるということと刑場公開を指示されたということを発言されました。それについてのタイムスケジュール的なものをお考えでしたら教えていただけますでしょうか。 A:勉強会の立ち上げ,それから刑場の公開,取材につきましても8月中には実施できるようにしたいと,今,指示をしているところです。 Q:勉強会の構成員につきまして,先般の記者会見で省内の関係部局の職員だけではなくて,外部の有識者の方の意見もお聴きしたいという話がありました。構成員について内部や外部の方というのは,具体的にどのような方を考えているか教えていただけますでしょうか。 A:今,詳細については検討を続けているところですが,勉強会そのものは,内部のというか,それぞれの関係部局の職員を中心に,私が座長をさせていただいて,進めていくことを想定しています。ただ,先般も申し上げたように,できるだけというか原則,様々な議論の経過や成果は公表させていただきますし,それからいろいろな外部の皆様にも御意見を御提供いただくというようなことは,公開の場で行うように私は想定しています。 Q:先般,死刑を執行した2人の資料について,いつごろから御検討を始められたかについてお願いします。 A:これは,どのようなときでも変わらないことだと思いますけれども,個別の案件の検討経過というのは,お話をするものではないというふうに考えています。 Q:検討を始められたタイミングがなぜそのタイミングなのかということについてお願いします。 A:検討を始めた時期がどういうタイミングとかそういう問題ではありません。突然いつからとかそういうことではないというふうに御理解いただければと思います。 Q:資料の御検討とか御判断をする過程でどなたか相談された方はいらっしゃいましたでしょうか。 A:これも申し上げるべきものではありませんが,少なくとも法務大臣としての職務の責任を全て私が負って判断をするというものであろうというふうに思っています。 Q:執行を決定するにあたり,御決断の一番大きな要因となったものが何かありますでしょうか。国民の声などは考慮に入れられたのかということもお願いします。 A:これは今申し上げましたことと変わるものではありませんが,法務大臣として職責をどう果たしていくべきなのかということを考え,そして様々な検討,あるいは精査をさせていただいて,結果に至ったということです。 Q:今回は執行の発表と同時に,先ほどの質問に出たように勉強会の立ち上げと,刑場の公開の御指示の話もありましたけれども,同じ民主党の村越祐民衆議院議員が冷房と暖房を一緒につけるようなものだというふうな批判をしたり,今までの大臣の死刑に対してとられてきた姿勢からすると,やや分かりにくいのではないかという印象を与えているところも事実としてあるのではないかと思うのですが,そもそも大臣としては,現時点で死刑制度についてはどうあるべきだと考えていらっしゃいますか。 A:これはいろいろな御意見があることは私もきちっと受け止めさせていただきたいと思っています。死刑制度につきましては,是非これから多くの皆様に御議論をしていただいて,私自身はもともと廃止をするというのも大きな日本国としての方向性の一つだろうというふうには考えてまいりました。それは,決して変わっているものではありません。 Q:勉強会と刑場の公開は,かなり唐突な話だと,かなりそういう意見が出ているのですが,大臣は就任の会見以来,死刑に対して慎重な姿勢をとっていたと思うのですけれども,こういう勉強会とか刑場の公開について,なぜこのタイミングで発言されたのかということが私も理解できないのですが,その辺を詳しく説明していただけませんか。 A:これも,この間,死刑について,本当にどうあるべきか,あるいはどのようにいろいろな皆様に御議論いただけるものだろうかと,私も考え続けてまいりました。そして,その結果として,何とかまずは刑場の公開をして一つの議論の契機にしていただけるものではないかと,こういうふうにも考えたところです。これは決して特別なタイミングを見たとか,そういうことではありません。ずっといろいろ考え続けてきたことの結果ということです。 Q:勉強会について,死刑廃止を推進する議員連盟など特に死刑を反対する方々からは,勉強会で議論するのは死刑の執行を停止にして行うべきではないかという意見を言っていますが,そういった意見について,どのようにお考えですか。 A:これはその議論の経過の中で,いろいろ御意見を出していただけることを願っていますが,法務大臣として職務,職責があるということも,この間私もずっと念頭に置かせていただいてきたことです。そのような御意見があるということも私も承知をしていますし,それも一つの大変重要な御提起ではあると思っています。ただ,法的には制度が存続され,そして執行という責任を私も負っているということですので,そういう御意見があるということを今後も十分念頭に置かせていただきたいと思います。 Q:今回の執行についての大臣の御決断にいろいろな見方があると思うのですけれども,大臣になられて,法務官僚に説得されて押し切られたのではないかという見方もありますし,実際そういうふうなニュアンスの報道もあったかと思うのですけれども,死刑の執行というものについて,大臣になられてからお考えを変えられたということ,あるいは率直に言って法務省の官僚に説得されて考え方を変えられたということはあったのでしょうか。 A:それは,私は全く当たっていないと思います。法務大臣を拝命をさせていただくということは当然のことながら,そのような職責を負うことなのだということは,私は当初から,きちっと念頭にありました。 Q:刑場の公開をとりあえず一番最初におっしゃいましたけれども,そのほかにも死刑制度にまつわる情報公開の論点など,いろいろあると思うのですが,死刑確定者の処遇の在り方であるとか具体的な執行方法,絞首刑ですることは分かっているのですけれども,そういったほかの点に関する情報公開についてはどういうふうにお考えですか。 A:そういうこともどういう形でお伝えをすることができるのか,あるいは,私もできるだけ死刑確定者の尊厳を損ねることなく,しかも多くの皆様の真剣な御議論を考え合わせていかなければいけないと思います。そういうことも併せて,この勉強会,それからいろいろな皆様からの御提起,こういうものを是非積極的に,そしてまた精力的に進めていくことが大切だというふうに思っています。 Q:勉強会について一つ確認させていただきたいのですけれども,死刑執行のときの大臣の臨時記者会見では,出来るだけ公開された形でという話があって,今日の会見では経過や結果は出来るだけ公開することが原則で,外部の方から話を聞くときには公開するという形でしたけれども,内部の勉強会そのものを公開する,要は全て議論の場は公開するというお考えはございますか。 A:そこはどういう形で公開というか,それを皆さんにどのようにお伝えをするかということは,できるだけきちんとお伝えできるような形にしたいというふうには思っています。ただ,まずは内部でいろいろな議論というところですので,直接それをオープンな場でということではありませんけれども,そこは,こういう議論をしているということはできるだけお伝えすることを私は考えています。 Q:死刑廃止について,それも大きな方向性の一つだろうと,ただその考えは変わっているものではないという御発言がありましたけれども,死刑を執行したとはいえ,死刑廃止というのはまだ信念としてお持ちだと考えてよろしいのでしょうか。 A:これまでもそうですが,死刑廃止というのは信念というか,そういう社会に歩みが進んでいくことも,日本の社会として一つの大きな行く道ではないかというふうに私はずっと考えていました。そういうことは変わるものではないということです。 Q:国民の大半が死刑制度については是とする意見も多いのですが,それに反してでも死刑制度はやはり廃止しなければいけないというお考えなのでしょうか。 A:私は,いろいろな世論の調査結果というものもあり,あるいはそこになかなか出てこない御意見もあり,これまで本当に十分に向き合ってくることがなかなか出来なかったのではないかというふうに思います。そういう意味では,これからどういう議論が進んでいくか,あるいはそれぞれがこの問題をどう考えていただけるか,そういうものに私は,日本の社会が,そして,日本の政府がどういう方向を見出していくのかと,こういうことになるのではないかと思います。 Q:勉強会については内部で当初は検討するという形になるのですが,死刑の存廃の議論について,法務省内では従前からやってきたということはないのでしょうか。勉強会を突然始めるというのはちょっと腑に落ちないのですけれども,大臣が就任されて以後,死刑の是非については省内でもだれかに意見を聞くとかそういうことは全くなかったのでしょうか。なぜ今ごろ勉強会を始めるのかという,その辺の理解が国民もあまり分からないのではないかなと思うのですけれども。 A:これまでもいろいろな形で,いろいろな場面で論じられてきたというふうには思います。私も御意見をお聞かせいただくような機会が決してないわけではありません。そういう意味では改めてきちっとした論議をやはりしていく必要があるだろうと,私はそう判断させていただいたからです。 Q:裁判員裁判ではこれまで一度も死刑の判断というものを市民がしたケースというのはないのですけれども,今後は凶悪事件で被害者が複数のケースではそういう判断がありえると言われている中で,市民が死刑の判断をする,国の制度として死刑があるのにもかかわらずその責任者である大臣が死刑執行の決断しないということがおかしいという議論もかなりあることを念頭におかれていたのでしょうか。裁判員裁判との関係で考えられたことというのはあるのでしょうか。 A:全くないとは申し上げません。やはり,昨年,市民が裁判員裁判に参加をするということになり,そこで,判断を下さなければいけない,そういう場面も当然ありうるわけでございまして,そういうことについて,やはりできるだけ刑罰の内容というか,そういうことをやはり知っていただく必要があると思います。全く情報が閉ざされたままに判断を下さなければいけないというのは困難なことですから,私もやはり裁判員裁判において,国民の皆様に対してその判断を求める以上は,情報やあるいはそれに対する判断の材料というのでしょうか,そういうものはお示しをしていく,そういうことも必要なことだろうというふうに考えています。 Q:こうした議論を起こす上で,その前提として,法務大臣の職責を果たすという意味での執行をしなければ説得力がないというふうにお考えなのでしょうか。また,勉強会について,今後,大臣が替わられたりすると思うのですけれども,その議論がどのように引き継がれていくのかということについて,現段階ではどのようにお考えでしょうか。 A:最初の御指摘は,私は直接,前提となるとかそういう問題ではないというふうに考えています。議論をするということも私は大変大きな課題であるというふうにずっと考えていましたし,そしてまた,今,制度が存在し,そしてまた大臣としての職責を私も負っているということについても,どのように果たしていくかということについて考えてまいりました。どちらも,私にとってはずっと念頭にあった問題です。それから,勉強会については,これは私の指示の下にスタートをさせていただくということになりますが,私はこれだけの重要な問題について,議論が消えていくとか,途絶えてしまうということがあってはならないし,そういうことにはならないものだというふうに思います。 Q:大臣は今回死刑の執行に立ち会われましたが,なかなか死刑執行においては,高等検察庁の検事であるとか拘置所の職員以外の方で立ち会うケースはほとんどこれまでもなかったと思うのですけれども,今このタイミングで話されるかどうかは別として,今後,死刑を巡る今回の勉強会,あるいは勉強会から派生する議論の中で,御自身が立ち会って御覧になって感じられたこと,あるいは見聞きされたことというのを何らかの形でお話になられたりとか,周囲に伝えていくということはお考えの中にあるのでしょうか。 A:必要とされれば,それから,適切な形があるのであれば,そこはまた考えていかなければいけないというふうに思います。 Q:死刑の執行のときに様々な要件や状況を考慮して決めたとおっしゃったのですが,そういうこととは直接関係はないのですけれども,野党から,大臣が落選後の執行であったことから,非常に批判が相次いでいます。今日から臨時国会が始まるのですけれども,今回の執行したという事実が菅政権の政権運営にとってはプラスになるというふうにお考えか,マイナスになるというふうにお考えか,その辺りはどういうふうに感じていますか。 A:私は,それをコメントする立場ではありません。あくまでも法務大臣としての職責に基づいて様々な問題を慎重に考えてここに至ったと,それだけです。 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年8月20日(金) 刑場の公開及び死刑の在り方についての勉強会に関する質疑 Q:今月末までに刑場の公開ということで,準備されていると思うのですけれど,改めてなのですが,刑場を公開するということによって,どういった効果をもたらしたいと思っていらっしゃるのか,その辺をお聞かせください。 A:皆様に8月中には刑場を公開するということでお話をさせていただいていますので,現在,鋭意準備をさせていただいているということです。必ず8月中には公開,取材をいただくということにしたいと思っています。具体的にこういう効果を上げるためにということを考えているわけではありません。ただ,やはりいろいろな議論をいただく,あるいは裁判員裁判などに際しても,やはりいろいろな判断をいただいたり,刑場の公開ということだけでよろしいというわけではありませんけれども,やはり情報を少しでもきちっと皆様にお伝えをして,そして様々な判断や御議論の一つの素材といいましょうか,その判断の一つの基礎にしていただくと,こういうことが大事であろうというふうに思いますので,そういう意味で,いろいろな意味での情報を適切に提供させていただく,公開をするということのまず一つだというふうに私は考えているところです。 Q:今月中に2回目の死刑の在り方についての勉強会を計画されているということなのですが,改めてなのですが,勉強会を大臣としてどういった方向に向かわせたいと思っているのでしょうか。 A:この勉強会,まずはいろいろな皆様が各場面で,あるいはそれぞれの場所で死刑や刑罰についての御議論をいただく一つの契機となればということで,省内で勉強,そして論点などを整理をして皆様にもそういう意味で御提供させていただこうということです。まず今の議論のそれぞれの論点等々,整理をさせていただこうというのが2回目の勉強会の大きなポイントであろうかというふうに思っています。今後いろいろな御意見を持つ外部の皆様からの意見をお聞きをするという場をできるだけこれも早く,9月に入りましてから設けたいと思っていますし,そういうことを一つの契機にしながら,国民的な,あるいはそれぞれの場所での議論が少しでも活発になっていただくことを私も期待をするところです。その勉強会をさらにどのような形でということにつきましては,この勉強会の2回目,3回目の議論を踏まえながら,今後の方向性を詰めていきたいと思っています。 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年8月27日(金 今日は,定例の記者会見をさせていただく日ですけれども,いろいろな会議の都合あるいは,ちょっと新しい報告ということもあり,このような時間になりました。そしてまたいろいろな多くの皆様に出席いただきありがとうございます。まずは私の方から冒頭申し上げさせていただきます。本日,かねてより申し上げていましたとおり,東京拘置所の刑場につきまして,マスメディアの方々に対する公開及び説明の機会を設けさせていただくこととなりました。具体的には,本日の午前中に,東京拘置所におきまして,マスメディア関係者20数名の方を刑場に実際に立ち入って取材をしていただいたところです。また,このあと午後4時から,当省におきまして,事務当局から,刑場の写真を公表させていただくとともに,死刑の執行方法,死刑確定者の日常生活の概要等についての説明を行わせていただくこととしています。今回の刑場の公開及び説明の在り方については,死刑制度についての国民的な議論あるいは,様々な行政の情報をできる限り明らかにしていくことを念頭に置かせていただきながら,しかし一方で,死刑確定者やその関係者,あるいは地域社会等に与える影響,また,死刑執行にあたっている刑務官の心情等を配慮し,東京拘置所の管理運営,保安警備上の制約の中で,可能な限りこのような情報提供,そして取材の機会を設けさせていただいた次第です。裁判員裁判によって刑事司法に対する国民の関心も高まっている昨今です。今回の取材の機会の提供が,死刑制度についての国民的議論の一つの情報,いろいろと検討をいただく一つの材料となるものではないかと考えているところです。以上,刑場について取材をいただきましたことについて御報告をさせていただいた次第です。 刑場の公開に関する質疑 Q:本日刑場を公開されたということで,大臣として今後どういった議論を期待されているのか,また,どういった方向性の議論を想定されているのでしょうか。 A:方向性というのを私から申し上げるものではないというふうに思っています。この刑場の公開,こういった形でいろいろな皆様に考えていただく,それから今省内でまずは勉強会を立ち上げていますけども,そういう議論やそこで提供される資料などをでき得る限り提供させていただきながら,どういう形で国民的な議論の場が出来ていくのか,公開というような場もあるでしょうが,私どもが何か参考になるような場を作る形になるのか,いろいろな形で議論の一つの材料といいましょうか,そういう契機になればと考えているところです。そういう意味では今日取材いただいたこと,これだけが何か特段大きな議論の材料ということではありませんけども,やはりいろいろな情報をきちっと得て議論いただくことが大事だと思いますので,その一つの材料だというふうに考えています。 Q:これまでに何度かフリーランスの記者にも刑場の公開が行われるのかということについて質問させていただきました。その度に大臣は,フリーランスの方にも公開できるように進めていくと説明して来られましたが,本日の刑場公開は午前中に行われたようで,その際に公開されたメディアなんですけれども,事前に選別をされたと広報室の方から伺っております。その選別の方法なんですけれども,どのような形で行われたのか,また,選別の方法について後から検証可能なように録画などで,しっかりと証拠が残るような形でされたのかどうか教えてください。 A:今回の刑場の公開については,基本的には実際の取材をいただく刑場の大きさとか,あるいは保安上の様々な制約,そういう中で数等の制約をかけざるをえないというのがありました。その中でフリーランスの記者の皆さんを排除しようという趣旨ではなく,その限られた数の中で取材をいただくということを基準にしながら,いくつかのマスメディアの皆さんに取材いただいたということです。あくまでも物理的なあるいは保安上等々の制約の下に,まずは少なくとも取材をいただいてそういった情報を様々御提供いただこうという趣旨ですので,それ以上の意図ということは全くありません。 Q:選別の基準というのは,どのようなところに置いておられたのでしょうか。 A:いつも取材をいただくメディアの皆さんを基本にしながら,更にプラスをすることができ得るのであれば,それはもちろん多くの皆さんが取材を求めておられるということは,私も承知をしていますので,そこを選別といいますか,どこまで数を制約するかということを事務方に指示をして,そしてそこで一定の枠を作らせていただいたということです。 Q:今の質問に関連して,公開の対象についてなのですが,恣意的に最初から決めていたわけではないという話があったのですが,結果論として私が取材した限り,海外メディアはどこも取材が出来ていない,そういう意味で,海外に対し一切情報公開をしていないというふうにも受け止められかねないと思うのですが,その点についてコメントがあればお願いします。 A:繰り返しになりますけれども,海外に情報公開をしないとか,あるいは特定の方に情報は提供しないと,こういう趣旨は全くありません。そういう意味では,この後,取材をいただいた皆さんと同じ写真の公表,あるいは今の執行の実情等々の情報の提供はさせていただきますので,特段海外に情報を提供しないとか,あるいは閉ざすという趣旨や考え方は持ってはいません。 Q:一連の質問と重なるところもあるのですが,今のお答えですとフリーランスであるとか海外メディア,それからネットメディアですが,そういったメディアを排除する趣旨ではないということですよね。今回その数を制限した理由というのが,数に制約があるとか保安上の理由があるということですよね。そういうことからすると,また別途機会を設けていただければ両方の趣旨を満たせると思うのですが,また次回,今回の公開に入れなかったメディアに対し公開するという意向はございませんか。 A:現時点では,まずは今日このような取材をいただくというところまで私どもも検討させていただいたということです。これから勉強会等を含めて,どのような形で情報を提供させていただくのか等々もいろいろな議論がこれから出て,あるいはさせていただくということになろうと思いますので,今の段階では,まずは今日の取材をいただくということをもって,一つの情報提供の機会を作ったということです。 Q:今日の公開については,刑場の位置については明らかにされませんでした。それからロープは取り付けていませんでした。踏み台についても開閉しなかった。それから階下の階段を下りていく場所については立入禁止にされ公開されていなかった。階下については大臣も入っていなかったという説明があったのですが,ここも含めて今回公開の在り方について,国民的議論を得るには今回の公開が十分だったとお考えになるのかどうか,それから先ほども出ましたけどれも,刑場の公開というのは今回限りではなく,今後も継続されるというお考えがあるのでしょうか。 A:今回の取材,そして公開が十分だったかどうかについては,これからまたいろいろな検証をしたり,あるいはいろいろな御意見を頂戴するということになるだろうと思います。私は今日の場をまずは作らせていただこうということで今日に至ったということです。今後ですけれども,先ほど申し上げたように情報の提供の仕方,あるいは様々な論議にどういうことが必要なのかということがあるだろうと思いますので,そういう中を通して,様々な議論を少しさせていただかなければならないと思っています。 Q:大臣御自身としては,今日の公開は十分だったのか,あるいはもう少し踏み込みたかったけれどもできなかったのか,いかがでしょうか。 A:私は,まず今日の公開が,一つの私なりの情報の提供の場を作ったというふうに認識をしています。 Q:不十分ではなかったということでしょうか。 A:申し上げましたように,まず一つ情報の提供,そして取材いただく場を作ることができたという認識です。 Q:大臣が国民的な議論の必要性をなぜ感じたのかというところをお話いただけないでしょうか。 A:これはやはり日本の刑罰あるいは刑事司法,これはとりわけ裁判員制度というものが導入されることによりまして,多くの皆さんに大変深い関心を持っていただくようなそういう状況になってきたというふうに思います。そういう中で裁判員の皆さんにも,最終的な刑罰に対する判断をしていただくということにもなるわけで,やはりどういう刑罰の在り方がいいのかという議論をする時期なのではないかということです。それから,また国際的な様々な流れや御指摘もあります。しかし,やはり被害を受けた方とか国民の厳しい処罰を求める声等々もあり,そういうものも十分冷静に議論を交わしながら皆さんが納得できる何らかの方向を議論していく,そういうときではないかなと私は考えたものです。 Q:今のお話の中で,国民的議論のための情報提供ということで,いろいろと今回の刑場の公開について,公開に先立っていろいろな人が意見を言ってると思うのですけれども,その中で単なる刑場の公開だけでは不十分である。例えば死刑の執行対象者の選定方法であるとか,選定理由であるとか,あるいは確定死刑囚の処遇の在り方とか,そういったことについて情報公開をやらなければ不十分であるとか,いろいろな議論が出ていると思うのですけど,そういった議論については,大臣として勉強会の中で考えられていると思うのですが,具体的にどういった形で議論を進めていくお考えなのでしょうか。 A:今,御指摘いただいていますように,刑場の情報を取材していただいたり公開をさせていただいたりというような議論だけが情報だということを,私も決して認識しているわけではありません。執行の在り方とか処遇の在り方とか,そういった問題もあるでしょうし,様々な情報を可能な限り私どもから提供したり,勉強会を通じながらどういうことを皆さんにお知らせし御議論いただくことが大事なのかということも,これから整理をしていかなければいけないと考えています。 Q:私は本日の午前中の刑場の公開には参加できませんでした。ちょっとお聞きしたいのは,これまで何度か,他の大臣のときに刑場が公開されていると思うのですけども,そのときと違う点,つまり千葉大臣の独自色を出せたというものがありますでしょうか。 A:私も正確ではないのですけれども,このような形で取材をいただくような公開というのは,これまでなかったと承知をしています。 Q:67年に一度新聞記者20人程度に公開されていると思うのですけれども。 A:他の大臣の下での公開であれば私も正確に承知をしていませんので,もし必要であれば調べてまた後ほどでも報告できるかと思います。ただ,例えば国会の正式な調査ということで視察をされたというのは何回かあろうかというふうには承知しています。 Q:外国メディアに情報を提供していただくにはいろいろな形があります。刑場取材に参加したそのメディアから情報を提供していただくといった形もあるのですけれども,それも今はいろいろな理由で禁止されています。現状は,おそらく法務省の広報室や記者クラブの指示じゃないのかという疑いがあるのですけれども,もしそれが事実であるならこの場で説明していただきたいのですが。 A:ちょっとそれについては理解が齟齬しているのかなとは思いますが,法務省としては,この後,全ての皆さんに写真等の公開はさせていただくことにしています。 Q:ビデオも含めてでしょうか。 A:ビデオについてはこちらから提供させていただくということは考えていません。 Q:ビデオを持っている社からの提供を禁止するということはないですか。 A:こちらで何か規制をさせていただくということはしていませんし,するつもりはありません。 Q:今回の刑場の公開に関しての手続的なところなのですが,私を含めフリーランスの記者は,事前に法務省の方にこの刑場の公開についてお問い合わせしたのですが,その際には昨日の時点では何もお知らせできる状況にはありません。メールアドレスを登録すればメールで状況をお伝えしますのでお待ちくださいという返事でした。そうしましたら私のところだと今日10時56分にそのメールが来まして,それは今日の午後4時からの刑場の説明会の案内でした。ただ,実際には刑場の公開は,今日の午前中に実施されていたと。仮に見れないにしても事前にこういう理由で見ることはできませんと,そういう形で御連絡いただければ良かったのかなと思うのですが,そのような手続について,法務省というのは英語でいうと,ミニストリー・オブ・ジャスティスというのですが,正義という観点からどのようにお考えになりますか。 A:いずれにしましても,今回これまで取材をいただけなかったそういう中で取材をいただくという,公開という第一歩をさせていただいたということです。先ほどから申し上げますようにいろいろな保安上の問題も含めてなかなか事前にお知らせをし得ないという制約が大変あるということも御理解をいただければと思います。ただ,御指摘のことについては,私も一つの大事な御意見だと受け止めさせていただきたいと思います。 Q:先ほどから大臣は,フリーランスの記者を排除しようという趣旨ではなくて,限られた数の中で取材をいただくということでしたけれども,ただ実際には実はもう今日公開しましたという事後報告の形でしか我々には情報が知らされなかったわけですけれども,これは法の下の平等をうたった憲法14条違反になるとはお考えにはなりませんでしょうか。 A:私は憲法14条違反というふうには考えませんが,ただ,先ほどから御指摘いただいているように,これはあくまでも排除しようとか何か差別をしようということはないにしても,いろいろ皆様が大変関心をお持ちいただいて,ぜひ取材をということについて御意見をいただいたことについては,大変私も貴重な御指摘だと思いますので受け止めさせていただきたいと思います。 Q:続けてで申し訳ないのですけれども,知る権利を保障するということであれば,今後の刑場の公開への取組というのは法務省として続けていっていただけると,この場で大臣にお約束いただけると考えてよろしいのでしょうか。 A:これは先ほど申し上げましたように,まずは私の指示をもって今日の公開,取材という形となりました。今後どのような情報の公開あるいは提供,そして多くの皆さんの知る権利ということも一つの考え方ですけれども,そういうものに対応することができるかということも,今後,様々な勉強会とかあるいは議論をさせていただきながら,また検討をさせていただく問題だというふうに思っています。 Q:今日のことではなくて,先月大臣が死刑に立ち会ったときのことについて伺いたいことが一点あるのですが,そのときはまだ刑場の図面なども全然私どもメディアもインタビューできてない状態だったので,どこで大臣が立ち会ったかというのは,会見の中では一切御説明がなかったと思うのですが,先月大臣が立ち会ったときは,刑場のガラス越しの立会人の場所から死刑に立ち会ったということでよいかどうか確認させていただきたく思います。 A:それは個別の執行の状況に関わることでもありますので,具体的には控えさせていただきたいと思います。 Q:先ほどの話ですと,大臣が知りうる限りでは刑場を公開したことはないということですね。刑場を公開するということもそうですし,それ以外も死刑に関する情報に関しても日本は情報提供が少ないといろいろなところから指摘があるわけですが,これまでの情報提供の在り方について,情報を提供できなかった理由,また刑場を公開できなかった理由があったとしたらどうしてかということと,また,そういった対応を取ってきたことについて大臣御自身はどのようにお考えでしょうか。 A:これはそれぞれ,いろいろな背景,それから社会状況の変化,推移もあると思います。いろいろな理由もある中で,確かに保安上の問題とか,あるいは被害者等々の心情とか,それから執行にあたる職員のいろいろな葛藤とか,いろいろな問題が今でもそれは当然あるものだというふうに私は思います。そういうことに出来るだけ配慮しながらこの間悩んで来られたのではないかというふうにも思いますが,冒頭申し上げましたように,そうは言っても,これだけ関心を持っていただいたり,あるいは裁判員制度という国民全体に刑罰,刑事司法について関わっていただくというような状況も出てきた等々の事情をかんがみて,私なりに一つの判断をさせていただいたということで,これまでのいろいろな背景,経緯があってどういう情報の提供の仕方がいいのか,あるいはそれはやらない方がいいのか,その都度御判断されてきたというふうに思います。 Q:今回の刑場公開は,執行後につり下がった体を刑務官が支えるとされる執行室の下の部屋ですとか,ロープも外されていたり,板の開閉なども行われなかったというふうに認識しています。言ってみれば死刑の残虐性を想起させるような場所については公開されなかったというふうに認識しているのですけれども,それはどういったところに理由があるのですか。改めてお聞かせください。 A:死刑の残虐性がある部分をということではなくして,今回は刑場という場をまずは公開させていただくという基本に立っています。執行そのものにつながるということについては,今回公開というところまでは考えませんでした。これは今後また議論されるのではないかというふうに思います。 Q:千葉大臣はいつ頃から具体的に刑場を公開しようと考えられるようになられたのですか。 A:これは私もこういう任務につかせていただき,あるいはそれ以前等々も含めましてこの刑罰の問題に対して,とりわけ死刑の問題に対してどういうふうに考えていったらいいのか,そして情報をどういう形で皆様が共有するのがいいのか,ある意味ではずっと考えてきた推移の上で,今回に至ったということです。 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年8月31日(火) この度,「再犯防止施策の今後の展開 〜就労・福祉による社会復帰支援を中心として〜」と題する中間取りまとめを行いました。(略) 刑場の公開に関する質疑 Q:8月27日の刑場を一部のマスコミに公開した後の記者会見の質問で,マスコミへの公開は初ではないのではないかという指摘があったのですけれども,その際,必要でしたら調べますというふうに大臣はおっしゃったのですが,マスコミへの公開は初めてという認識は現在も変わりはないのでしょうか。 A:基本的には私はそのように認識をしています。 Q:元毎日新聞記者の勢藤修三さんという方の御著書に「死刑の考現学」という本があるのですけれども,その本の中に田中伊三次法相とともに刑場を訪れた際の記述がありまして,その際には実際に絞縄やハンドルを引いて踏み板を落とすところまで見せているという記述があるのですけれども,それでも初めての公開ということでよろしいでしょうか。 A:今,ちょっとお聞きをしたので確認をしてみたいと思いますが,基本的には皆さんに公開をしたのは初めてだと,ちょっとその経緯は私もよく承知をしておりませんので,そこは改めて必要があらば確認してみたいと思います。 Q:その事実が意図的に隠されていたものだというふうにはお考えになりませんか。 A:まだ事実を私も承知しておりませんし,まだそれはこの場でコメントできる状況ではありません。 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年9月3日(金) 政治と金の問題及び検察審査会に関する質疑 Q:民主党代表選の昨日の討論会で,小沢前幹事長が代表となり総理となった場合に,自らの政治資金をめぐる問題で,検察審査会の起訴相当の議決があれば,憲法75条の規定はありますが,御本人としては訴追に関しては逃げずに同意するという御発言がありました。政治と金をめぐる説明責任が求められる中でこのような発言があったことについて,大臣はどのように受け止めていらっしゃいますか。また,市民の意見が起訴という強制力を持つ現在の検察審査会の制度の在り方について,改めて御見解を伺いたいと思います。(略) 刑場の公開に関する質疑 Q:先日,刑場公開という画期的なことがありました。刑場の公開に関してフリーランスの記者ですとか,ネットメディアもしくは雑誌メディアの記者は一切呼ばれておりません。そういったメディアが参加できなかった理由を大臣から説明いただければと思います。 A:この間も御質問あるいは御指摘をいただきました。私の考え方としてはメディアの皆様,それから様々なフリーランスの皆様も私はそれぞれの立場で取材をいただいたり,対等な形でということが基本だと思っています。ただ,今回は場所の物理的な条件,これが主たる理由ですけれども,それから様々な保安上の問題等をかんがみ,フリーランスの皆様に取材をいただくというところまで至りませんでした。あくまでもこういう物理的,あるいは保安上等の問題によるものでして,基本的な考え方は先ほど申し上げたように,いろいろな取材についてフリーランスの皆様を個別何か差別するとか区別をするというものではないと私は考えています。 Q:今後,もう一回,前回参加したかったけれども参加できなかったというフリーランスとかネットメディア,雑誌の記者に対して刑場を公開するというお考えはありますか。 A:今,死刑問題等に対する勉強会を立ち上げています。御承知のとおり,フリーランスの皆様,あるいはそれ以外の方にも,この問題について真剣に取り組んでいただいていますが,自らにも公開をして欲しいという声は本当に広くありますので,そういう意味では,こういう勉強会におきましても,今後の情報の提供の在り方,あるいは公開ということも含めてですけれども,できる限り情報をどのように,どの範囲で皆様にお伝えをするのがいいのかということも議論をさせていただきたいと思っています。そういう意味では今後の更なる公開ということは,今,私は考えているものではありません。 Q:1967年当時に,田中伊三次法務大臣が新聞記者に東京拘置所の刑場の公開をされたのではないかという質問が今週火曜日の会見でもあったと思うのですけれども,その点について書かれた書籍があるのですが,その件についての調査結果をお聞かせください。 A:御質問いただきまして私も調査をさせました。書籍があるということは私も承知をしていますし,どういうものかということも分かりました。ただ,当時の記録というのでしょうか,そういうものが残されていませんので,どういう事情であったのか,あるいは実際にそういう取材をしていただいたものなのか,全く検証できるものが残っていませんので分かりません。今の段階,実情では,実際どういうことだったのかということを私も分からないというのがお答えです。 Q:それ以上の調査を今からまだ続けていかれるとか,そういうことはないのですか。書類などは残っていないということですか。 A:はい。何しろ四十数年前ですので,当然,当時の職員というのでしょうか,そういう方もほとんどおられませんし,実際になかなかこれ以上調査をするということは私は難しいのではないかと思っています。 Q:仮にここで刑場の公開が行われていたとしたら,今回の公開は初ではなかったということになりますか。 A:何しろどういう状況だったのか,それから公開がされたのか,どうだったのかということが分かりませんので,今と比較しようがありません。 Q:1947年の朝日グラフという雑誌がありまして,その中で4ページにわたって広島刑務所の刑場の写真が16枚掲載されておりますけれども,そういった事実があっても刑場の公開というのは今回が初めてという御認識でいらっしゃいますか。 A:そのお話も今,初めてお聞きしたので,なんとも申し上げようがありませんけれども,この間私が認識をしている,あるいは省内で承知をされている範囲ではこういう形で取材をしていただいた,公開をしたというのは初めてだというふうに認識はしています。ただ,前回も先ほどの書籍に記載されているようなことがあったのではないかというお話があったり,今もまた新しい御指摘をいただきました。そういうことがまだあるのかどうか分かりませんけれども,1947年ということであれば,なかなか実際の検証が困難なのかなというふうには思います。もしそういう事例を他にも何か御承知であればお伝えいただいて,政府全体として本当にどうだったのかと改めて調べてはみたいと思いますが,今から30年,40年前ということになりますと,その記録の保存期間としてもほとんど過ぎているということなどもあり,実際には検証が難しいのではないかなというふうに私は思っています。そういう意味では,私の下でこういう取材をいただいたということが,ある意味では何か一つのスタートということではありますので,初めてのことをやったとかそういうことを何か強調したいと,私自身は思っているわけではありません。そういうことが現実に行われていたのであるとすれば,それもきちっと私も改めて承知をしたいとは思いますが,ただちょっと実際にはどういう事実だったのかというのはなかなか検証できないという状況です。 Q:再度の刑場の公開ということは現時点でどのようにお考えですか。 A:先ほども申し上げましたように,この死刑に係わる様々な情報について,これから少し整理をしたり議論をさせていただいて,そして刑場等の情報の提供の仕方,公開の在り方も少しきちっと整理をしてから皆様に御提起をするものだというふうに思っています。 Q:先ほどの1967年の話なのですけれども,当時の記録を調べてみましたら,1967年の9月1日の産経新聞に,田中伊三次法相が刑場を視察という記述が出てきます。それと,書籍の情報を掛け合わせますと,おそらく1967年の8月後半あたりに刑場が視察されたことは間違いないかと思うので,出来ればそこを重点的にもう一度調べていただけないでしょうか。 A:そこは先ほど申し上げましたとおりで,大臣が視察をされたかどうかということも,なかなか何か記録されているかどうかというのも分かりませんし,そのときに何か取材があったかどうかというのも全く分かりませんので,調べてくださいという話ではありますけれども,難しいことではないかというふうに,私は今感じております。 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年9月7日(火) 死刑の在り方についての勉強会等に関する質疑 Q:9月9日に開かれる死刑の在り方についての勉強会で,今回外部の有識者の方からのヒアリングが行われるということですが,どのような方がどういう立場で御発言されるかという予定について,具体的なところを御紹介いただきたいのですが。 A:第3回目の勉強会を本月9日午後1時30分から予定しています。今回は,これまでいろいろなところで,それぞれ御発言,あるいは,書いておられたり,そういう中で死刑の存置を基本にお考えの方,あるいは廃止を基本にお考えの方,それぞれの立場を明確にしている方を含めて,4名の方からヒアリングをさせていただくという予定です。明治大学名誉教授の菊田幸一先生,全国犯罪被害者の会代表幹事の岡村勲先生,日弁連の副会長の道上明先生,それから元検察官で現在公証人をされておられる本江威憙先生,今回はこの4名の方々からお話を伺うという予定になっています。 Q:死刑の在り方についての勉強会のヒアリングというのは,とりあえず今回1回だけを予定されているのでしょうか。今後も継続する予定ですか。 A:基本的には,私は今後も継続をして,更にいろいろな皆様からの御意見を伺うという予定です。 Q:大臣として今後ヒアリングを行った結果をどういうふうに省内で揉んだ上で情報公開していくか,それを今後どうやって結論に持って行きたいかということについてお願いします。 A:最初から,例えばどういう結論を得るためにヒアリングをしたり,議論をしたりという形ではありません。そういう意味ではいろいろなヒアリングをさせていただいたり,御指摘をいただいているように,例えば,更なる情報の提供の在り方とか,そういうことも含めて少し継続的に議論をさせていただき,この議論,あるいは,その際の資料等についてはできる限り皆様に開示をさせていただいて,そして,その議論の上に立って,更なる国民的な議論ができる場につなげていきたいと思っています。 Q:既に過去の質問に出ているかもしれませんが,死刑に関する議論について,積み重ねのために勉強を始める,またその議論に資するために刑場公開に踏み切るということがございました。しかし,そのための議論の前提となる情報公開としては,もしかしたら不十分ではないかと思われます。記者クラブに対しては刑場が公開され,記者クラブ外のメディアは法務省の説明会にとどまった。私も法務省内での説明会の方に参加させていただき,大変きちっと説明はしていただけました。けれども,記者クラブと記者クラブ外の記者の取扱いを峻別するような,差別的な取扱いがないというのであれば,どちらも同じように扱うべきではなかったのでしょうか。刑場の公開に参加できなかった理由として,場所の制約,狭いということをおっしゃられたのですけれど,これは2度とか3度に分けて公開すればいいことで,その優先はあると思いますけれども,仮に後になってでも刑場の公開を他メディアも含めて行うということを御検討いただけないでしょうか。大臣の記者会見をオープンにしているという,そういう精神に則って,きちっと平等な公正な取扱いをしていただくことは御検討いただけないでしょうか。 A:今回の刑場の取材をいただいたということ,これが情報提供のすべてだとは全く思いませんし,議論のための情報の一つということだと私は考えていますので,今後更なる情報の提供がどのようにあるべきかということは検討はしていきたいというふうに思っています。それから刑場については,どのような形で,更なる取材や公開ということが必要なのか,あるいは出来るのか,こういうこともこれからの議論の中で検討の一つの課題だというふうに思っています。 Q:死刑の論議のために情報公開をしていく,そのうちの一つとして刑場の公開がありました。まだまだ公開されるべきいろいろなテーマがあると思います。中でも,死刑確定囚自身の肉声を取材することが出来るということが非常に重要なテーマではないかなと思いますが,これは例えば諸外国,アメリカなどでは,死刑確定囚に対するインタビューということが可能だと聞いています。死刑の瞬間の取材というものも行われているとも聞きますが,死刑の瞬間はともかく,死刑確定囚自身に話を聞くということを検討課題に挙げられることはあり得るでしょうか。 A:これも,死刑確定者の様々な心情,あるいは立場の尊重,こういういろいろな難しい問題が私はあるというふうに思います。ただ,これから死刑確定者の処遇の状況,あるいは,それを含めてどのような情報をきちっと皆様にお伝えをしていくか,そして議論をいただいたり,あるいはまた裁判の場で裁判員としての判断なども下していただくという,こういうこともありますので,情報提供の具体的な内容,あるいは在り方,それから御指摘をいただいたことも含めてもっと幅広く検討をしていかなければいけないと思います。 Q:昨日,アムネスティインターナショナルの方々が大臣に死刑制度について要請されたと思うのですけれども,その中で情報公開を更に進めるべきだということもあったと思いますが,それについて大臣はどのように受け止めて,今後具体的に何か行動をとられるのでしょうか。 A:昨日,御提起をいただきました。それは真しに受け止めさせていただき,今申し上げておりますように,今後,御要請をいただいたということに限らず,情報の提供の在り方は検討の課題だというふうに思っていますので,併せて議論したいと思っています。 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年9月10日(金) 死刑制度等に関する質疑 Q:昨日死刑の在り方についての勉強会の第3回目が開かれました。そこで改めて死刑についてお伺いしたいのですが,7月28日に死刑を執行されましたが,もともと死刑に反対の立場であった大臣がなぜ死刑執行の書面にサインされたのかということと,もう一つが昨日の勉強会では遺族の方のお話があったと思いますが,死刑執行に立ち会われたときの感想をできるだけ具体的におっしゃっていただけないでしょうか。 A:一点目ですが,これは私も大臣の任務を受けたときから申し上げていますように,死刑というのは非常に重い刑罰であり,それから廃止の意見,存続の意見,そういうことがあることも当然承知をしていますし,将来に向かって廃止という,そういう方向も日本の社会の中であり得ることだろうということは私も理解をしています。ただ,法務大臣を受けるにあたりましては,大変重い任務があるということも念頭に職務を遂行してまいりました。そういう中での私の職務の執行ということだというふうに受け止めていただければと思います。それから二点目ですが,これは,個別の執行に関わることですので,今私が申し上げるべき状況ではないと思っています。 Q:昨日,有識者を招いて開催された死刑の在り方についての勉強会で,外部の方の意見を伺った上での大臣の所感と,今後の勉強会の方向性といいましょうか,これまでの議論を含めてその成果をどのように還元していくのかその辺のお考えをお願いします。 A:昨日は,それぞれの有識者の皆様に意見の表明をいただきまして,私も大変重く受け止めさせていただきました。それぞれの皆様が死刑という問題を本当に正面から考えていただいているということを感じさせていただきました。勉強会は,これで終わるということではありません。さらにいろいろな皆様からも御意見を聞くという機会を設けなければいけないだろうと思いますし,皆様からも御指摘がありますように,情報の提供の在り方等々も検討しなければならない課題だと思っています。こういうことを勉強しながら,そしてできるだけの資料等を国民の皆様にお知らせをして,幅広い,本当に多くの皆様が参加するというか,議論ができる,そういう場がいろいろなところにあるだろうと思いますし,そういう場をできる限り,私たちも作っていくような努力をして,そういうところに繋げていかなければいけないのではないかというふうに思っています。 Q:死刑の在り方についての勉強会なのですけれども,第1回,第2回の議事録というかやりとりが公開されていないかと思うのですが,第3回でのやりとりも含めて公開される意思はありますでしょうか。 A:申し上げましたように,今回の勉強会は,まず省内で私どもがもう一度改めて勉強しようということですので,それ自体の議事録というのは公開をするという形はとっておりません。 Q:昨日死刑の在り方についての勉強会終了後に今回第3回の議事録は公開されるのですかということで報道係の方に伺ったところ,公開しますということだったのですけれども,それはいかがでしょうか。 A:議事録というか,有識者の方々から御発言をいただいたそういうものをお知らせをするということです。 Q:それは公開されるということでよろしいでしょうか。 A:はい。 Q:8月27日に報道機関に対して刑場を公開したことで,その目的としては国民的な議論に資するようにしたいということでした。それから2週間ほど経っていろいろな反響というのが直接大臣のところにも入ったりしているのではないかと思うのですが,その後の反響というか,議論の起き方とか,それについてどんなことがあったとかどのように感じておられるでしょうか。 A:刑場の公開取材をしていただく形をとったというのは,いろいろな議論の一つの参考といいましょうか,議論の一つとして私は認識しています。やはり多くの御意見としては,決してマイナスではないけれどもそれだけで十分ではないという御指摘をいただいています。それから昨日の勉強会の御意見の中では,被害者の御遺族の皆様からの話では,その犯罪の情報というのでしょうか,それも提供すべきではないか,こういう御意見もあります。様々な御意見を私もいただいたり,届けていただいたりしております。大変私も考えさせられています。 Q:先般,現在の死刑確定者が全国で107人というふうに伺いました。その死刑確定者の死刑執行に至るまでの順番についてなのですけれども,これはどうやって決まるものなのでしょうか。死刑の判決が出た後の順序を越えて先に執行されるというケースもあるかと思うのですけれども,それはどのように決まっているかということについて,法務省の方から説明をするお考えはありますでしょうか。 A:個々の刑の執行について具体的に申し上げるということはなかなか難しいところがあると思いますが,いずれにしてもどのような更なる情報の開示,あるいは提供が必要なのかということ,これは今勉強会などで多くの方から御意見を頂戴をしながら,そして省内でも検討する課題だというふうに私は考えていまして,そういう方向で勉強も進んでいくということになろうかと思います。 Q:死刑制度について,刑罰の本質論として,応報刑論,あるいは目的刑論というものがあるかと思うのですが,死刑についてその目的,なぜ死刑というのが必要なのかということについて大臣はどのようにお考えでしょうか。 A:これは,目的刑論,それから応報刑論とありますけれども,やはり死刑の在り方としてどちらだけということではないと思います。今の制度はある程度やはり応報的なそういうものに応えるということもありましょうし,しかしやはり刑罰というものは,教育刑ということに重きを置いて様々な処遇の中で教育を施していくと,そして更生を図っていくと,そういうことが主流だろうとは思いますが,そういう中で死刑という制度はどちらを考えてもなかなか非常に重いというか究極の刑罰だろうというふうに思います。 Q:目的刑ということですと,いわゆる死刑を廃止している国が必ずしも凶悪犯罪が増えていないということから,死刑には犯罪の抑止効果がないという意見があるのですが,死刑には犯罪の抑止効果というものがやはりあるというふうにお考えでしょうか。 A:それを今いろいろ勉強会等を通じながら,いろいろな皆様から考え方や御意見をいただいているところです。 Q:単純にお伺いしますけれども,今死刑執行の順番というのはだれが決めておられるのでしょうか。サインをしなければ死刑は執行されませんけれども,死刑執行命令書を持ってくる順番というのはどなたが決めておられるのでしょうか。 A:それは最終的には執行を判断する者が判断したことが順番です。 Q:その前段階として。 A:それはいろいろな形だろうというふうに思います。いろいろな形というのは全てそれぞれを総合的に判断をしなければいけない,チェックするそういうことがありますので,最終的な決定をした,そういうことが順番ということになります。 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成22年9月14日(火) 被疑者取調べの可視化に関する質疑 Q:9月10日に厚生労働省の元局長に対して,大阪地方裁判所が無罪判決を言渡しました。裁判所は,(略) 刑場の公開に関する質疑 Q:先月27日の刑場公開について,これまで申し上げてまいりましたとおり過去の刑場公開についての新しい情報がございます。元毎日新聞記者の勢藤修三さんと同時期に法曹記者クラブに詰めていた元産経新聞記者の俵孝太郎さんの著書で,「政治家の風景」という94年のものなのですけれども,同様の刑場見学について書かれた箇所がございます。以下は質問です。今回の刑場公開では結果的に絞縄がはずされたり,刑場の中では記者が質問できなかったりという各種の制限がなされたようですけれども,当初大臣が思い描いてきた公開の仕方と比較して,どういったことが実現できどういったことが実現できなかったとお考えでしょうか。具体的にお考えをお聞かせください。 A:前段にお話されたことについては私もちょっと承知をしていませんので,前提は別として,私は先般の刑場の公開,そして取材をいただいた,これが私なりの公開の一つだという認識です。ですから,皆さんに取材をいただくということによって,一つ情報の公開ということが出来たというふうに思っています。 死刑の執行停止に関する質疑 Q:刑事訴訟法の479条の個別の死刑の執行停止について先日からいろいろと要請があったと思うのですが,そのことについて改めて大臣はどうお考えかということをお聞かせください。 A:個別の死刑執行に対する停止ということについては,これは不断に死刑確定者の状況等,報告あるいはその心神状況等を受けながら決定をしているということですので,そういうことに基づいて適切に判断をするということになると思います。 |
千葉景子法相による死刑執行に抗議する 弁護士・フォーラム90 安田好弘 |
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| 2010年7月28日の執行・執行抗議集会から | ||||
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◎千葉法相は審理を尽さず執行した フォーラム90、アムネスティ、死刑廃止議連はもちろん、抗議声明を出し、抗議の記者会見を行い、議連の事務局長である村越祐民衆議院議員は法務省に直接出かけていって、抗議の意思表示をするとともに、勉強会を広く公開すること、議連の議員もメンバーとして参加させることを要求しました。抗議声明は、弁護士会、台湾死刑廃止連盟の人たち、EU欧州評議会、労働組合などからも出されています。どうして、死刑廃止論者である法務大臣が執行したのか、これに対する激しい憤りと、なぜ執行したかについて、説明責任を果たせと、皆さん全員が求めています。 記者会見の中で、法務大臣は、「いずれの事件も裁判所において十分な審理を経たうえで最終的に死刑が確定したものでございます」と言っています。しかし、これは事実に反します。むしろ、彼女が弁護士でもあることからすれば、意図的な嘘と言っていいと思います。篠澤さんのケースですと、宇都宮の宝石店で6人が焼き殺されて、一億数千万円相当のダイアや貴金属が強奪されるという事件だったわけですが、篠澤さんは一貫して自分には殺意はなかった、予想外に爆発的にガソリンが燃えたのだということを主張してきたわけです。皆さんはご存じないかもしれませんが、閉ざされた空間でガソリンが燃焼するときは、燃焼を超えて爆発になるわけです。爆発的な燃焼、これは私が新宿バス放火事件などで知っているのですが、放火した人の予想をはるかに超える結果が生じるものです。ですから、死亡という結果から殺意を認定するのではなく、周囲の状況から慎重に判断する必要があるわけです。とすると、撒かれたガソリンの量は決して多量とはいえないこと、そして篠原さん自身の着衣も燃えていること等からすれば、「脅すつもりでライターに火を着けただけ」という彼の弁明は必ずしも弁解のためではない、と言えるのではないかと思います。 ましてや尾形さんの場合は、控訴を取り下げており、1審の判断があるだけです。尾形さんのケースは、2件の殺人事件と2件の殺人未遂事件でしたが、最初の殺人事件については、精神的な錯乱状態になっていて、自分は何がなんだかわからなかった。殺意は、事前に計画的なものではなく、その瞬間に殺意を抱いたもので、計画的な殺人ではないとも主張していました。 裁判では、精神鑑定が行われています。その結果、第一の殺人事件の当時、尾形さんは心神耗弱の状態にあったとの結論が出ました。しかし、検察官がこれを不服として再鑑定の申請をし、これは異例の事ですが裁判所は検察官の申請を受け入れて再鑑定を実施し、今度は、全く逆の結果、つまり、正常であったとの鑑定結果を得たわけです。そして、裁判所は、正常だったという鑑定結果を採用したのですが、いずれにしても、精神状態に問題があったという鑑定と正常だったという鑑定が鋭く対立したケースでして、これが1審の判断だけで終わってしまっている。これは、誰が見ても、十分に審理が尽されたとはおよそ言えないケースだったわけです。尾形さんはフォーラム90が一昨年行った確定死刑囚へのアンケートに答えて、事実がこれだけないがしろにされるのか、裁判所も検察官も事実について全く誠実ではない、初めから作られた事実に基づいて調書が作られ、鑑定も行われ、事実認定がされてしまう、と厳しく指摘しています。 このように、篠崎さん、尾形さんの両ケースとも、千葉法務大臣が言うような「審理が十分に尽されて最終的に死刑が確定した」というものではなかったのです。彼女の発言は、完全に誤りです。この点は、彼女の発言や意図の真実性を理解する上で、重要な指標となるのではないかと思います。 私は反省を込めて言わなければいけませんが、たくさんの人から私に対して「千葉さんは大丈夫なのか」という心配の声がかけられました。捜査の可視化の先送りや公訴時効の廃止についての乱暴なやり方など、法務省の意に従った行動が多々見られる彼女を見て、心配になった人たちからの声でした。それに対して私は、「死刑についてだけは違う。千葉さんは絶対に執行しない」というふうに言い切ってきました。私は、死刑廃止というのは、何時、如何なるばあいでも人を殺してはいけないという考えに基づくものだと考えています。これは、たとえ法務大臣の立場になったとしても、同じだと考えました。前の佐藤惠法務大臣や杉浦正健法務大臣の時のようにです。しかし、私の完全な誤りでした。 |
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◎死刑執行と引換の死刑廃止はない 彼女が国会議員になった時に、彼女と菊池さんと私と3人で東京拘置所長に申し入れに行ったことがあります。東京拘置所の所長が、法務大臣ないしは法務省に対して、執行のために死刑確定者の精神の状態や反省の状況を逐一報告しているが、拘置所長にはそのような権限も義務もないこと、死刑執行の命令がくれば従わざる得ないかもしれないが、死刑執行を促すようなことは一切しないようにと、申し入れに行ったわけです。 この時は拘置所長と激しい言い合いになり、まして、千葉さんも一歩も退くことなく、所長に対して執行を早めるようなことはするべきではないと、強く申し入れていました。その中で私が印象に残っているのは、千葉さんは「いずれ死刑は廃止されるのだから、早まることはない」という言い方をしていました。 昨年9月に千葉さんが法務大臣になりました。彼女は就任の記者会見で、慎重に対応したい、多くの人の意見を聞きたい、という2つのことを述べていました。私は10月に彼女と会いました。彼女が言っていたのは2つありました。1つは死刑廃止に向けた小さな芽でもいいから在任中に残したい、ということ。もう1つは、いざとなればケツをまくるから大丈夫よ、とはっきりそれを言っていました。 私は、いろいろの圧力がかかるのではないか、ますます激しい圧力があなたにくるのではないか、だからあなたを助けるのはどうしたらいいのか、応援するにはどうすればいいのか、過去死刑執行をしなかった法務大臣を集めて激励会をやろうか、というようなことも言いました。 彼女は外で死刑廃止の集会を開いてもらうのはありがたいことだ、それで議論が広がるからだという事も言っていました。しかし死刑執行するかどうかについては大丈夫よ、と。ケツをまくるわよ、と言っていたわけです。 そういうことがあって今回の執行ですが、その前に私どもは、辻恵議員の仲介で、アムネスティの人も含めて12人ほどで5月19日に千葉さんに直接会いに行っています。大臣室で私どもは会いました。その日は死刑確定者の処遇の話で行ったのですが、執行しないでくれという話もしました。彼女は一言も発しませんでしたが、後ろに法務官僚3人4人と控えていて、彼らは一生懸命メモを取っている。そういうこともあるから彼女は一言も発しないのではないかと、私どもは解釈したのです。 そして今回の執行で彼女が立ち会った、刑場をマスメディアに公開する、勉強会をする、と言っているわけです。勉強会をする目的は、国民的議論が必要だから、その契機としたいとしています。刑場の公開についてもその材料としてもらいたい、と言っています。命令を見届けるために死刑執行に立ち会った。そして立ち会ったことによって死刑についてたいへん考えさせられた、だから議論をしなくてはいけない、ということを言ったわけです。 この説明だけからしますと、今回の死刑執行することと引換に、死刑についての見直しをする機会を設定したというふうにも受けとれます。しかし、これに対して私どもは、それは全面的に間違っていると言わなければいけません。そもそも命というものは、そのようなものと引換にするようなものではないし、死刑執行というのは明らかに殺人ですから、殺人を以って何かを獲得するというような考え方は、死刑廃止の考え方とはおよそ相容れない。死刑を手段とするのですから、むしろ死刑存置の発想と重なるのではないかと思います。彼女は法務大臣になって10ヵ月経つわけですから、彼女が言っていた「少しでも芽を出したい」ということこそ、やるべきであったろうと思います。もし彼女が善意から今回の執行をしたのだとすれば、それは間違いであるということを私たちははっきりさせなくてはいけないと思うのです。 |
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◎勉強会と刑場の公開にどう対応するか 勉強会と称するものが、実は一昨日(13日)から法務省の中で始まったそうです。これに対しては議連も日弁連も申し入れをしています。議連はその中にメンバーを参加させろ、と。日弁連も参加させろ、と。議論の中身に関しては、死刑全般に関して議論せよ、さらにその間は死刑執行を停止せよ、ということを申し入れしているわけです。この勉強会にどう取り組んでいくか、この勉強会に私たちが直接取り組んでいくことによって、少しでも死刑廃止の契機になれば、という思いもあると思います。しかし実際に今進もうとしているのは、そういうふうにはなりそうもないようです。それらをどうやって死刑廃止につなげていくか、つなげるかたちに変えていくか、さらにグレードアップしていくか、については私たちの具体的な行動が必要になってくると思います。 1997年のことですが、当時の議連の志賀節、二見信明、金田誠一、秋葉忠利さんなどのメンバーとフォーラム90が、どのようにして死刑廃止を実現していくかについて、1つのプロジェクトを立ち上げようとしました。それが、民間法制審構想でした。法務省の中の法制審議会に死刑制度について諮問をするか、それとも内閣の中に脳死臨調と同じく死刑臨時調査会を設置するか、国会の中に特別員会設置するか等の検討を経て、民間法制審を立ち上げようという話になりました。死刑に関して、国際的潮流と国内の状況に大きな乖離があること、また国内においても存置と廃止が対立していることは、司法ひいては刑罰制度そのものに対する信頼を損ねるような事態を招きかねない。これを回避するためには、存置と廃止との間で議論をして、合意点を見つけ出すことが必要だという問題意識の下に動き出しました。存置論の土本武司、渥美東洋、廃止論の菊田幸一、宮沢浩一さん等が加わって議論を重ね、団藤重光さんと後藤田正晴さんの2人を座長として、これに各界からの参加を得て、民間法制審を組織し、これに議連が死刑制度についてのについて諮問する。これを受けて、民間法制審は全国各地で公聴会を開き、また専門機関や専門家に調査を委託したり意見を求めて、半年かけて各政党や関係機関の意見を聴取して最終意見を決定して議連に答申する。これを受けて、議連が国会に法案を提案するという構想でした。民間法制審が死刑制度に関する調停案、家裁の調停委員会が調停案を出すのと同じように、廃止と存置の合意案を作成し、それを法案に直結させようと考えたわけです。実際に後藤田さん、団藤さんも参加するということで、第1回の準備会を開こうとしたんですが、その段階になって後藤田さんが降りると言ってきて瓦解してしまいました。 また、フォーラム90が国民的議論を活性化させるために行おうとした企画として、二見さんが議連の事務局長のときに、全国の7ヵ所の刑場を議連が視察し、引き続いて、その日、その都市で、議連主催の公聴会を開き、さらにこれと並行して市民団体が集会を開くというものでした。全国を巡回して、議論を巻き起こそうというものでした。この企画に基づいて、議連は法務省に対して刑場の公開を求めました。これに対し、法務省の役人が二見さんのところへ訪ねてきて、地に頭をつけるような形で、ここだけは見てもらいたくないところだから止めて欲しいと懇願してきたわけです。それで、この企画も頓挫してしまいました。 その是非は別として、少なくとも今回は、法務省の中に勉強会を開き、刑場を公開すると言っている訳ですから、これについて私どもがどのように取り組んでいくか、真剣に議論する必要があると思っています。 |
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◎法務大臣には死刑執行の法的義務は存在しない 今回、千葉さんが、「死刑執行するのは法務大臣の義務だ」と言っています。実は、過去、法務省はそのようには言っていませんでした。これを言い始めたのは、後藤田元法相です。彼が1993年3月に死刑執行を再開した後に、自己の行為の正当化のために言い出したことです。彼に対しては、志賀さんや倉田哲治弁護士などが直接会って、執行をしないようにと話をし、彼はそれに対してよく考えてみるとか、団藤さんの本も実際に読んでみるとか、言っていたわけです。ところが彼は死刑を執行し、法務大臣には死刑執行をする法的義務がある、だから執行しないのは怠慢だし、執行しないならば法務大臣を辞めるべきだと、そもそも執行しない者は法務大臣に就くべきではない、と言い出したのです。今回の千葉さんも、詰まるところ同じことを言っているのです。 私たちはその当時から、法務大臣には死刑執行の法的義務はないのだと言い続けてきました。これはスローガンとして言っていたわけではなく、法的根拠を持って言ってきたわけです。刑事訴訟法の475条第1項を見ていただければわかりますが、死刑執行は法務大臣の命令による、としか書いてないわけです。法務大臣が死刑執行をしなければならない、とは書いていません。これは法務大臣以外の者が死刑執行を命令してはならないという制限規定です。第2項に6ヵ月以内に執行命令を出さなければならない、となっていますが、これは法務省自らが訓示規定と言っているわけでして、絶対に守らなければならないというものではないわけです。 法務省が言っていますが、法務大臣の死刑執行はどういう法的性質のものかというと、死刑執行を法務大臣の権限としたのは(権限です。義務とは言っていない)、死刑執行は極めて重要な刑罰なので、政治的責任を持っている人間しか命令してはならないものだ。法務大臣は政治的責任を負っているのだから、いろいろの社会的状況を考慮して、政治的な決断として執行を命令するのだ、という言い方をしています。ここからは義務だという発想は出てこないのです。法務省設置法という法律がありまして、法務省の責任や役目を示したものですが、3条、4条にはっきり書いてありますが、法務省の任務に、「基本法制の整備」、「刑事法制に関する企画立案」とあります。彼らの責務として法体制を改革したり改善したり、法律を新しく制定したり、法律を改正したり、ということがあるわけです。ですから法務大臣は死刑執行をすることが義務ではなく、死刑制度について改善したり、新しい死刑制度に関する企画を出したり、その企画が通るまで死刑執行を停止すると、いったようなことが法務大臣の義務としてあるわけです。千葉さんの発言は、これを完全に無視した発言であるわけです。 さらに言いますと、官吏服務紀律という勅令がありまして、昭和22年に一部改正されており、国務大臣はこれに従わなければならないとされています。その1条には「国民全体の奉仕者として誠実勤勉を主とし法令に従い各職務をつくすべし」とあって、権限を行使する場合は、公僕として法律に則って職務を果たせという職務規範はあっても、死刑執行を命令しなければならないというような、羈束(キソク=つなぎとめる、拘束する)的に、必ず一定の行為を行わなければならないというような職務規範は予定されていないわけです。このように、法の規定からしても、また過去の法務省の理解ないしは解説からしても、法務大臣に死刑執行命令をする義務があるというのは、間違い以外何ものでもないと考えます。この点についても議論しなければならないと、私は思っています。 |
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◎死刑廃止の環境づくりを 今後の方針ですが、いずれにしても新しい状況になりました。法務省は今回の執行に関して、おそらくより新しい段階に入ってきたと思っているはずです。勉強会の立ち上げや刑場の公開などのアクセサリーを外してしまえば、今回の執行の目的は単純です。いかなる法務大臣にも死刑を執行させる、という従来の目的に見事にかなっているわけです。しかも1年以上執行しない期間を設けないという目的にもかなっています。死刑廃止論者であっても、死刑廃止の議連のメンバーであったとしても、必ず死刑を執行させるという、法務省の意志が見事に貫徹した、極めて政治的な色彩の濃い執行であったと思います。そして、国会開会直前に執行するという、しかも開会される国会では法務大臣に対する問責決議が予定されており、これを回避し内閣を維持するという、この点からしても極めて政治的な執行であったと思うわけです。 私が今回の執行で気になっているのが、岡田幹事長、菅総理大臣、仙谷官房長官がこぞって「法律に則って行ったのだから、何ら問題はない」と同じことを言っていることです。仙谷さんも死刑廃止論者です。彼は、1昨年、議連が星陵会館で開いた、終身刑創設及び死刑判決全員一致制を求める集会に彼は出席し、民主党内で意見をとりまとめると言っていました。その彼が、今回は何の問題もない、と言い切るわけですから、やはりこれは内閣の意向に沿った執行ではないかと言わざるを得ません。 そういう中で今後私たちがどうしていくか、死刑廃止を見据えたロードマップをしっかり掴んでいく必要があると思います。今までの経過からして一気に死刑廃止になることはありえない話ですし、一気に明日から死刑執行停止になるということもあり得ません。政権交代後の政治情勢は、死刑廃止にとっては最高の布陣であったわけです。私たちの仲間が法務大臣となり、福島瑞穂さんや亀井静香さんが内閣に入っていた。これ以上の布陣を得る機会は、今後しばらくは考えられないほどの状況だったわけですが、このような中でも、死刑廃止に向けた動きは一向に進まず、結局、死刑が執行されてしまった。こういう、極めて厳しい状況をしっかりと踏まえて、死刑廃止に一歩ずつ近づいていくロードマップを作っていく、つまり、死刑執行を1つでも少なくしていく、そして死刑廃止に向けた環境を作っていく、つまり裁判では終身刑の創設など死刑でない選択肢を用意し、これに伴って、過去の死刑判決の見直しを求め、また権利としての恩赦を確立し、死刑が日常的でない状況、つまり死刑がなくてもいい状況を作り上げていくことを真剣に考えなくてはいけないだろうと私は思っています。この点からすれば、民間法制審構想は、死刑廃止に一気に走りすぎたものであったのではないかと思います。 |
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| 関連:The Death Penalty 死刑の世界地図 | ||||
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